ep.95 年越しの火、灯る夜
火の輪の夜空に、星がひとつ、すっと流れた。
焚き火の中心に、孝平が立つ。
手には、銀青の札。
火の輪に名を刻んだ者だけが持つ、小さな証。
「……灯すよ。年越しの火を」
ミミルがうなずく。
「うんうん~! 今年の“ありがとう”を燃やして、来年の“はじめまして”を呼ぶの~!」
孝平が札を火にかざすと、
火が、ふっと揺れた。
ちりん。
風鈴が鳴る。
火が、青く光った。
■ ソレイユ、名前の種を火にかざす
ソレイユは、胸に抱えていた小さな貝殻を取り出した。
“記憶貝”――彼女が初めて「好き」と言った音。
「……この音が、わたしの名前になるなら」
彼女は火に貝殻をかざした。
火が、金色に揺れた。
「“ソレイユ”って名前、わたしのものになる気がする」
ネーベルが微笑む。
「火が、祝福してますね」
■ ルア、記録を閉じる
ルアは、手帳を閉じた。
「……記録は、ここまで。
これからは、“暮らしの予感”を書く」
彼は火を見つめ、静かに言葉を綴った。
――火の輪の夜、名が灯る。
■ ミニョン、布を火に投げる
ミニョンは、ヒメルからもらった布を手にしていた。
「……こんな質素な布、最初は嫌だったけど」
彼女は火に向かって布を投げた。
「今は、ちょっとだけ……好きかも」
ルージュが驚いている。
「ミニョン様……!」
「うるさいわよ。今は“火の輪の娘”なの」
■ レーゲン、剣に火を映す
レーゲンは、剣の刃に火を映した。
「……この火は、戦の火じゃない。
守るための火だ」
ガルドがうなずく。
「火の輪の剣は、誰かを傷つけない。
誰かを、包むためにある」
■ モント、風鈴の音を記録する
モントは、風鈴の音を聞きながら、ノートに書いた。
「“風鈴の音、年越しの火に呼応する”」
彼女は、火の輪の風を初めて“記録できないもの”として受け入れた。
■ トモエ、鍋を配る
トモエは、鍋をよそいながら叫んだ。
「食え! 火の輪の味だ!」
ミミルが跳ねる。
「おいし~! あったか~い!」
火の輪の夜に、笑い声が広がった。
■ ルナ&ルカ、音の色を放つ
双子は、火の周りでくるくる回りながら叫んだ。
「金色の音、飛ばすよ~!」
「火の輪の空に、音の花火~!」
火の輪の夜空に、音の色が舞った。
■ ネーベル、語り始める
ネーベルは、火の前に立ち、語り始めた。
「この火は、旅の始まり。
この輪は、帰る場所。
この夜は、“魔法の夜”」
火が、ぱちりと鳴った。
それは、年越しの合図だった。
今回は、火の輪の年越しの火が灯る回でした。
ソレイユは名前を受け取り
ルアは記録を閉じ
ミニョンは布を投げ
レーゲンは剣に火を映し
モントは風鈴を記録し
トモエは鍋を配り
双子は音の色を放ち
ネーベルは語り始めた
そして孝平は、火を灯した。
火の輪の一年が、静かに、魔法のように締めくくられました。
次回は、年明けの朝。
火の輪に“新しい風”が吹きます。
それじゃ、また火のそばで。




