ep.679 銀河実食、泥だらけの聖餐(せいさん)
「……いい香りなのです。エトスフェリアの歴史が、今、野菜だけで塗り替えられるのですー!!」
咲姫が大きな木製のおたまを高く掲げ、完成を宣言しました。鍋の中では、【重力の長いも】がホクホクとした湯気を上げ、【旋律の細ネギ】が琥珀色のスープに彩りを添えています。【白銀のもやい】は煮込まれてもなお透き通るような輝きを放ち、【焔のニラ】がスープ全体にピリッとした熱を宿していました。
「さあ、食べるのです!自分の手で掴み取った『生きる喜び』を味わうのですー!!」
咲姫の合図で、泥と埃にまみれた一行が、不器用な木の器を持って列を作りました。
「ひ、ひぎィ……。野菜だけなのに、なんて暴力的な良い香りなんだニャ……。脳が哲学(岩の説教)から解放されていくニャ……」
猫二が、震える手でスープを一口啜りました。その瞬間、彼の瞳に光が戻ります。数千年の眠りから覚めた「石の出汁」の奥深さと、五色の野菜から溶け出した圧倒的な旨味。肉がないことを忘れさせるほどの多幸感が、彼の五臓六腑を駆け巡りました。
「……甘い。……土の匂い、する。あったかいね、咲姫」
酒樽から降りたうさちぁんも、果林から受け取った器を両手で包み、ふうふうと冷ましながら口に運びます。
「あはは、長いもがサクサクしてて、これ最高のおつまみだよぉ。ねぇ、果林、これをお酒のベースにしても面白そうじゃない?」
「ええ、うさちぁん様。これほど濃縮された大地のエネルギーがあれば、新しい銘酒が作れそうです」
果林は微笑みながら、自身も静かにスープの滋味を噛み締めました。
一方で、時給15NkQの「余白(伸びしろ)」を持つネギ新人は、自分の身長ほどもある「太ネギ」の輪切りを必死に頬張っていました。
「……美味しい……。僕、記憶はないですけど……このネギの繊維が歯に挟まる感覚、なんだか魂が『お帰り』って言ってる気がします……!」
「素晴らしいのです!その『挟まる感覚』こそが、リアリティ!撮影スタッフ、ネギ新人の歯に詰まったネギのアップを撮るのですー!!」
咲姫の狂気混じりの檄が飛び、スタッフたちが最後の一滴までその「幸福な食事」を記録し続けます。見上げれば、巨大な環を持つ惑星。足元には、宇宙で一番安心できる匂いがする「かまど」
銀河の果てに、小さな、けれど確かな「お家」が誕生した瞬間でした。
【今回のまとめ:銀河版エトスフェリア第一拠点】
メニュー:銀河香味野菜スープ(肉なし、石出汁仕立て)
満足度:全員120%(猫二は精神回復、ネギ新人はアイデンティティの再確認)
成果:「はい・よー」という鳴き声が、いつしか全員の「ごちそうさま」の合唱に。
【後書き】
ここでようやくリセット完了。ここからが本当のはじまりです。




