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二度目の人生は勇者パーティに入りません 〜裏切られた最強魔導士、今度はSランク冒険者と魔王を先に倒します〜  作者: 月代
第三章「Sランクの旅」

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第二十八話 呼び戻す手紙と、守りたいもの

ベルナ滞在四日目。

 アルド宛てに王都の正式印の書簡が届いた。


 今度は王の補佐官名義。文面は簡潔で、期限は五日。

 応じない場合、辞退無効の主張を抑えられない可能性がある――。


 “可能性がある”。断定ではなく可能性。脅しの形だが、建前は情報共有。前世で貴族たちが使っていた手法と同じだ。直接の命令を避けて、“自主的な判断”を強いる。


 紙一枚が、街道の空気を重くする。


 アネスが言う。「強い言い方になったね。前は実務官だった。今度は補佐官」


 格が上がっている。つまり、無視できなくなっている。


 アルドは書簡を畳み、机の端を指で叩いた。

 癖のない動作なのに、指先だけが苛立っている。


     ◇


 その夜、アルドは一人で外へ出た。

 珍しい沈黙が部屋に残る。レインは窓辺に肘をつき、アネスは茶を淹れ直していた。


 レインが窓の外を見て呟く。「揺れてる」


 アネスはセラに顔を向けた。


「私たちが言うより、響く言葉があると思う」


 セラは首を振りかけて止めた。

 なぜ自分なのかは分かる。

 手放したものと奪われたもの。形は違うのに、痛みが似ている。アルドは”捨てた”側で、セラは”捨てられた”側。でも”選択の後に残る空洞”は同じ形をしている。


     ◇


 アルドが戻ったのは夜更け。

 テーブルの上にスープが置いてあった。アネスが用意して、先に寝た。レインも毛布を被っている。


 セラだけが起きていた。


 スープの湯気の中で、アルドはぽつりと聞いた。


「帰るべきだと思うか?」


 セラはすぐに答えない。正解を探すと、何も言えなくなるから。

 前世で学んだのは、“正しい答え”より”正直な答え”の方が遠くまで届くということだ。


「分かりません。王族のことは私には分からない」


 正直に言ってから、セラは続けた。


「でも、脅され方で決めるのは嫌です。何を守りたいかで決めた方がいい」


 アルドは息を吐いた。「守りたいもの、か」


 セラは言葉を並べる。


「人。街道。現場。……全部は無理でも、優先は自分で決めるべき」


 アルドは小さく笑う。「それが一番難しい」


 その笑いに、自分が前世で押し込めたものが少し動く。

 選ぶ権利。選ぶ責任。セラは前世でそれを奪われた。アルドは自分で選んで、その結果を背負っている。


     ◇


 翌朝、方針が決まる。


 王都へ戻る。ただし本城へ入らず、外郭会議館で辞退確認を通す。その代わり辺境補給と関税の遅れも要求として載せる。


 レインが笑う。「言われたことだけやらないの、いいね。向こうの土俵じゃなくて、こっちの条件を入れる」


 アネスは支部長に協力を求め、現場の証言を集める段取りを立てた。ベルナの状況がどれだけ逼迫しているか、数字と名前で示す書類。


 セラは必要書類を濡らさないための封を作り、旅支度を整える。蝋と魔力で封じた防水の袋。地味だが、書類が濡れれば全てが台無しになる。


 揺れた足元は完全には戻らない。

 それでも、揺れたまま立つ方法がある。

 セラはそれを一つ、言葉で掴んだ。

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