聞こえない世界
▼プロローグ
音の無い世界、それはどんな世界なのだろうか?
音が聞こえないという事はどんな感覚なのだろうか?
日常に当たり前のようにある音が無いという事はどんな世界だろうか?
風の音
木が揺れる音。
いや、これくらいなら聞こえずとも聞かない奴らが多いいだろうな。
車の音
電車の音
人の話声
音楽も聞けない。
いや、さずがにそれは困るな。
音が無い世界は一体どんな世界なのだろうか?
その世界を知る事になるのはこの1ヶ月後の話だ。
高校に入学してから丁度、1ヶ月。だいぶ、クラスにも慣れてきて入学時のあの、ぎこちない空気はすっかり無くなっていた。
っていうのに、別に嬉しさとか高校生ライフを満喫するっ!!って言うのは別に無い。
というか、興味が無い。
いや、興味が無いと言ったら何もない奴みたいじゃないか。俺だって興味を持つ事ぐらいあるさ
ゲームだろ、パソコンだろ、ケータイに、
後は小中までやってたバスケは好きだったかな。…過去形だけど。
クラスに、と言うか「人間」に興味というか、感心が無いのかな。多分。
と、いつもみたくどーでもいい自分の分析をしていた所で
「ゆうー!!今日一緒に帰ろうぜっ!」
同じクラスの立石雅人が話し掛けてきた。
『いや、俺一人で帰りた』
「いーから、いーから!」と立石はそう言って、俺の腕を引っ張る。
こいつはいつも強引で、正直な所あまり関わりたくはないって言うのが本音だ。
茶髪にワックスで固めたのかツンツンにしていて、何かとニコニコと笑うこいつが俺は苦手だ。
というか、嫌いだ。
制服は第二までならともかく、第三まで開けてるし
「ゆう!駅前にさ、すっげー旨いラーメン屋さん出来たん…『わりぃけど、行かねーから』
俺はいつもみたくそう言って立石の手を振り払う。
こいつが俺を誘ってきたのはこれで何回目なのだろうかと
数え切れない程、誘ってくる立石が嫌いだ。
そして断るのと同時に毎回、
『後、俺の名前はゆうじゃないら。
優って書いて、「すぐれ」だから。』
「おう!」
といつも立石は言うが、すぐれと呼ばれた事は一度もない。
元々、このややこしい名前は好きじゃなかったし俺だってゆうって方が分かりやすいらそっちの方がいい。
もうクラスのやつはゆうって思ってるんだろうな。
あー!立石の奴!!
まじ、うぜぇ
「まぁまぁ、ゆうそんなに怒らないで…」
『す・ぐ・れ!!』
自分の名前を間違われるのも、好きじゃない名前をいちいち教えるのも
イライラするし、気分が悪い。
立石といい、何なんだ?
ヅカヅカと俺の中に踏み込んでくる。
むしゃくしゃした俺は、自分の黒髪をぐしゃぐしゃとかき、
いつもみたいに立川の誘いを断った。
それにしても今日はイライラするな、よし!早く帰ってゲームだな、
学校の裏の駐輪所に向かい、自分の自転車に手を掛ける
高校の入学祝いに買ってもらったエンジ色の自転車で結構気に入ってる。
立川がよく、後ろに乗ってこようとするけど振り払う。冗談じゃない。
まだ新品だし、野郎と二人乗りなんかまっぴらだ。
―ガチャ
よし、行くか!
