表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クラフトアルケミストの異世界素材録 〜スローライフから始まる概念破壊の銀河群像劇〜  作者: モカルドルラテ(ねこちぁん)
第一部:孝平の章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
27/2314

ep.26 火の輪のまわりで ―祭りの前の、静かな手仕事―

火の輪のまわりに、テントがひとつ、またひとつと増えていく。  布を張る音、木槌の音、笑い声。  静かだった拠点に、少しずつ“暮らしの音”が混ざりはじめていた。


孝平が火の輪に薪をくべると、ぽぷらんがしっぽを揺らしながら近づいてきた。  その後ろには、ふわふわの白い耳がぴょこぴょこと跳ねている。


「……誰?」


アリシアが目を細めて問いかけると、白いもふもふがぴょんと跳ねた。


「やっほ~♪ あたし、ミミルだよっ! うさちぁんの使い魔で~す!」


孝平は、少しだけ目を見開いた。


「……ミミル? 君が?」


「うんっ! こうへいくんが“ちゃんと暮らしてるか”見に来たのっ♪  今日は“見守り隊”だよ~。あと、パンの匂いに釣られて来ちゃった!」


ぽぷらんがくすくす笑いながら言った。


「この子、火の輪にぴったりだよね。なんか、あったかい感じ」


「……まあ、悪さしないなら、歓迎するわ」


アリシアが肩をすくめ、火の輪に視線を戻す。


咲姫が、火の輪のそばに小さな布屋根を張っている。  その下には、リリアーナが束ねた霧草や月根が並べられていた。


「明日は南の崖まで行く予定です。あそこにしか生えない“火草”があるのです」


「護衛は任せて。あの辺、魔獣の巣があるからね」


アリシアが腰の護符を軽く叩きながら、にやりと笑う。


その横では、果林が木材を削っていた。  手際よく組まれていくのは、素材を並べるための棚。


「この棚があれば、瓶も転がらない。……次は作業台ね」


「瓶なら、こっちにあるよ」


リリアーナが、火の輪の反対側から声をかける。  その手には、昨日洗ったばかりのガラス瓶がいくつも揺れていた。


「採取記録もまとめておいたよ。次のルート、これで決めやすくなると思う」


「ありがとう。……火の輪の周りが、だんだん“町”になってきたな」


孝平は、火輪石のそばにしゃがみ込みながらつぶやいた。  火は、今日も静かに、でも力強く燃えている。


瑛里華が、火の輪の温度を測りながら言った。


「この温度帯なら、保存薬の精製もいける。……あ、誰か空き瓶持ってきて」


「はーい、今持ってくー」


ぽぷらんが、しっぽで瓶を器用に運んでいく。  その後ろを、ミミルがぴょんぴょんと跳ねながらついていく。


「こうへいくん、ちゃんと休んでる? お昼、食べた?」


「……今から食べるところ」


「うそだぴょん! さっきからずっと火の前にいたでしょ!」


ミミルがふわふわの耳で孝平の頬をぺちぺち叩く。  孝平は苦笑しながら、火の輪のそばに置かれたパンを手に取った。


パンの香ばしい匂いが、火の輪のまわりに広がる。


「……うん。うまい」


「でしょでしょ~♪ リリアーナちゃんが焼いたんだよっ!」


火の輪のまわりでは、それぞれが自分の作業に集中していた。  誰も指示はしていない。けれど、自然と役割が分かれ、流れが生まれている。


咲姫たちは、明日の採取に向けて準備を進めている。  果林と瑛里華は、火の輪の周囲を“工房”として整えている。  リリアーナは記録と補給を支え、ぽぷらんとミミルは全体をつなぐ。


そして孝平は、火の輪の中心で、火をくべ続けていた。


「……この火が、みんなの“暮らし”を支えてるんだな」


火が、ふわりと揺れた。  まるで「そうだよ」と言っているように。


そのとき、空の向こうから、かすかな風の音が聞こえた。  誰かが、遠くから近づいてくる気配。


孝平は、火の輪を見つめながらつぶやいた。


「……もうすぐ、来るのかもしれないな。次の“誰か”が」


火は、静かに、しかし確かに、燃え続けていた。

今回は、火の輪のまわりに“暮らし”が根づきはじめる様子を描きました。 それぞれが自然に動き、役割が分かれ、拠点が“町”として息づきはじめる。 その空気感を、テンポよく、でも丁寧に描けたらと思って書きました。


そして、今回がミミルの初登場回! ふわふわの耳と、ちょっとお節介な優しさで、火の輪に新しい風を運んでくれました。 彼女の存在が、孝平の“暮らし”をどう彩っていくのか、これからが楽しみです。


次回はいよいよ「火の輪の予行祭」。 それぞれが作ったものを持ち寄り、火の輪の“最初の祭り”が始まります。 新たな来訪者の気配も、そろそろ……?


それでは、また火のそばで。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