ep.181 はじまりの土
朝露の残る道を、リオは歩いていた。
背には、庵の火把。
そのぬくもりが、まだ肩に残っている。
隣を歩くミナは、少しだけ顔を上げていた。
咲姫は、荷車を押しながら、
ときおり空を見上げている。
誰もが、まだ不安を抱えていた。
けれど、誰もが、もう止まってはいなかった。
目指すのは、**エルシンフォリア**。
風の章で語られた、あの町。
かつて風が集い、散っていった場所。
今は、地図の上でも“廃地”と記されている。
けれど、咲姫は言った。
「風が残したものは、土に染みているのです。
だから、きっと、根を張れるのです」
リオは、うなずいた。
火は、語られ、継がれ、そして——
今度は、地に根づく番だった。
道の先に、丘が見えた。
その向こうに、かつての町がある。
誰もいないはずのその場所に、
小さな芽のような期待が、
胸の奥でふくらんでいた。
『土の章・壱
はじまりの土。
火を携え、風の記憶をたどり、
誰もいない地へと歩き出す。
そこに根を張るために。
物語は、土に触れる。』
ここから始まるのは、“土の章(根づき)”。
火の章で灯された意志が、
今、地に降り立ちます。
エルシンフォリア——
それは、風の章で名前だけ語られた町。
今は誰も住んでいないその地に、
新たな暮らしを築くための旅が始まります。
土は、すぐには応えてくれません。
けれど、時間をかけて、
そこに根を張ることはできるはずです。
また、次の土で。