サドルにまたがって、ゆっくりと地面を強く蹴る。
俺は、この自転車で走り出す瞬間が好きだ。
バスケの試合が始まる時みたいな感覚なのかな、
右左のペダルを漕いで、風が当たって気持ちがいい
嫌な事なんて、すぐに忘れちゃうぐらい
この自転車で高校から出てすぐにある下り坂を自転車で降りるのも
俺の楽しみの一つだ。
人をどんどん抜かしていく事の快感、
ぶつかりそうになるけれど避けるっていうハラハラする感じ
今思えばこの瞬間が一番のストレス解消の時間なのかもな
また今日もいつもみたいにその下り坂を降りる
ヒューっという風の音が気持ちいい
「ちょっと!危ないじゃん!!」
こんな事を上級生から言われても
逆にスッキリした気分になる。
自転車だし
そんな事を思ってどんどん下へくだっていく
それと同時にましていくスピード、
このスリルが好きだ
と今日も絶好調で坂を下る。立川の事なんてもうすっかり頭にない
どんどん下へ
下へ
(何だ?…あいつ?)
また今日も下へくだって行くだけだと思っていた
そう思っていた矢先、1人の女が見えてきた。
グレーのスカートに紺色のブレザー、うちの生徒か?
ベルでも鳴らすかと思い、ハンドルの横にあるベルをリズムよく鳴らす。
(あれ?聞こえていないのか?)
まだ、近いって距離でも遠いって訳でもない距離。
聞こえなくて当然といえば当然。
よし、もうちょっと下ってから
スピードが増していく、そろそろ聞こえるだろうと言う距離で銀色のベルに手を掛ける
―チリンチリン
(無視かよ?)
辺りにいる生徒はそのベルの音で振り向くのに、その女だけ振り向かない。
と言うか反応が全くと言っていい程…無い。
と思っていたらすぐに彼女の目の前までくる。
(よけろ?って事かよ!あー!そうですか、避けてやるよ)
と思い自転車を右に傾け
『無視すんなよな』
とその女子生徒の前を曲がろうとした
―ガチャァァァン
その瞬間。
急に止まり出す、女子生徒
『え!ちょっ…!』
その俺の取り乱す声にも反応しない
ケータイを取り出す女子生徒。
(何だ!…こいつ)
と怒りを覚えた時には顔は地面に叩きつけられ
避けようとした為にバランスを崩しコンクリートへダイブしたハンドルが曲がった自転車。
膝からは血がうっすらとにじむ。
と、その時にやっと携帯を片手にメールを打とうとしていた女子生徒が振り帰る。
まるで、どうしたの?って顔をして
『お前なぁ!歩道の真ん中歩いて、
…俺もスピード出しすぎたけど
無視すんなよな!!!!』
「?」
相変わらず、困った顔をして何かあったのか?と問いかけるような顔を俺に向ける。
いや、大丈夫ですかとかごめんなさいぐらい言う常識は俺にだってあるし
高校生なんだから当然だろ…
『その何もしてねぇって顔はねぇだろ?
…ったく。』
とよろめきながら立ち上がり、制服のホコリを払って
自転車を手に取ると
「「!!!!!」」
さっきまで何の反応もしていない女が急にびっくりしていた。
何だ、やっと自分のした事に分かったのか。
『まぁ、俺も悪かったしいいよ』
と言った所でサドルにまたがりペダルを漕ごうとしたとき、
―っつう
『ってえ!傷が当たって漕げね…
って、まだいたのかよ」
とさっきの女に言った。別にもういいのに。
「…」
と無言でその女は、自転車を?というかケガをした膝を指先す
『あぁ、もういいから』
と自転車を降りてまた坂を降りようとする俺の腕を引く。
「…」
無言でまた今度は下り坂とは反対の緑の屋根を指差した。
『何?俺にこいと?』
頷く女子生徒。
何だよ、喋ろよ、
答えは決まってノーだ。家でゲームが待ってるし、怪我してるから早く休みたい
『わりぃけど帰るから、
俺、人と関わりもつの特定の人だけって決めるから』
「…休んでいって」
と多分言ったのか?言いたかったのか、そう聞こえた。
『あーもー
面倒くさいからいいってば』
と本日二度目となるお断り。
「…」
相変わらず黙ったままの女子生徒。
『あのさー…「ゆーうー♪♪♪」
この声の主は…
後ろから聞こえる声に振り返るとやっぱり
満面の笑みをした立川だった。
『だーかーらー「はいはい。すぐれちゃーん!!」
『…ったく』
「ってか、ゆう怪我してんじゃん!
