ep.178 目覚めの火
避難所の片隅で、ミナはひとり、火を見つめていた。
小さな火把。
誰かが分けてくれた、あたたかな灯り。
けれど、ミナはずっと、
その火に手を伸ばせずにいた。
自分には、火を持つ資格なんてない。
そう思っていた。
何もできなかった。
逃げることしかできなかった。
誰かを助けることも、守ることもできなかった。
でも——
火は、何も言わなかった。
ただ、静かに揺れていた。
まるで、責めることも、励ますこともせず、
ただそこに在るだけのように。
ミナは、そっと手を伸ばした。
火把に触れる。
あたたかい。
それだけで、涙がこぼれた。
「……わたし、まだ……終わってないのかも」
そのとき、彼女の中で、
何かがふっと目を覚ました。
『秩序の火・拾捌
目覚めの火。
火に照らされ、
眠っていた心が目を覚ます。
その火は、再び歩き出すための、
最初の一歩となる。』
“秩序の火”拾捌つ目は、目覚めの火。
火は、ただ燃えるだけではありません。
ときに、心の奥に届き、
忘れていたものを呼び起こします。
ミナの火は、まだ小さく、頼りない。
けれど、それは確かに、
彼女自身の中で灯った火でした。
火の章は、こうして“内なる火”の記録へと進んでいきます。
また、次の火で。




