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OUT BURST  作者: 祭坊主
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13/21

会議

 しばらくすると、アレスはレミと共に寝室を出た。部屋の窓からは、さっきまで聞こえなかった小鳥の鳴き声が入ってきている。

「気が付いたか」

 中央の部屋で二人を出迎えたのは、机に向かってなにやら話をしていたマドラとトラスだった。

「傷の様子はどうだ。もう平気か」

「傷には慣れている。ただ少し、歩くのには不便になったな」

 彼の太ももは、左右諸共肉を削がれ、従来通りの早さを維持した駆動は、望めそうになかった。

「そうか……大体の話はトラスに聞いたが、その傷を負わせた魔導師の事を教えてもらおうか。情報なら提供できる」

 魔導師を引退した後も、マドラは魔導師との繋がりを保っている。一方アレスはと言えば、誰よりも魔導師に貢献した立場にも拘らず今の魔導師がどういう形をとっているのか、どんな者が新しく魔導師になったのか、などの諸々の問題に関心を向けていない。彼の中で魔導師とは、それが一般民衆との良好な関係を築いているかどうかという所でしか問題になっていないのだ。

 アレスが小屋を出てからの一部始終を話すと、マドラはしばらく考え込んだ。

「分からんな……」

「何がだ?」

「その灰色のローブを纏った魔導師の、目的が、だ。トラスの話を聞けば分かる」

 マドラとアレスの視線を受け、トラスは語り始める。

「昨夜の話です。アレス魔導師が村を出て以来、私たちは酒蔵の地下で静かにレミの帰りを待っているのみでした。そして夜になると、一人の灰色のローブを着た若い男が酒蔵を訪れたのです。男は来るなりこう言いました。

『ここから北へ真っ直ぐ進め。いずれ不自然に作られた谷とぶつかろう。その最深、中央を掘り起こせ。望み薄ではあるが、貴様らの道は、まだ生きているやも知れん』

 と……。私は言われた通りの場所へ向かい、アレス魔導師を見つけたのです。あの状態の魔導師様を村へ連れていくのはまずいと判断して、この小屋を見つけて入った次第です」

 アレスは昨夜はありがとう、と一言礼を言った後に、顎に手を当て考え始めた。

「どういう事だ……ホーヘンは俺を自分で殺しておきながら、何故救うような真似を?」

「俺も、疑問に思っていたのはそこだ。お前の話を聞くに、ヴァン・ホーヘンは確実にお前を標的として戦いを挑み、そして殺してきたはずだ。それが何故、後になってお前を救ったのか……。全く以って真意が見えん。彼の素性も、目的も、未知数すぎる」

「ああ。だが何にせよ、俺はすぐにまた、フィケルへと向かう。例えホーヘンが敵となろうと味方となろうと、関係ない。……もう時間がないだろう」

「ああ、それなんだがな……」

 意気込むアレスに、マドラが思い出したようにレミを見た。

「どうかしたのか?」

「どうもなにも、俺自身まだ何が起こっているのやら、皆目見当もついていない」

 マドラの言いたい事が分からず、レミとマドラとを交互に見ていると、驚愕すべき言葉が言い放たれた。

「魔導草の副作用の予兆さえもが、一向に表れないのだ」

 あまりに唐突な話に、アレスは一瞬反応する事が出来なかった。

「どういうことだ?」

「先も言っただろう。俺にも事情が解せのだ。いや、だからと言って本来の作用である治癒は確実に効いている。安心して良い。ただやはり、魔導草を使ってからおよそ半日……既になんらかの体調の変化が表れるはずなのだ。元来魔導師ではないが故に、進行の速度が遅くとも不思議ではない。だが今のこの状況は……逆に不自然なのだ」

 レミは自らの事でありながら話について行けず、だが状況は多少理解し、静かに話を聞いていた。

「副作用が表れていないというのは、むしろ喜ぶべきことなのでは?」

 トラスが口をはさむと、今度はアレスが答えた。

「否、それは分からない。魔導草の副作用は、その表れ方が二種類存在する。これは魔導師である俺の経験に過ぎないが、一つは魔術を使い、即刻その反動として身を削られる場合。もう一つが、日々の生命力を維持するために一定周期で表れる傷として表れる場合だ。レミに魔導草の副作用が見られるとしたら先ず間違いなく後者のものだろう。周期というのには、個人差がある。短い間隔で表れ、その傷の大きさも大したことが無い、という奴もいれば――」

 そこまで言うと、マドラがレミを横目に、低い声で言った。

「長い周期で、そのために訪れる反動も、それだけ溜められた強大なものになるという可能性もある」

 部屋に、重たい空気が流れる。事の重大性が、時間制限から、威力規模の大きさへと移ったのだ。

「レミが暗殺者共に襲われた理由と合わせ、そこは未だ不明だ。だが、どちらにせよ危機が迫っている事に変わりはない」

しかし――

「信じています」

 レミは相変わらず真っ直ぐな視線でアレスを見つめている。言葉が今度は現実のものとなって、アレスはようやく理解し直した。彼女が自分に抱いている感情を。自分のとるべき態度を。

義務ではなく。

責任ではなく。

言い訳ではなく。

彼は長老会と戦い、魔源石を手に入れ、レミを救う。

「ああ。分かった」

 こうして、一人の魔導師は最後の戦いに挑む決意を固めた。


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