第十四話 十七歳のAランク査定
十七歳になった週、セラは支部長に呼び出された。
「セラ。Aランク査定候補に上げる」
前世より少し早い。
「査定内容は」
「実技二つ。模擬戦と実地討伐」
「模擬戦は防衛対象付きの連続制圧」
「実地は山道の巣穴掃討だ」
セラは短く頷く。
「受けます」
◇
査定前の数日、セラは火力より”連続対応”を鍛えた。
障壁の張り替え速度。
複数標的への切り替え。
魔力配分。
短い休息での回復。
灰猫亭の裏庭では、ゲイルが木片を投げて反応訓練にも付き合ってくれた。
「右! 次、左上! 止まるな!」
「……っ!」
木片を風で弾きながら、セラは息を整える。
不規則な軌道は対人戦に近い。
訓練を終えると、ゲイルが水を渡しながら言った。
「Aランクになっても、一人で全部抱えるなよ」
「……みんな同じこと言う」
「同じこと言われるなら、お前にその癖がある」
返す言葉はなかった。
◇
模擬戦当日、訓練場には見物人が多かった。
十七歳のAランク査定候補、しかもソロ魔導士。
珍しいのだろう。
条件は”防衛対象を守りながら三分間制圧”。
セラは開幕で木柱の周囲に薄い障壁を二重に張り、外周へ土杭を配置。
投擲を風で逸らし、接近役の足を止め、反対側へ火球。
正面を見ながら感知で背後の揺れを追う。
忙しい。
だが、整理できる。
前世の魔王戦に比べれば、まだ手順が見える。
三分後、終了の合図が鳴った時、木柱は無傷だった。
どよめきが起きる。
セラは振り返らない。
まだ一つ目だ。
◇
翌日の実地討伐は、山道沿いの洞穴掃討だった。
査定官二人が後方監視につく。
洞穴系は継戦能力が出る。
入口で感知を広げる。
中型複数、奥に大型一。
前世の記憶とも一致する。
入口の小型は風刃と土杭で処理。
狭所では火球を圧縮して反射を避ける。
視界が悪い場所は感知優先。
大型を削りきる直前、横穴からもう一つの反応が現れた。
「……二体」
前世と違う。ズレだ。
査定官は介入しない。
セラは一瞬で判断し、通路中央に土壁を立てて一体を分断した。
二体同時は無理。
一体ずつやる。
風刃で関節を裂き、火球を傷へ押し込む。
腕が痺れ、視界が揺れる。
それでも手順は崩さない。
一体目を落とす。
土壁が砕け、二体目が来る。
障壁、回避、土杭、火。
息を整える暇もない。
最後の一撃を叩き込んだ時、洞穴に静寂が戻った。
セラは壁に手をついて呼吸を整える。
魔力は少ない。
足も重い。
でも、倒しきった。
「終了だ。……よくやった」
査定官の声で、ようやく力が抜けた。
◇
Aランク昇格の通達は二日後に出た。
ギルドの掲示板がざわめく中、セラは新しいギルドカードを受け取る。
刻印はAランク。
前世で勇者パーティに入った頃の実力に、ようやく肩書きが追いついた。
やり直しの二年間で積み上げたものが、形になった。
嬉しさはある。
でも、ここは通過点だ。
そう思った瞬間、ギルドの外で緊急鐘が鳴った。




