ep.173 笑いの火
広場の片隅、瓦礫の影に、ぽつんと灯りがともっていた。
カナリアとトーノが、即席の舞台を組んでいた。
観客は、避難してきた子どもたちと、
疲れきった警備隊の数人。
「さあさあ、皆さまお立ち会い!
火の粉とともに舞い上がる、笑いの大花火!」
「……って、火薬は使えないから、声だけで我慢してね!」
子どもたちが、くすっと笑った。
それだけで、火がひとつ、灯った気がした。
トーノは、壊れた鍋を帽子に見立て、
カナリアは、団子の串でバチを打つ。
音は軽く、言葉はくだらなく、
でも、そこにあったのは確かに“火”だった。
誰かをあたためるための、
誰かを泣かせないための、
そんな火。
『秩序の火・拾参
笑いの火。
混乱の中で、
誰かを笑わせるために灯された火がある。
それは、秩序を守る火とは違うが、
秩序を支える火でもある。』
“秩序の火”拾参つ目は、笑いの火。
火は、剣にもなれば、灯りにもなる。
でも、笑いにもなる。
カナリアとトーノの火は、
誰かの涙を乾かすために灯された火。
それは、戦いの記録には残らないかもしれないけれど、
確かに、町の秩序を支えていた火でした。
火の章は、こうして少しずつ、
“生きるための火”の記録にもなっていきます。
また、次の火で。




