ep.402 貨物室のシンデレラと銀河の美酒
「にゃうにゃあ!皆さん、見てください!宇宙船『アーク・ノア』は今、希望を乗せて銀河を駆けているのですー!!輸送中の皆さんの様子は、24時間ライブ配信で全宇宙にお届けしているのですー!!」
咲姫の宣言通り、船内には無数の浮遊カメラが飛び交っていた。すべてが無償化され、誰もが「天国」へ行けると信じたロケ。だが、カメラが映し出すのは、残酷なまでに明確な「三つの世界」だった。
■ ロケ船『アーク・ノア』24時間密着ライブ配信
【VIPチャンネル:酒と薔薇の日々】最上階デッキ。Lv.20【酒樽】のうさちぁんが、床に転がって酒を飲んでいる。 「あはは~、果林、この銘柄おかわりぃ~! 宇宙で飲む酒は、重力がなくていくらでも入るねぇ~」背景には煌めく銀河。日給12万NkQの余裕が、視聴者に「これが成功者の姿」と焼き付ける。
【乗員チャンネル:優雅なプロフェッショナル】中央居住区。Lv.11~15の既得権益層たちが、パンだけでなく「焼きたてのベーコン」と「温かいスープ」を囲み、明日の撮影の打ち合わせ(という名の談笑)をしている。
【荷物枠チャンネル:貨物室のリアル】最下層、貨物室。新人たちの「家」がコンテナとして積み上げられた場所。新人C(Lv.10)は、二階建ての邸宅の窓から、暗い貨物室の壁を見つめ、支給品の「乾いた白いパン」を齧っていた。
「……さらっと。視聴者の皆様、お待たせしました。本日の『貨物室オークション』の時間です。皆様の投げ銭により、彼女たちの夕食に彩りを与えることができます」
アリシアの合図で、貨物室の大型モニターにメニューが表示される。
【メニュー:コンソメスープの残り香】:1,000 NkQ
【メニュー:VIPが残したステーキの端切れ】:5,000 NkQ
「お願い……誰か! 誰か投げ銭して! 三日間パンだけなんて耐えられない! 私、カメラに向かって何でもするからぁ!!」
一人の新人が、カメラを必死に見つめて「清楚な命乞い」を始める。その必死な姿が「面白い」と、銀河中の視聴者から少額の $NkQ が投じられる。だが、その投げ銭の半分は「輸送手数料」として、VIPルームで酒を飲むうさちぁんたちの利益に自動的に組み込まれていく。
「あはは、あの子、必死だねぇ~。よし、私が1,000NkQ投じて、スープの匂いだけ嗅がせてあげよっかぁ~?」
うさちぁんが気まぐれにボタンを押すと、貨物室の新人Cの家の換気扇から、一瞬だけ肉の焼ける匂いが流れた。
「……あ、ああっ……! 匂いがする……! ありがとうございます、うさちぁん様ぁ!!」
匂いだけで涙を流して感謝する新人の姿。その「美しき格差」こそが、咲姫の狙う最高のドキュメンタリー映像だった。
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新人C(Lv.10/荷物枠):「いつか……いつか私も、匂いを嗅がせる側になるんだ……」と、暗闇の中でパンを噛み締める。
うさちぁん(Lv.20/VIP枠):「いいことした後は、お酒が美味しいねぇ~」と、さらにボトルを空ける。
咲姫(総監督):「皆さんの『欲求』が、銀河を明るく照らす光になるのですー!!」
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輸送中の三日間。それは「パンしかない現実」と「匂いだけ届く理想」の対比。うさちぁんが慈悲(?)を与える姿、まさに圧倒的な強者の余裕ですね! このライブ配信の売上で、惑星到着後の「豪華なキャンプ地」がさらにアップグレードされる予定です。 次は、いよいよ惑星パルミエに到着。タラップを降りた瞬間の「空気の差」をお楽しみに!
【裏話】
米支給にするかパン支給にするか迷いましたが、手間を考えるとパンの方がいいかな?と。
米だと洗う(水・器が必要)→(器・火が必要)炊く→食べる
パンだと焼いて支給
最近はお米高いですから、お米=支給品ではなく、自分で買うもの(高い物)で表現しました。




