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赤い世界と赤い空

※注

 この物語は蝶とは関係ないものですが、赤色と関係があるものです。この全ての物語の終盤で全ての話に繋がりが見えてくるようにする予定です。

  僕が3歳の時ソレは始まった。それとは…両親の喧嘩だ。僕と4つ上の姉である魅加みかはいつも押し入れの中でブルブルと震えてた。

  そしてアレが始まったのは、両親が喧嘩している最中に僕のお腹がなったことからだった。だって食事と言っても今日のご飯は野菜が二つだけだった。食事中も両親は喧嘩してたので僕がその二つの野菜を飲み込んだあとに鳴ったのだ。空腹特有のアレが。両親は…と言っても父親だけだがそれを聞いた途端僕は殴られた。母親は最初こそ止めに入っていたけど、後からは自分が殴られるのが怖くて僕に包帯も巻いてくれなくなった。

  そんな時魅加はというと…まだ小学3年生だったにも関わらず帰りが遅かった。両親が喧嘩している家、しかもDVがある家に帰って来たくないんだということは容易に想像できた。父親は姉には暴力をふるわなかった。理由としては女は殴る殴られるといった喧嘩をしないから、男は痣を作っても喧嘩したと言えば何も問題にならないからという父の思い込みによるものだったが、それによって姉は体に痛みを受けることはなかった。でもそれでも僕達…僕と母親にも加減はしていたらしい。それでも時々頭を硬い物で殴られることがあった。最初出血した際何も起きなかったからだ。

  だからとうとう自分が本当に殺されるかもしれないと思った母親が父親に対して離婚を持ちだした。母親は父親にこう言った。


「親権はあなたにあげるから」


  だけど父親はみすみすそんなことを承知はしなかった。母親を殴って殴って口答えが出来なくなるまで殴ったが母親は死ななかった。その代わりそのことで無性にイライラしていた父親から僕は殴り殺されかけた。その時もう瀕死の状態だったと思う。だが父親はそれに気づかなかった。気づいたのは4つ上のその時12歳の魅加だった。魅加はあろうことか父親に言った。そして救急車を呼んでもらうよう頼んだがもちろん父親はそんなこと承諾しなかった。

  父親は焦りながら知り合いの仲間に声をかけ僕を山奥の土の中に隠した。そこが僕のお墓となった。





  ★★★





  僕は闇の中でかけられた言葉に耳を傾け、その言葉に身を委ねた。言葉は自分のことを「狂気」だと名乗った。それが自分を一層苦しめる死後の世界の問いかけだとも知らずに。僕は土の中から這いずり出て、両親がいるはずの家に向かった。僕のことを見ていた人は不審がっただろう。何故なら土が頭にも顔にも洋服にも付着していたから。洋服だって長い事土の中にいたからボロボロだろう。

  僕はその時何も疑問に思わなかった。どうして僕は死んだはずなのにまた歩けて、周りの人から怪訝な顔をされたのだろう。きっと両親のいる家に早く行きたかったからそこまで頭が回らなかったのだと思う。

確かに僕の心臓は動いておらず、血も流れていなくてひんやりと冷たかったのだ。これは後に知り合った人から言われたことだ。

  その時僕が死んで長い年月が経っていたはずだけど、周りの風景は何一つ変わっていなかった。だから、自分がいた場所が分からなくてもたどり着くことができたんだ。父の知ってる場所はそんなに多くはないはず。だってここ辺りで遺棄できる場所といえばそんなにないから。


  ガチャ…


  自宅のドアは生前のように開いたままだった。このあたりで泥棒だとかはあまり聞かないから両親も周りに住む人も鍵を閉めないことが多かった。でもこれが両親にとっての命取りになるなんてまだ二人は思っていないと思う。

  僕はそのまま奥に進んでいくと母親とバッタリ遭遇した。探す手間が省けたのだ。母親は一瞬僕が誰か分からず、慌てふためいていたが一瞬遅れて悲鳴を上げた。近くにはちょうど父親が集めている壺が置いてあったので、母親の頭を殴った。これは相手を気絶させるためではない。殺すために殴ったのだ。母親は呻いたあと動かなくなった。

  その悲鳴を聞きつけた父親が僕と母親を交互に見た。僕は父親が何かを発する前に傘立てで母親と同じく父親の頭を殴ろうとしたが父親は簡単に避けて(よけて)近くに置いてあったハサミを手に取り僕の背中に思いっきり突き刺した。身長差で当然父の方が高いのでハサミは深々と刺さったがそれは当然のことだった。僕が母親を一発で倒せたのはたまたま母親が僕に驚いて体を固まらせていたからだ。

  僕は痛みを感じて一瞬よろけたが傷口からは血は出ない。父親は一瞬驚いたようだったが、僕を埋めたことを思い出して納得したようだった。


「ああ…お前を殺したの俺だったっけ。」


  そう言って父親は勢いよくハサミを持ったまま僕に向かって突っ込んできたが、狂気に身を委ねている僕を相手にしたことは運が悪く僕は軽くよけて持っていた傘立てを父親の頭に激しくぶつけてやった。父親はふらついて僕を巻き添えにして床に倒れた。僕は父親を振り払ってもう一度傘立てで父親の頭を強く殴った。そしたら母親のように父親も動かなくなって床を血で濡らしていた。


がちゃ…


  その時ドアが開いた。どうやら4つ上の魅加が帰ってきたようだ。運が悪い。


「おかあさん…?貴吹きふく誰もいないみたい。靴があるけど片づけ忘れてるだけだと思うから上がって。」


  貴吹…その名前には聞き覚えがあった。というより家族殺しの次に願った望みの中心人物にいる人だ。


  僕が貴吹と初めて出会ったのは電車の中でお互いのバックを取り違って返しに行った時だ。魅加はその時を境に貴吹の家にちょくちょく遊びに行くようになったのだがこのときの僕はまだ知らない。

  バックの取り違いに気づいたのは帰宅してからで父親にすごく怒られたが、誰と取り違ったかなんて覚えてない僕はただ怒られて泣いていた。そんな時向こうから電話がかかってきた。どうやら僕のカバンに記入してあった電話番号にかけたらしい。それから僕はカバンを確認するために魅加はその付き添いで一緒に相手の家まで取りに行った。もちろん相手のバッグも持参して。家から出てきたのはそのかばんの持ち主の母親で貴吹に会えることはその日はなかった。でも母親は僕の隣りにいた親切な男の子に似ていた。だからきっと彼がバックの持ち主なんだと思った。そんな親切な男の子が欲しいと思った。僕の周りにはそんな人いない。友達になりたかった。僕は学校には行ってなかったから、父親が仕事でいないときにしか外に出れず父親の仕事は不定期なものだった。


  僕が探していた貴吹と魅加が知り合いだったことを知り、僕が取った行動は何も知らずに入ってきた魅加を傘立てで殴ったことだった。だけど何の音もしなかった。宙をかすめただけだった。空振りだったのだ。当たらなかったのだ。頭に。近くには魅加よりは少し年下の男の子がいた。彼が貴吹なんだということは他に人がいなかったので暫定したのだ。

  貴吹は魅加を守るような感じで僕の目の前に立っていたが、僕が傘立てを振り回した瞬間魅加が貴吹を突き飛ばし僕が振り回した傘立てに当たって体が痙攣して動かなくなった。突き飛ばされた貴吹は魅加に駆け寄って泣いているようだった。僕は傘立てを床に投げてドアから堂々と外に出て行った。

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