あっ!!!!ってか何で、声なし美人がここに?」
と怪我をした俺を見たかと思えばその女を見る
とびっきり目を輝かせて。女子生徒は引きぎみ。
『ってか、何その声なし美人って?』
と俺が言うと待ってましたと言わんばかりの立石の輝きよう。
「よくぞ聞いて下さいました!声なき美人、1組にいる一度もその声を聞いたものは誰もいない美人の、
我らの姫、小時 理音様の事です!」
『我らの姫ってね…』
そういう事にあんまり興味がない俺でも確かに、その小時って奴は美人だと思う。
よく見ると白い肌にぷっくりとした赤い唇。
睫毛なんか長くて影が出来ていて
極めつけはこの栗色のショートカットからの
ハッキリとした二重。
「おーい!ゆう?」
『ん?』
「何?姫の事、見とれちゃってんの?」
『ばっ!勘違いすんなよっ!ってか、俺帰るし…「その足でぇ?その顔でぇ?」
『分かってるよ、俺の顔がキモいって事ぐらい!』
「素直じゃないよねー…じゃっ姫の家行こうよ!」
「…」
と、また無言でどことなく嬉しそうに頷く小時。
『何でお前がその事知ってるんだよ!』
「え?だって姫の家って大きいし、宿やってるから人もよく泊まるし、俺も止まった事あるよ?
どーせ、ゆうちゃん誘われたのに断ったんでしょ?」
『さっ…誘われたって!』
「あはは!ゆうちゃん、純粋〜♪まぁ、怪我してるし、泊まってけば?
俺そのまま帰るけど?
いいでしょ?姫?」
と立石が聞くとこれまた頷く小時。
『いや俺も帰れる…((ドン))
とぶつけた足を立石が蹴ってきた。
『いってぇぇぇえええ!!』
「捻挫っぽくない?ゆうちゃん転ぶの下手~!」
『捻挫じゃねーよ!』
―ドシ
『…っつう!』
「まぁ、その足じゃ自転車どころか歩くのもキツイっしょ?
俺が漕ぐからゆうちゃん後ろに『嫌だ!!!!』
「はぁ、姫ちょっとゆうちゃんの足蹴って」
『は?何言って…(ドシッ)』
姫って…確かに可愛いけど姫じゃないだろ?
って程のキック力で立石にVサインをしていた。
地べたに座った俺は1人では起きあがれず二人に支えられ
自転車へと乗った。
「〜♪ゆう、ほらすぐそこだよ〜」
『あっそ』
と立石の笑顔とは反対の膨れ顔の俺。
と何故か嬉しそうに後からついてくる小時。
「着いたよ、」
今日は散々な日だ!と、思ったのは裏腹にすぐに驚きと感動へと包まれる俺
『でっでけぇ……!!!』
「まぁ、宿だからね。じゃあ俺は帰るよ。
姫、後は宜しくね!」
『えっちょ…』
待てよと言う暇もなく自転車を漕いで帰った立石。
『あっ!』
「?」
『立石のやつー!俺の自転車乗ってきやがった!』
「!!!」
と、また無言でびっくりする小時。
どうぞっと言うように茶色のドアをゆっくりと開け、中へ招き入れる。
あのときは遠くから見たから気づかなかったけどでかい。
昔の家の日本のような家にちょっと近いが、レトロな感じでとっても味があってお洒落な作りの家だった。
{おかれりさないませお嬢様。}
『…格差社会』
「?」
『いや、別に』
でかい家に執事つき。恐るべし、小時。と心の中で思う俺だった。
{おや?そちらのお客様は怪我をしていらっしゃいますね?
