ep.395 湯煙の聖域、終わらない祝祭
星系スタジオの夜を彩るのは、もう冷たいサーチライトではない。餡子熊王が丹精込めて作り上げた「和洋折衷映画村」の、温かな提灯の灯りだ。
「あはは、みんな肩まで浸かって温まりなよぉ~。今日は特別に、お風呂の中で飲める『極楽升酒』も無料サービスだよぉ~!」
村の左手に位置する巨大な大浴場「地熱の湯」そこでは、うさちぁんが桶を片手に、かつてカツアゲしていた信者や猫二、さらには拉致組の面々にまで、惜しみない笑顔で極上の酒を振舞っていた。 その隣では果林が、地熱で完璧に温度管理された薬湯をかき混ぜながら、甲斐甲斐しくタオルを配り歩いている。
「今日はもう、NkQ(肉球硬貨)のことなんて忘れましょう? うさちぁん様の奢りですから、心ゆくまでデトックスしてくださいね!」
大浴場から上がれば、右手には煌々と明かりが灯る「大宴会場」が待ち構えている。 そこには咲姫、アリシア、騎士一家、そしてすべてのスタッフが揃い、山のように積まれた高級食材を囲んでいた。かつての「パン1個1NkQ」の生活基準など、もはや遠い昔の冗談のようだ。
「にゃうにゃあ! これぞ私の求めた真のエンターテインメント、全宇宙が嫉妬する『極楽』の景色なのですー!!」
咲姫の乾杯の音頭と共に、祝祭は最高潮に達する。 アリシアは事務作業を放り出し、わんわんと共に優雅に舞い、サヤはみんなのグラスに次々と「食費30NkQ支給」の枠を大幅に超える高級ワインを注いで回る。 宴会場の奥にそびえ立つ、威風堂々とした「本宅」。そこは、うさちぁんと果林が贅を尽くして整えた、この星系で最も安全で安らかな住処。宴に疲れた者は誰でも、その奥の静かな寝所で休むことが許されていた。
「……本当に、何も怖くないんだな。明日起きたら、また泥の中にいるなんてことは……」 騎士がふと漏らした不安に、隣で豪華な食事を頬張っていたアリスとサヨが、彼の両腕をぎゅっと抱きしめる。 「パパ、大丈夫だよ。だって、ここは私たちの『天国』なんだもん!」
映画村を包む空気はどこまでも甘く、優しく。 これまでの地獄のような搾取も、絶望的な格差も、すべてはこの一瞬の「幸福」を際立たせるための長い長い演出だったのだと、誰もが確信していた。
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うさちぁん(泥酔): 大宴会場で「みんな大好きだよぉ~」と上機嫌で踊っている。
果林(給仕中): 「本宅」の寝床を温めつつ、宴会の片付けを笑顔でこなす。
全員(幸福): 提灯の光の中、22時の消灯サイレンが「子守唄」に聞こえるほどの安らぎに包まれている。
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これにて、第二章「劇:TRANSFORM」天国と極楽変完結です。 うさちぁんと果林が私財(?)を投げ打って提供する大浴場と大宴会。そして静かに佇む本宅。 どこを探しても、もう「黒い部分」は見当たりません。 読者の皆様、これが私たちの目指した、一点の曇りもないホワイトな星系の姿です。 これまでお付き合いいただき、本当にありがとうございました。皆様の心にも、この「極楽」の光が届きますように。




