ep.180 消えなかった火
夜明け前の広場に、ひとつの火が残っていた。
風に吹かれ、雨に打たれ、
それでも消えなかった火。
誰が灯したのか、もうわからない。
いつから燃えているのかも、誰も覚えていない。
けれど、誰もがその火を見ていた。
避難所の子どもたちも、
警備隊の疲れた背中も、
記録官たちの沈黙も、
その火に照らされていた。
リオは、そっとその火の前に立った。
手には、庵の火把。
けれど、今はもう、それだけではない。
咲姫のやさしさ。
ユリオの沈黙。
グレンの熱。
ミナの涙。
すべての火が、ここに重なっていた。
「……この火は、消えなかったのです」
リオの声は、小さく、けれど確かだった。
火は、ゆらりと揺れた。
まるで、応えるように。
『秩序の火・弐拾
消えなかった火。
数多の火が灯り、消え、継がれ、
それでもなお、燃え続けた火がある。
その火は、記録の終わりにして、
次の物語の始まりとなる。』
“秩序の火”弐拾つ目は、消えなかった火。
この火は、誰かひとりのものではありません。
すべての火の記録が重なり、
それでもなお、燃え続けた火です。
火の章は、ここでひとつの区切りを迎えます。
けれど、火は終わりではなく、
次の章への“灯り”となってくれるでしょう。
あなたが見てきた火は、どんな色でしたか?
どんな音がして、どんな匂いがしましたか?
その記憶もまた、
この火の中に、そっと燃えています。
また、次の章で。




