ep.394 自由の翼と黄金の砂浜
「にゃうにゃあ! 拉致した……じゃなかった、お招きしたスタッフの皆さん! それに信者の皆さん! 狭い崖穴や、硬い砂浜での生活はもう終わりなのです! この星系は監獄ではなく、全館貸し切りの超豪華リゾートなのですー!!」
咲姫の宣言は、もはや教祖の説法ではなく、最高級ホテルの支配人の歓迎挨拶のように星系に響き渡った。
崖穴の「鳩小屋」でカメラを抱えて震えていた鷲獣人の少女。彼女の頭上の岩盤がスライドし、そこには雲海を見下ろすパノラマビューのスカイ・ヴィラが出現した。木から吊るされていた「兎小屋」のぽぷらんの足元には、ふかふかの芝生とカクテルバーが、川上の「猫小屋」には、せせらぎを聞きながら眠れる水上コテージが用意された。
「……さらっと。皆様、お迎えにあがりました。本日付で、皆様の雇用契約は『終身名誉ゲスト』へとアップグレードされました。映画村のプレミアムゾーンへの居住許可、およびルームサービスの無償利用が可能です」
かつては「脱走は死」と冷たく告げていたアリシアが、今は銀のトレイに載せたゴールドカードを一人一人に手渡していく。
「これ、本当にいいの……? もう、あんな高いところで寝なくていいの……?」 鷲獣人の少女が、ジャグジー付きのバルコニーで呆然と呟く。 「あはは! 見てよ、僕の兎小屋が今は高級シャンパンを冷やすクーラーボックスになってる!」 演出助手のぽぷらんも、かつての恐怖を忘れ、グラスを片手に歓喜の声を上げた。
一方、砂浜で野宿し、自給自足の開墾に励んでいた芋ネギ教の信者たちの上にも、奇跡が降り注いだ。
「ワン! 信者の皆様、お待たせしたワン! 今日からは鍬を置いて、このパラソルとビーチチェアを使ってほしいワン! 咲姫様から、皆様に『聖なる休息』の儀式が授けられたワン!」
わんわんが尾を振りながら配り歩くのは、キンキンに冷えたフルーツジュース。砂浜は一瞬にして五つ星のプライベートビーチへと姿を変え、信者たちは「聖母・咲姫……!」と涙を流しながら、贅沢なフルコースの炊き出し(毎日30NkQ分支給)に列を作った。
かつての「強制労働」という言葉は、波の音にかき消されていく。誰もが笑顔で、誰もが「明日何もしなくていい自由」を謳歌していた。
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鷲獣人(リラックス中): 雲の上のヴィラで「高所恐怖症、治っちゃいそう……」と夢心地。
信者たち(バカンス中): 砂浜でネギの形の浮き輪を浮かべ、「咲姫様は、本当は天使だったんだ」と改宗の決意を固める。
ぽぷらん(満喫中): 「このまま、この撮影が終わらなきゃいいのに」と本気で願い始める。
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ようやく、最も虐げられていた者たちに光が当たりました。 崖穴や檻、砂浜での苦労はこの日のための「前振り」だったのです。 彼らの心からの安らぎを見ると、この星系を作ってよかったと心から思えますね。 どこも黒くない。ただただ、青い海と白い砂浜が広がるばかりです。




