ep.170 対話の灯
森の外れ、焚き火のそばに、アメリアは座っていた。
向かいには、ひとりの影。
人のようで、人ではない。
けれど、牙をむく気配はなかった。
それは、モンスターだった。
けれど、言葉を話した。
「……火、こわくない?」
アメリアが問うと、影は首をかしげた。
「火、あたたかい。
でも、火、こわい。
でも、きみ、くれた。だから、すき」
アメリアは、火ばさみで薪をくべた。
火が、ぱちりと音を立ててはぜる。
「私も、火はこわいよ。
でも、寒い夜には、必要でしょ」
影は、うなずいた。
その仕草は、どこか子どものようだった。
ふたりのあいだに、言葉が少しずつ積もっていく。
火を囲んで、敵と味方の境界が、
ほんの少しだけ、溶けていく。
『秩序の火・拾
対話の灯。
火は、戦いの道具にもなるが、
ときに、言葉を交わすための灯りにもなる。
境界を越える火が、ここにある。』
“秩序の火”拾つ目は、対話の灯。
火は、剣にもなるし、盾にもなる。
でもそれだけじゃない。
火は、言葉を交わすための“灯り”にもなる。
アメリアが灯した火は、
敵と味方のあいだに置かれた、小さな橋でした。
火の章は、秩序の記録であると同時に、
秩序の“揺らぎ”の記録でもあるのかもしれません。
また、次の火で。




