ep.166 刃の火
鍛冶場の奥、火床の前で、フェルムは槌を止めた。
外から、かすかな地鳴りが聞こえる。
「……なんだ、今の音」
彼は、火ばさみを握ったまま、扉の方を見た。
バルリック親方は、黙って火を強めている。
その目は、いつもより鋭い。
「フェルム。あの剣、仕上げるぞ。今すぐだ」
「えっ、でも、焼き入れはまだ……」
「いいからやれ。間に合わなくなる」
そのとき、遠くで鐘の音が鳴った。
警備隊の非常信号。
モンスターの襲撃。
フェルムの手が震える。
火床の熱が、急に遠く感じた。
けれど、親方は言った。
「火は、守るためにある。
叩け。おまえの火を、今ここで残せ」
フェルムは、槌を握り直した。
火花が、再び舞い上がる。
『秩序の火・陸
刃の火。
火は、武器にもなる。
恐怖の中で叩かれた刃は、
誰かを守るための火になる。』
“秩序の火”陸つ目は、刃の火。
火は、あたためるだけじゃない。
ときに、武器になる。
ときに、命を分ける境界線になる。
フェルムの火は、まだ未熟だけれど、
その火が、誰かを守るために灯されたなら、
それは確かに“記録すべき火”になる。
そして、モンスターの気配が、
この町に新たな火をもたらそうとしています。
また、次の火で。




