表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クラフトアルケミストの異世界素材録 〜スローライフから始まる概念破壊の銀河群像劇〜  作者: 島田一平(ねこちぁん)
風の章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

152/1050

ep.148 塩の香りと札の重み

 “風の火”二つ目は、塩パンと札の重み。


 誰かが誰かのために焼いたパン、

 誰かが誰かのために貼った札。

 それらが、風に乗って届いていく。


 記録って、数字や出来事だけじゃなくて、

 「誰かの気持ちが、どんなふうにそこにあったか」を残すものなんだなと、

 書きながら改めて思いました。


 次は、香草茶の湯気か、焼きおにぎりの焦げ目か。

 あるいは、風の耳を持つ誰かの足音かもしれません。


 風の章、まだまだ続きます。

 また、次の火で。

 ギルド庁舎の掲示板は、朝の光を受けてきらりと光っていた。

 木製の枠に並ぶ札は、どれも新しく、整っている。

 昨日、ラディたちが貼り替えたばかりのものだ。


 孝平は、その前に立ち止まり、

 一枚の札に目を留めた。


『祝・402の風通し。

 風は今日も、誰かの想いを運びました。

 次の宴も、風まかせ。』


「……これが、“風の札”か」


 ミミルが、隣でそっとつぶやく。

「依頼じゃないのに、ちゃんと掲示されてるんだね」


「うん。たぶん、これは“記録”じゃなくて、“贈り物”なんだと思う」


 孝平は、札の端に指を添えた。

 紙の感触はやわらかく、けれど、どこか重みがあった。


 そのとき、庁舎の奥から、ふわりと香ばしい匂いが漂ってきた。


「……塩パン?」


 ミミルが鼻をひくつかせる。

 香の焼いた塩パンが、かごに山盛りになって運ばれてくる。


「風の味、ってこういうことかもね」

 孝平は笑って、札の裏にそっと書き加えた。


『風の火・二

 塩の香りと、札の重み。

 誰かの“ありがとう”が、

 今日も、町をめぐっている。』


 ミミルが、塩パンをひとつ手に取って、かじる。


「……うん、しょっぱいけど、あったかい」


「風って、そういう味なんだな」

 孝平は、石板に記録を写しながら、

 掲示板の札をもう一度見つめた。


「この町の風は、ちゃんと残ってる。

 火の記録も、風の記憶も、同じように」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