不法侵入者?
死神×少女!
「こんにちは、はじめまして、さようなら」
そう言って私の前に現れたのは、
「ボクは君を看取りにきたよ」
白い髪をした、男でした。
もちろんびっくりするわけで。だって不法侵入だよ?犯罪だよ?いきなり変なこと言うんだよ?誰だろうこの人。いつのまに私の部屋に入ったのかな……
私が首を傾げて男を見つめると、男はポリポリと頭をかいて笑った。え、恐いよぅ。
「そんな顔しないでよ。仕方ないんだから」
仕方ない?どうゆうこと?仕方なく私の部屋にいるの?可笑しくない?
私は益々不安になって、目の前の彼を見つめ続ける。彼は「うーん…」と唸ると、頬をかいた。そして壁に寄りかかる。え、くつろいでないかな、この人。なんか図々しいかも。
って、そんなこと考えてる暇ないんだよね。不法侵入だもんね。どうしよう、叫んだ方がいいかな?
「ちょっと待って?何かおかしな事考えてない?」
「考えてません」
「あ!やっと喋ってくれたね」
………何だろう、この人……馴れ馴れしいな。いきなり来ていきなり馴れ馴れしいし…やっぱりどう見ても不審者だよねぇ。だって。
私は彼をじろじろと見る。白い髪はストレートでさらさらしてそう。あ、でも前髪は長いなぁ、目が見えないや。服は、白い丸首のトレーナーに、またまた白いパンツ。靴……靴?サンダルかな……って、そんなの履いて部屋に入ってこないでよぉ!
うん、やっぱり叫んじゃおっか。
私は息を吸おうと口を開ける。けど、あんまり入ってこない。それに、痛い。どこが?ってきかれたら、わかんないけど……とにかく、痛いよ。
「あ、もうすぐかな」
「っ、え」
「んーん?何でも。そのままでいいよ」
もしかして、痛いって事分かってるのかな。いやでも無いか。他人だし。
私は座っていた椅子の上から降りて、彼と反対方向に歩く。目の前にはドア。叫ぼうとしたけど、息吸うだけでどこかが痛いんだから、きっと叫んだら、すごく痛いはず。根拠はないけど。
手をドアノブにかけようと、手を伸ばした。けど───
「ストップー、ダメだよ、出ちゃ」
「………離して下さい」
「ダメ」
彼は笑いながら私の手を掴んだ。はい?どうゆうこと?
私は未だ離してもらえない手が嫌で、息苦しくなった。だって知らない人だし、当たり前なんじゃないかな?
私は後ずさりながら手を振ると、否定していた彼の手がいとも簡単に外れた。ホッとしながらもじりじりと後ずさる。
彼を苦笑いしてドアに寄りかかる。あ、ヒドい。
「何もしないよ。安心して?そーゆーことしに来たんじゃないから、さ」
「……帰って、くれます…?」
「え、うーん、出来ないかなぁ」
なぜ?!
……顔に出ていたらしい。彼は私の顔を見て低く笑うと、袖から何かを取り出した。なんか……ガラス?えっと……あ。
砂時計?
「あと……五分くらいかな」
え、五分くらいかなって……ここにいるって事?ちょ、勘弁してよ……。それよりも早く帰ってくれないかな。……あれ?何で私、彼を信用してるの?あれ?なんか、……うんん?
私がクエスチョンマークをたくさん浮かべていると、彼は朗らかに笑った。
「あは、君、ボクのことあんまり警戒してないでしょ?そりゃそうだ」
「……、…え?」
「だってボクは、君に害をなす存在じゃないから」
どうゆうこと?意味が分からないよ。理解不能。だけど、何でだろ、ほんの少しだけ、納得してるって言うか……。椅子に座りながら考える。
あー、ダメダメ。警戒しなくちゃ。
……あぁ、ダメだぁ。苦しい。痛い。何でだろう……
「……あ、あと二十秒」
え、なにが?
「あ、そうそう君、」
なに?ごめん、頭痛くなってきちゃった。
私は視線だけ動かして彼を見る。眠いのかな、ぼやぼやだ。
「君、あと一分で寿命」
……え?な、にそれ?
私は何か言い返そうとして、立ち上がろうとした。けど、立ち上がれなくて……。
疑問に思うと同時に、ズキン、と強烈な痛みが頭と心臓を襲う。
ぐらりと前に傾ぐ私の体。床に体と頭を打ち付ける。意識が途切れる少し前、部屋の外から声がした。
「───、ご飯よ?───?入るわよ?」
ドアが開くと同時に、彼は笑いながら私に手を差し出した。続く悲鳴。
意識が消える寸前に、彼は言った。
「さあ、逝こうか?」