一度、お手当てを。}
『え?あぁ、すいません』
ありがとう、横にいる小時にそう言うとにっこりと笑った。しゃべんねーのかな、こいつ。
「〜♪ゆう、ほらすぐそこだよ〜」
『あっそ』
と立石の笑顔とは反対の膨れ顔の俺。
と何故か嬉しそうに後からついてくる小時。
「着いたよ、」
今日は散々な日だ!と、思ったのは裏腹にすぐに驚きと感動へと包まれる俺
『でっでけぇ……!!!』
「まぁ、宿だからね。じゃあ俺は帰るよ。
姫、後は宜しくね!」
『えっちょ…』
待てよと言う暇もなく自転車を漕いで帰った立石。
『あっ!』
「?」
『立石のやつー!俺の自転車乗ってきやがった!』
「!!!」
と、また無言でびっくりする小時。
どうぞっと言うように茶色のドアをゆっくりと開け、中へ招き入れる。
あのときは遠くから見たから気づかなかったけどでかい。
昔の家の日本のような家にちょっと近いが、レトロな感じでとっても味があってお洒落な作りの家だった。
{おかれりさないませお嬢様。}
『…格差社会』
「?」
『いや、別に』
でかい家に執事つき。恐るべし、小時。と心の中で思う俺だった。
{おや?そちらのお客様は怪我をしていらっしゃいますね?
一度、お手当てを。}
『え?あぁ、すいません』
ありがとう、小時と言うとにっこりと笑った。しゃべんねーのかな、こいつ。
『あ゛ー染みるぅ〜』
小時の家は宿をやってるってもんだから庶民的なものなのかと思いきや
超豪華。執事さんに風呂の案内をされて、さすがにただ飯で泊めてもらって悪いと思ったから断わろうと思ったけど
入って正解だな。露天風呂だぜ?最高じゃん!
綺麗な夜空に囲いは竹!
近くに置いてある竹で流れる水の音は何とも風流だ。
何でも小時が作ったとか、執事さんが言ってたっけ?
『アイツ…執事さんとも喋ってなかったな…』
最初は声が聞こえないんじゃないか?とも考えたけど立石の会話にも頷いたりしてたし
決定的なのは手話はもちろん、筆談などしている所を見ていない。
じゃあ何だアイツは?本当にただの声無し美人ってキャラなのか?
露天風呂を満喫した俺は、自分の部屋に戻る前に足を止めた。渡り廊下で腰をかけ月をじっと見つめている小時がいたから。
『風呂サンキューな』
そう言った俺は床に腰をおろした
「…」
小時と会話をしても成り立った事がない。いや、成り立った事がないと言う訳では無いみたいだな
向こうは「言葉」の代わりに「表情」で返してくるし
頷いたりして自分の意志を表してくる。
言葉は通じてんだろうな、「言葉」は。
『なぁ、お前って喋んねーの?それとも喋れねーの?』
「…違う」
『何だよ喋れるんじゃねー…』
何だ?
だんだんと顔色が暗くなっていく小時。
いや、ちょっとばかしズバッとした事聞いたけど、そんなに落ち込む程か?
さっきまで目をあわせていた小時はすっかり下を向いていてすごく困ったような雰囲気のようだった。
そりゃそうか、俺にだって知られたくない事はある。こいつも何かあるんだな、
よし触れないでおくよ、もともと人とは関わらない主義だし。俺だって話したくない事ぐらいある。
『ごめん、喋れないとか何か事情があるんだろ、
あっもういいからいいから
ごめんな、』
空気を重くしてしまったみたいだから、出来るだけ明るく、そして早口でそう言った
やっぱり、いつまでも話してるのはしょうに合わないみたいだ
すぐに逃げ出したくなる。あの頃を思い出すようで。
『じゃ、俺寝るわ
おやすみ』
「…違うの」
『だからもう聞かねーってば』
「違う」
『だーかーらー!』
段々イライラしてきた。何なんだこいつは?
違う何が?俺の言った事?一体何が?
