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片腕の救世主  作者: あに
第3章 生贄の町編
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第0話 『馬鹿だったのは』









『昔、この世界は魔王がいたのよ』






珍しく静かな夜に、二人きりで星を眺めながらその放しに耳を傾けていた。

プラチナブロンドが月明かりに照らされて、白く光っていたのが印象的だった。

砕けた会話をするようになってから、心が少し穏やかになっているのを感じていた。


『へぇー、んじゃあ勇者とかもいたの?』


ふざけて聞いた質問に、クスクスと笑いながら頷く。


『今はいないんだ?』


『魔王を封印した後、勇者も消えてしまったらしいの』


『RPGだったら勇者は英雄になってお姫様と幸せになるのが多いんだけどな』


『あーるぴーじぃ?』


『そっ。俺の世界の……御伽話みたいなものだな』


『あなたの世界は不思議ね……皆が平和で、平等な世界』


夢を見る乙女のような顔に見惚れた。

寝転がる自分の隣で座っている彼女の横顔を見てると、ぽつりとつぶやく。


『本当は、魔王は悪い人ではなかったの』


『は?』


『昔は、あなたの世界みたいに、平和で平等だった……でも、小さなことで世界が割れてしまった』


『……』


『魔族と人間の世界はぶつかりあっていて……それを止めていたのは魔王だった』


『結局、魔王は悪者にされたんだろ?』


『そう……勇者が魔王を封印した。そのせいで、世界は平和になったと思われていたけれど、戦争が起こるようになった』


『へぇ』


『魔族と魔族、魔族と人、人と人……戦争がどんどん起こって、よくにまみれた世界になっていった……それが今の世界だといわれているの』


『今の戦争はその延長か……』


1つの秩序が崩れれば、全てが崩れていく。

誰かを悪としなければ正義は生まれない。


『魔王は今の世界を見てどう思うんだろうな……』


『きっと、悲しむでしょうね……魔王はただ世界を守りたかっただけでしょうから』


『哀れだな』


『魔王が?』


『勇者と魔王……2人とも』


『なぜ?』


『勇者もわかってたんじゃねぇの?魔王がいなくなれば全部壊れるって……だから殺さずに封印したんだろ?それで逃げ出した。魔王も、自分が助けようとしていた世界に裏切られて……馬鹿みたいだ』


『ユーガ……』




『ほんと……馬鹿だよな』








そんな馬鹿に自分が成り下がると感じていた。







あの頃から、決意は固まっていた。







俺は本当に……馬鹿だ。











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