赤く燃る帝都じゃけえね
チートっていろいろありますけど、イケメンに勝るチートはないって思うんですよね。
ちなみに、豚マリネうどん食べましたがアイゼンは釜玉うどんの方が好きです。
兵士たちは槍や剣を天に掲げて叫んだ。
「ガルシア家に栄光あれ!」
「殺せ!殺せ!殺せ!」
掛け声をかけながら、小走りで火の玉を放つ一団へと向かう。
ジルバンテは馬に乗り先頭へ走って行った。
「なにこれ?」
「はっはは、歴史に伝わるガルシア侯爵家の加護に皆酔っているのでしょうな」
ガルバリアスは手際よく俺に甲冑を身に着けさせた。おじいちゃん、頬が赤くなってかわいいな。
「いや笑い事じゃないし」
アドナイアスは桃色ローブを脱いだ。線が細いと思っていたけど意外と筋肉質で鍛えられている。
「これが笑わずにおられましょうか、役立たずやら脳筋やら言われてきた侯爵軍の戦と新たなガルシア侯爵家の当主の誕生が偶然にも重なるとは。これぞ、天命、神に愛されている」
いや俺本物じゃないしね。
それまでぶつぶつつぶやいていたアドナイアスは、ばっと立ち上がり俺の肩をつかんだ。
「閣下。失礼ながら進言いたしますうううう!」
キャラ変わってるじゃんか。
「なっ、気持ち悪るっ…はい」
アドナイアスは捻じれた杖で帝都を指した。
「これより、我ら大将首を討たんがためっ、一番槍を務めまする!!!」
アドナイアスは真っ黒なローブに着替えていた。
「はい、頑張ってください」
「しからば」
アドナイアスは杖を天に突き上げた。
「エアリエルフロートっ!」
馬車が浮いた。
「封印解除じゃ!」
ガルバリウスが窓から身を乗り出し、御者に命令すると、馬車を曳いていた馬の背中から羽が生えた。
ペガサス?キメラ?ジジイの魔法?てかなに封印してくれてんの?
高度を上げた馬車は侯爵軍から離れ、帝都の城壁に群がっている一団の元に突っ込んでいった。
「ねえこれどこに行くの?」
「狙いは大将首一択です」
………は?
大将首?
お前がいけよ、いや、お前一人でいけよ。
「俺は?」
「戦闘は我らにお任せを、閣下は首級を挙げていただければ結構ですので」
いやだ。帰りたい。首級なんて触りたくないけえ。帰してくんちゃい
「閣下、おつかまりください」
ガルバリウスは緑色のローブと黒い革の胸当てをつけ、短い弓を持っていた。
「お前もやんの?」
「なに、ちくっとでもかすればこっちのもんですわい」
ガルバリウスは懐から取り出した瓶の中身を矢筒に注いだ。なにやってんの?毒?毒?なの?
「お前それ絶対こっち向けんな。てか、近づくな」
馬車が風でゆれる度に、弓を構えたガルバリウスがふらついて怖い。てか、めっちゃ臭いし。
アドナイアスは馬車のドアを開けると、身を乗り出した。
「神聖帝国に仇名す逆賊どもめ!裁きの雷をくらえい!!」
アドナイアスは小さな声で「ハティストーム」とつぶやくと、杖を両手で構えた。
杖の先の宝石が光ると、巨大な氷が次々と降り注いだ。いや雷言うたやん。
降り注いだ氷は兵士たちを押しつぶし、氷の破片が周りの兵士たちに突き刺さった。
兜ごとひしゃげ、馬ごと押しつぶす魔法が直撃した場所は血と冷蔵庫のにおいがした。
「あらかた終わりましたね」
アドナイアスは杖の先をなでながら、やはり、殲滅戦は氷に限るとひとりごちた。
「閣下降りましょう!」
ガルバリウスは指笛で馬車を敵のど真ん中に下した。
「ほら閣下あれが親玉ですよ!」
馬に乗った男が槍を持ったまま俺たちの方をぽかんと見ている。
「いやいやいや、俺剣とか持ったことないし」
ガルバリウスは俺の肩をポンポンと叩いた。おい、その矢をこっち向けんな。
「ほっほっほ。謙遜されずともよい。この太平の時代、戦いに赴いたことのある人間などほんのわずか。かく言うわしもアドナイアスも、狩りや盗賊退治で腕を磨いてはいるものの、はずかしながら今日が初陣でございます」
「そうですよ、道場剣術を恥じることなどないのです。魔法も剣術も練習が結局は日々の鍛錬によるものなんですから」
アドナイアス押すな。頼むから。
「いやだから、俺は剣を振ったことも、持ったこともないんです」
ずっと、スピリチュアル、オカルトの申し子だったからな。
「そんな、平民でもあるまいし」
「いや俺平民ですよ」
じいちゃんは田んぼを守ってるし、両親ともに公務員だしな。
「なんと…」
ガルバリアスは手から弓と矢を取り落した。あっぶねえな。
「洗練されたテーブルマナー、ウィットに富んだ会話、卓越した理解力。てっきり、貴族とは言わずもそれなりの教育を受けた方だと思っておりました」
「それでは、得意な武器、魔法は?」
「ないです。魔法は使えません」
アドナイアスはガルバリアスに弓と矢を持たせて背中を叩いた。
「……あっ、ガルバリアス。ミヒャエル様が危ないっ!助太刀なさい」
「ミヒャエル様!助太刀いたしますぞっ!」
いや、俺あんたたちの隣にいるんだけど。一番近い敵でも5メートルは離れてるし。
ガルバリアスの放った矢は親玉の肩に突き刺さった。ジュッて音をたてて。
アドナイアスは杖を親玉に向けた。
「うぬ、精霊魔法とはこしゃくなり。ピラーファング!!」
いや、親玉「あわわわわ」っていっただけやん。
アドナイアスの魔法は親玉の足を馬ごとずたずたにした。
「ミヒャエル様今です!!」
なんかすいませんね。
俺が剣を抜いて親玉に近寄る間も、アドナイアスとガルバリウスは近くの兵士に止めをさして、戦場だというのに俺のいる場所はうめき声すら上がらなかった。
遠くからジルバンテが走ってくる、400年ぶりの戦争は侯爵側の完全勝利に終わったらしい。
俺は親玉に剣を突き付けた。親玉は細身のイケメンで長い茶色の髪を三つ編みにしていた。
「恨むなよ、前世からの因縁だと思ってあきらめてくれ」
親玉は口から泡を吹いており、死ぬのは時間の問題に思われた。
「なんでこんなことしたんだよ。しかもこんな日に」
親玉は泡を吐き出してはなにか口をパクパクと動かしていた。
「お前、もしかして」
侯爵軍が生き残りや逃げ出した兵士たちに襲い掛かる。それぞれの槍の先には兜や生首がぶら下がっていた。あれか、戦の作法的なやつか。俺全然知らないけど。
「ガルバリアス!ちょっと来てくれ」
とりあえず、なんとか、ひとまず6月中は毎日更新できそうなので応援よろしくお願いします。
毎日20時更新予定ですよ。
アイゼンより☆