『お前、主語を言えを主語を…
「聞こえないの」
『だから、何が?』
「…」
小時の両目が俺をまっすぐと見つめる。整った顔で、くっきりとした平行二重。月の光でさらにきらきらと輝いていた。
立石が、姫と呼ぶのも何となくだけど分かる気がする。…何となく!
「耳が」
俺がそんな事を思っていると小時がボソッといった。
『は?』
「聞こえ…ない」
『…?』
「… 」
思わず無言になる俺と、もともと無言の小時。
―ミミガキコエナイ―
は?
―みみが聞こえない?―
みみ?
耳?
―耳が聞こえない―
『……!!!!!』
いきなり目の前にいる奴に耳が聞こえないと言われてみ、
頭の中が真っ白になる程衝撃的で、それと同時に「俺、空飛べるんだぜ」的な非現実的な話しだ。
いや、非現実的では無いな。現実にあるから、
まだ実感がない、…いや信じられないのが妥当か?
『…まじで?』
迷った俺は、曖昧な返事をした。それ、本当?っていう答えを聞くのに遠回しにかといってあまり傷つけず、
俺なりに考えた返事。
「ふぅ…」
俺がそう質問すると小時は深くため息をして、月の光で輝いていた目はどこか切なそうな目で俺を見つめた。
この目を見たら誰だって思うだろ、耳が聞こえないのが
『本当』だと言う事に。
あいにく、こんな時に何て声を掛ければ良いのか分からない俺はただ黙ったまんま小時の隣に座っている事ぐらいしか思いつかなかった。
長い間の沈黙で今自分が答えられる言葉を必死になって探して
出てきたのは
『教えてくれてありがとう』
こんな事しか言えない俺だった。人ってどうやって人を元気づけたり
励まし合ったりするのかな。
「…」
耳が聞こえなくてもこんなに豊かな表情をするんだなと
小時の笑顔を見て思った。
自分ではよく分からなかったけど、小時のその笑顔はその時の俺の心を楽にしてくれた。
気にしないでってまるで俺の方が励まされている
そんな気分だった。
俺はこんな風に楽にしてあげた事はあっただろうかと、問う自分に答えられなかった自分が恥ずかしくなった
そして小時みたいに、こんな笑顔で笑った事はあったのか、何も持ち合わせていない自分を今はっきりと知った気する
『じゃ、夜遅いから
おやすみ』
立ち上がった俺は、寝室へと向かう。よっこらせっと床に手をつく。
そうだよ。そうやって俺はいつも逃げてるんだ。何も出来ない問題はいつも放置して次の問題に進むんだ。
知ってるよそんな事ぐらい。
「まって」
立ち上がる俺を止め、
ちょっと待っててねっと言ったみたいに待てのポーズをして
小時が部屋に戻った。
(俺、犬じゃねーし!)
と思うようなポーズだった。
『何しに行ったの?…って何だそれ?』
部屋から戻って来た小時は、携帯ぐらいの小さな青い機会を持ってきて
どこか誇らしげに笑った。
『え?何それ携帯?』
「♪」
また、どこか誇らしげに笑うとその機会を開きメールを打つみたいにボタンを打っていった。
『メール?』
「――これは私が伝えたい事を打ち込み機会なの――」
俺が質問するといきなりその機会をぐっと近づけて近づけたかと思えば、優しく綺麗な声が出た。
『ハイテクじゃん!って
何で会話が出来んだよ?耳聞こえないんだろ?』
ちょっと間をあけて、またその機会に打ち込んでいった。
「――優くんの口の動きで何を喋ってるのかだいたいだけど分かる。
早口だとさすがに分からないけど――」
『…すごいな!口の形って普通わかんねぇよ!
小時ってすげぇのな!』
「――そんな事ないよ――」
その機会からの声はどこか恥ずかしそうで小時の顔もどこか照れていた。
そんな小時を見て何だか俺まで照れてしまった。