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二度目の人生は勇者パーティに入りません 〜裏切られた最強魔導士、今度はSランク冒険者と魔王を先に倒します〜  作者: 月代
第二章「ソロの冒険者」

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第十二話 断り続ける理由


Sランクパーティの勧誘は、一度で終わらなかった。


 三日後、ギルドで会えばアルドが声をかけてくる。

 別の日にはレインが依頼板の前で軽く誘ってくる。

 アネスは治療室で顔を合わせれば自然に話しかけてくる。


 断っても、態度は変わらない。

 押しつけがましくない。

 怒らない。

 見下さない。


 それが逆に、セラにはやりづらかった。


     ◇


 ギルド裏の訓練場で、セラが障壁の張り替え訓練をしていた時。


「そこ、左下だけ厚くなる癖あるね」


 振り向くと、レインが柵にもたれていた。


「……見てたんですか」


「ちょっとね。ごめん」

「でも悪い癖じゃない。対人だと便利」


 図星だった。

 前世で右利きの相手が多かったせいで、左下を厚くする癖がある。


「だから何ですか」


「別に。気づいてるならいい」

「うちだと攻撃角度が散るから、癖あると連携しにくいなって思っただけ」


 また自然に勧誘の文脈へ持っていく。

 セラは息を吐く。


「私は連携しません」


「知ってる」

 レインは軽く答える。


「でも、連携って”信用”だけじゃなくて技術の噛み合わせでもある」

「そこは慣れでどうにかなる部分も大きいよ」


 信用、という言葉に胸がざらつく。


「……簡単に言いますね」


「何が?」


「仲間とか、連携とか」

「そんなの、いつ壊れるかわからないのに」


 言ってから、余計なことを言ったと思った。

 レインはからかわなかった。


「そうだね。壊れる時は壊れる」

「でも、壊れるかもしれないから最初から持たないのも、もったいない」

「俺はそう思う」


 押しつけない言い方だった。

 ただ自分の考えを置いていくだけ。


 レインは手を振って去り、セラはひとり障壁を張り直す。

 指摘された癖が、余計に気になった。


     ◇


 その夜、セラは夢を見た。


 魔王の間。

 割れる結界。

 膝をつく自分。

 振り返った仲間たちの顔。


「囮、ご苦労さま」

「最初からそのつもりだったし」


 笑い声。


 その輪郭がなぜか、アルドたちに重なった。


「やめて……!」


 叫んで目を覚ます。


 汗で寝具が湿っていた。

 暗い部屋で、セラは肩で息をする。


 違う。

 アルドたちはまだ何もしていない。

 裏切られたわけでもない。


 それでも、心が勝手に警戒する。

 似た構図を見るだけで、前世の傷が疼く。


「……だから、パーティは嫌なんだ」


 ソロでいれば、誰にも怯えなくていい。

 自分の判断だけで動ける。


 そう言い聞かせるのに、レインの言葉が頭の隅に残っていた。


 ――もったいない。


 そんな言葉、いらないはずなのに。


     ◇


 断る理由は、相手が嫌いだからじゃない。

 信じる前に、失う未来を先に思い出してしまうからだ。


 それでもアルドたちは、断られるたびに同じ距離で引いていく。


 追わないのに、離れもしない。

 その在り方が、セラの中の警戒を少しずつ削っていた。

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