表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クラフトアルケミストの異世界素材録 〜スローライフから始まる概念破壊の銀河群像劇〜  作者: 島田一平(ねこちぁん)
土の章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

193/1048

ep.188 継ぎ目の記憶

 劇場跡の裏手、崩れたベンチに腰かけて、

 老人はゆっくりと語り始めた。


「風の咲姫はな……よく笑う娘だった。

 声が大きくて、よく転んで、

 でも、誰よりも風を愛していた」


 咲姫は、黙って聞いていた。

 その手は、無意識に胸元を押さえていた。


「祭りの夜、彼女は鐘を鳴らして、

 広場を駆け回った。

 “風は自由なのです!”ってな。

 あれは、まるで風そのものだったよ」


 リオが、記録帳にその言葉を写し取る。

 ミナは、そっと咲姫の隣に座った。


「でもな……あの夜を最後に、

 咲姫は姿を消した。

 風が止んだように、ふっと……」


 沈黙が落ちた。


 咲姫は、ゆっくりと口を開いた。


「その咲姫と、私は……違うのです。

 でも、名前は同じで……

 言葉も、少し似ていて……

 私、自分が誰なのか、

 わからなくなりそうなのです」


 老人は、咲姫を見つめた。

 その目は、どこか遠くを見ていた。


「名は、ただの音じゃない。

 名は、記憶を運ぶ舟じゃ。

 君が“咲姫”であるなら、

 きっと何かを継いでおる。

 それが何かは、君自身が見つけるしかない」


 咲姫は、火把の灯りを見つめた。

 その火が、風に揺れていた。


 けれど、消えはしなかった。


『土の章・八

 継ぎ目の記憶。

 語られた記憶が、

 今を生きる者の中で目を覚ます。

 名は、過去と現在をつなぐ舟。

 その舟に乗る者は、

 自らの“根”を探し始める。』

 “土の章”八つ目は、継ぎ目の記憶。


 風の咲姫の姿が、初めて語られました。

 そして、現在の咲姫がその記憶と向き合い、

 “継ぎ目”という言葉に向き合い始めます。


 名は、ただのラベルではありません。

 それは、記憶を運び、

 ときに別の誰かの中で芽吹くもの。


 咲姫の旅は、ここから“自分の名を掘り起こす旅”へと変わっていきます。


 また、次の土で。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