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花火大会  作者: 深川清澄


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花火大会

周囲から好奇の視線を送られているように感じる。私は浮いているのが浮いているのではないかと心配になった。花火大会に行くために浴衣を着るのを一ヵ月前から楽しみにしていたのに後悔すらし始めた。最寄り駅では誰も浴衣を着ている人などおらず、花火大会に向かう電車を待ちながら私は自分の格好をなんだか恥ずかしいとすら思えてきた。

香織と花火大会に行くことを伝えると、お母さんは快く当番の夕飯係を代わってくれた。毎週日曜は私が家族四人分の夕飯を作る当番だ。小さい時に見ていたまいんちゃんが出ている料理番組の影響か、昔から料理は好きだ。大したものは作れないが先週作ったパエリアは家族全員から大好評だった。自分の作った料理を褒めてもらえるのが何よりも嬉しい。

電車の向かいの席の人が読んでいる東京カレンダーの表紙の女子アナが幸せそうに料理を眺めている。載っているお店の料理人は何人もの人に幸せや楽しさを届けることができてさぞかし誇らしかろうと思う。高級店はやはり儲かるのだろうか、それとも近所の中華料理のようにコロナで潰れたりするんだろうか。そんなことを考えていると電車に浴衣姿の子が増えてきて安心してきた。

十七時五十分には集合場所に着いた。私はいつも待ち合わせの十分前には着いている。

「お待たせ夏美」

聞きなれた声に顔を上げると、香織がいた。香織とは中学の同級生で違う高校に行った今でもこうして定期的に会っている。高三になった今では六年の付き合いだ。

花火大会会場の河川敷にはたくさんの人がいた。川を挟んだ向こう岸もブルーシートでいっぱいだ。場所取りを終え、私たちは花火大会の醍醐味でもある屋台に並ぶことにした。最後尾がわからないほどの大行列だったが私たちはジャガバターに並んだ。まもなく私たちの注文の番となった時、外国人の子供たちが前に割り込んできた。十歳位の姉弟だろうか。旅行者のようだしルールが分かっていないのだろう。私たちの人とたちも気づいていないようだし、私はまぁ許すことにした。

“Since we are in a line, you have to stand at the end of the line,”

流暢な英語で香織が子供たちに話しかける。どうやら列に並ぶのがルールだと諭しているようで、姉弟は列の最後尾に移動していった。

私は香織が注意したこと、しかも英語で話しかけたことに驚いてしまった。私の知る香織は、外国人と話せるレベルの英語力では無いはずだった。聞くと、

香織は高校から国際交流ボランティア団体に所属して、海外の人との交流の機会が多いらしい。海外の文化に触れることが楽しく、海外大学への進学を目指し勉強中との事だ。夏美は楽しそうに語る香織の横顔うらやましいと感じた。「私もそんなに好きなことがあればいいのに」と思った。

花火大会が終わり、最寄り駅から家まで帰る途中、鯖だろうか、魚の味噌煮の良い香りがした。「この前作った味噌煮は家族に好評だったなぁ。来週は何を作ろうか」夏美はそんなことを考えていた。料理の専門学校に行きたいと言う話を両親にしてみようかな。夏美は軽やかな足取りで一人家に向かって歩いた。



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