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ディストーテッドリンクス  作者: ヴェル
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脅威なるもの

「それで、槍については詳しいですか?」


「当然、武器のことなら大抵知ってるわ」


「それじゃあ、紅い槍について知りませんか?」


「紅い槍ね……流石に色だけだと分からないわ」


「じゃあ、魔法を吸収する紅い槍なら?」


「あぁ、あの槍ね」


どうやら知っているようだった。


「貴方が言ってる紅い槍は多分魔槍のダーインスレイブね」


「その槍について詳しくお願いします」


「噂程度でしか知られてないけれど、曰く邪悪な意思を宿した魔槍らしいわ。なんでも、使用者の精神に寄生するとか」


大きな手掛かりが手に入った。

やはり呪われた武器の類だったようだ。

犯人が捕まらないのも納得だ。


「今更になるけど、君の名前と所属を教えてくれないかな?」


「『蒼の月』所属のグレーです」


「あら、そうだったんだ」


店主の、オレの見る目が変わった。

蒼の月と言えば裏の中でも大御所の一つだ。

できるだけ、関係を作りたいのだろう。


「グレー君が知りたがっている例の槍については詳しく調べておくから、また来なよ」


「ありがとうございます。それでは、また今度」





◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎


闇商売人兼武器屋の店主は、少年を見送った後、その少年について考えていた。


「グレー……田舎町にある蒼い月の支部からこの街、王都にある本部へと転属されたんだけっか」


グレーの情報は、その道に携わる一部の人間の間で噂になっていた。

大御所として知られている闇ギルドの一つである蒼い月は、特に本部は少数精鋭の化け物揃いで有名だった。

そんな蒼い月の本部に、田舎にある支部からスカウトをされる様な形で入ってきたのが彼だ。

通常で考えればそんなことは異例中の異例で、自分自身グレーを直接この目で見るまではまゆつば物として考えていた。


「ぱっと見では普通すぎる、どこにでもいるような男の子……どう考えてもこの道の人間には見えないのよね」


しかし、蒼の月の本部にいる以上は何かしらの能力に秀でていると考えて良い。


「グレーの情報も同時に集めて置こうかな」



◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎


典太が店主との話を終えて店から出ると、冬香は誰かと会話していた。


「ねぇ、どっかで食事でもしようよ」


「……」


「おごってやるからさ。な?」


どうやらナンパのようだ。

冬香は無視を決め込んでいるようで、まるで相手にしていないようだが、男もしつこく誘っている。

三秒程思考して状況を理解した典太は、冬香のもとへ駆けつけた。


「すみません、うちの連れがどうかしましたか?」


典太が男に声を掛けると、男は不愉快そうな顔になる。


「誰だお前は」


「蒼の月所属の人間です。すみませんが仕事中なので、お話はまた今度にしてもらえませんか?」


「ふんっ、そういうことなら今回は勘弁してやるよ」


男はそう言い残すと武器屋の中へと入って行った。




「よく気付いたわね」


冬香は感心しながら典太を褒めた。

先程冬香をナンパしていた男は、とある闇ギルドの重鎮で、典太達にとって喧嘩を売りたくない種類の相手であった。


「上等な服装の人だったからね。それに、ここの情報屋は一癖ある感じだったし」


「あの女店主ね。男性客相手だと脂肪の塊を見せつけて高額吹っ掛けてるのよ。逆に女性客だと対応が最悪になる糞ビッチよ」


「なるほどね」


自分の持っている武器を理解して有効活用している辺り、流石は武器屋の店主と言ったところか。


「まさかとは思うけど、提示された額をそのまま払ってないでしょうね?」


「そんな馬鹿な事はしないよ」


「それならいいわ。まあ、あんなハニートラップに引っかかる馬鹿じゃないわよね。典太は」


提示された額より多く支払ったと言ったら、どういう反応を示すだろうか。

まあ、それなりの理由があって彼女に貢いでおいたわけだが。


「とりあえず槍については有益な情報が聞けたから、話しておくよ」


典太は店主から聞いた情報と、既に自分達が知っている情報をまとめた。


「まず槍の名称は魔槍ダーインスレイプ。恐らく呪われた武器の一種だ。それが持っている効力は、使用者の精神を乗っ取ること、そして魔法の無効化が可能。戦闘技術においては高いと見れる」


「今回の任務は槍の破壊でいいのかしら?」


「そういうことだね。とはいっても難易度としてはかなり高いけど」


仮にも学園でAクラスの獣人が戦って負けたのだ。

現時点の戦力では正直、槍の破壊は厳しい。


「作戦としては持ち主を倒してから槍を破壊すれば良いが、現在の持ち主は例の死んだはずの獣人だ。冬香でも勝てるかは判らない」


「魔法も無効化されるとなると、多分私じゃ勝てないわ」


対人戦のプロである冬香も、勝てないと考えているらしい。


「足りないのは時間もか……」


宿主を転々とする魔槍相手に、時間を掛けるのは下策だ。

できれば宿主が判明しているこの段階で破壊するのが最善というものだ。


「あの獣人の家は調査済みだ。みんなが寝静まった深夜に進入して暗殺してしまおう」


「確かにその方法なら問題なく勝てるわね」


何も真っ向勝負を挑む必要はない。

奇襲して殺す。

それだけでこの任務は完了する。

典太と冬香は深夜の作戦に備えて、会議を始めるのだった。

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