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加護持ち領主の和平活動  作者: アイゼン・ジム・トンプソン
第一部 帝都動乱編
2/135

顔が良くても嬉しくないけえ

この間読んだお坊さんのBLですが、仏間プレイには驚かされました。

アイゼンより

頬に落ちた水滴で俺は目を覚ました。


口に変なにおいのする液は入っていないし、尻もよく締まる。

貞操とか魔法少女的な展開は逃れたらしい。


しかし、疲れすぎたのか、断食がきつかったのか、目が空いて空を見上げる以外に体がピクリとも動かない。仕方がないのでゆっくりと気をめぐらし、体の隅々まで行き渡らせてゆく。


徐々に舌、口、指に感覚が戻り、グー、パー、グー、パーを繰り返した。

それにしても、断食の後でたっぷり食ったせいか、大自然の中で眠ったせいかすこぶる体の調子がいい。

五感が冴えわたっているし、なんというのか、生き物の息吹みたいなものを感じることができる。


これが断食の成果か。そんなことを考えていたら遠くから蹄の音と人の声がした。

「おーじ!おーじ!」

おーじ?王子か。そういやイケメンってどうなったんだ。まさかあいつが王子とかじゃないよな。

「王子!探しましたぞ!」

筋肉隆々で背中に剣を背負ったおっさんが俺を見下ろす。

「…?王子動けないのですかな?」

「王子は逃げましたよ」

俺はまだろれつの回らない舌で答える。

「ですから、悪酒はお控えくださいと申し上げたのに。混ぜ物に何が使われているかわかりませんぞ」

「俺酒飲んでないです」

おっさんは俺をお姫様ごっこして、俺の顔に口を近づけてきた。

「よっ、よせ!このガチホモ国家のガチホモジジイ!」

「ガチホモ?また悪い言葉を覚えましたな。しかし、酒のにおいも嗅ぎ薬のにおいもしませんな」

おっさんは俺の唇ではなく、俺の息のにおいを確かめたかっただけらしい。

「とりあえず、下してくれ」

「まだ、立てないのでしょう?このまま城までお運びいたします」


おっさんはあのイケメンガチホモサイコサドとは違い紳士的なおっさんらしい。俺はパニックのあまり失礼な態度をとったことを反省した。

「すいません。お手数かけます」

「なんだか妙なことになりましたな」

俺はおっさんの持ってきた毛布にくるまれ、時には抱えられ、時には担がれ、40分ほど馬で移動した。


「まだ、動きませんか?」

「そうっすね、指と手首は何とか動くんですけど」

あのイケメンガチホモサイコサドは俺になにをしたのだろう?毒?呪い?秘孔?これ一生とかじゃないだろうな?


街に入る前で俺はカーテンが閉められた馬車に入れられた。結構揺れる馬車では、おっさんが俺が倒れないように抑えていてくれた。


「ジルバンテ様!城までの安全確保ができました」

馬車の外から若い男の声がした。

「ご苦労、城に入るまで気を抜くな」

おっさんってジルバンテって名前なのか。


「しかし、王子にも困ったものですな」

俺は頷いた。

「全くです」

ジルバンテはため息をついた。

「まあ、その話は城でしましょう」

城につくまでの間、俺は手首と指をずっと動かしながら、馬車の天井にある女の子の絵を見ていた。


「おかえりなさいませ」

10人くらいのメイドさんが俺たちを出迎え、俺を寝室まで運んでくれた。

「今、医者を呼んできますゆえ」

俺は2メートルくらいの天蓋ベットに寝かされ、部屋にはメイドさんが1人だけが残った。

「あのう…」

「はいっ!御用でございますか?」

「王子ってイケメンで、ガチホモで、サイコサドですか?」

「はいっ……あ……。いえっ!違います」

メイドさんは振り下ろした三つ編みを、ものすごい勢いで横に振り回した。

「そんなことはございません!」

「ははは、いいっすよ。俺もイケメンで、ガチホモで、サイコサドだと思ってますから」

メイドさんは「あびすあべば」と叫んで、泡を吹いて倒れた。俺はただ見守っていることしかできなかった。


「今度は何事ですか!」

ジルバンテと白衣を着たおじいさんは倒れたメイドさんを揺さぶりながら、俺に詰め寄った。

「いや、なんか。あびすあべばとか言いながら倒れたんですよ」

「まあ、大丈夫でしょう」

白衣を着たおじいさんはポケットから取り出した瓶の中身を飲ませると、メイドさんの頬を数回ビンタした。

「あびす…あばばつ」

メイドさんはよだれを袖でふきながら、白衣のおじいさんに抱き着いた。

「こっ、殺さないでくださいー」

「また、なにかされましたな」

「いや、してないっす。ただ、王子ってイケメンで、ガチホモで、サイコサドだと思いますかって聞いただけっすよ」

「…もう下がってよろしい」

メイドさんは半泣きで出て行った。


「毒が使われた形跡はありませんな」

おじいさんは俺の目や舌なんかを見ながら、変なお茶を俺に飲ませた。


「まったく、使い物にならない男ですね」

薄桃色のローブを着た髪の長い男が入ってきた。色白で神経質そうに指でローブの袖をいじくりながら、

俺の腕を乱暴に取った。

「ふむ、エアリエルアローを一発と…」

「なんだと!精霊魔法ではないか」

ジルバンテが怒鳴った。

「まあ、威力は大分殺してあったようですから心配しなさんな。それよりも問題は…」

桃色のローブから緑色の宝石を取り出して俺の額に当てた。宝石に当たった部分から冷たい気が体中を通り抜けていくのを感じた。

「魂の魔法を使いましたね」

「あっ、動ける」

「メレアルカスで体が動けるようになったのが何よりの証拠です」

ベッドから俺はおっさんたちを無視して体を動かした。なんせ、ほとんど丸一日固まっていたので、体全体がこわばっている。


「聞いているのですか!王子!」

ジルバンテが俺の肩を引いた。

「だから、誰が王子だって……っえ?」

腰を伸ばした俺は天井一面に貼り付けてあった鏡を見て言葉を失った。

「うそん」


鏡に映っていたのはジルバンテ、白衣のじいちゃん、桃色ローブ、そして…


「イケメンガチホモサイコサド!?」

イケメンガチホモサイコサドが驚いた顔で俺を見下ろしていた。

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