第十一話 Sランクパーティとの出会い
十六歳の夏の終わり、ルドナのギルドは少し浮ついていた。
王都方面から有名なSランクパーティが立ち寄っている。
そんな噂が広まっていたからだ。
「三人組らしいぞ」
「剣士と弓と治癒術師」
「王都の依頼をよく片づけてるって」
セラは聞き流していた。
Sランクなんて関係ない。
そう思っていたのに、その日の夕方、入口近くで三人組と目が合った。
黒髪の剣士。
茶髪の弓使い。
淡い金髪の治癒術師。
セラが最初に感じたのは強さより”空気”だった。
三人の立ち位置が自然で、無理がない。
長く組んだパーティの温度がある。
「君がセラ?」
黒髪の剣士が笑ってこちらへ来る。
逃げる暇はなかった。
「……そうですけど」
「俺、アルド。こっちはレインとアネス」
「変異種をソロで何度か倒してるって聞いてさ」
肩が固くなる。
褒める。持ち上げる。近づく。
その先に利用がある。
前世で何度も見たパターンだ。
セラは表情を消した。
「噂は大げさです」
「報告書も見たけど?」
アルドは軽く返す。
レインが横から言う。
「単刀直入に言うね。うち、魔法火力が欲しい」
「入る気ない?」
広間がざわつく。
CランクのソロがSランクに勧誘される。
普通なら断らない。
「ありません」
即答だった。
「早いなあ」
レインが笑う。
「ソロでやるので」
「体験だけでも?」
「しません」
アネスが穏やかに聞く。
「パーティが苦手?」
胸がざらつく問いだった。
セラは視線を逸らす。
「……必要ないだけです」
嘘じゃない。
でも本音でもない。
本音はもっと醜い。
信じるのが怖い。
期待するのが怖い。
アルドは少し考えてから笑った。
「そっか。じゃあ今は無理に誘わない」
“今は”に、セラは眉を寄せる。
この人、また来る気だ。
「……そうしてください」
「でも困ったら声かけて」
「君、無茶するタイプでしょ」
見下しじゃない。
ただの事実みたいに言う。
だから余計に居心地が悪い。
「結構です」
セラはその場を離れた。
背中に視線を感じるのに、振り返らなかった。
◇
それでもセラは、アルドたちの距離の取り方を完全には嫌いになれなかった。
断れば引く。
必要以上に追わない。
けれど、こちらの変化はちゃんと見ている。
前世で知らなかったタイプの”近さ”だった。
だからこそ、余計に警戒する。
こういう相手に期待してしまうのが、一番危ないと知っているからだ。
アルドたちの名前を覚えてしまったことに気づき、セラは小さく眉を寄せながらギルドの扉を押した。




