表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クラフトアルケミストの異世界素材録 〜スローライフから始まる概念破壊の銀河群像劇〜  作者: 島田一平(ねこちぁん)
水の章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

139/1051

ep.136 風の橋、問いの前に

風の塔の最上層。

孝平とミミルは、透明な橋の上に立っていた。


橋は、空に浮かぶように伸びていた。

足元には雲が流れ、遠くには火の輪の光が、かすかに揺れている。


「……あれが、火の輪の中心?」


孝平がつぶやくと、ミミルはうなずいた。


「うん。でも、あそこに行ったら、もう戻れないかもしれないよ」


「戻れない?」


「うん。名を問われるって、そういうことだと思う。

 一度、自分の名を選んだら、もう“誰かの名”には戻れない」


孝平は、黙って前を見つめた。

風が吹き抜け、火壺の火がかすかに揺れる。


「……トモエ、すごかったな」

「うん。あの火、きれいだった」

「でも、あれを見て、ちょっと怖くなった」

「怖くなった?」


「うん。俺、まだ“自分の名”が何なのか、わかってないからさ。

 選ぶってことは、何かを捨てることでもあるだろ?

 それが、ちょっと……怖い」


ミミルは、そっと孝平の手を握った。


「でも、選ばなくても、火は灯るよ。

 トモエだって、最初から“自分の名”を知ってたわけじゃない。

 ただ、火を守って、歩いてきたから、

 あの羽根が降ってきたんだと思う」


孝平は、ミミルの手を見つめた。

その小さな手の中にも、確かな火があった。


「……ありがとう。

 俺、もう少しだけ、歩いてみるよ。

 この橋の先に、何があるのか。

 それを見てから、決めたい」


「うん。私も、いっしょに行くよ」


ふたりは、再び歩き出した。

風の橋が、かすかに揺れる。


その先にあるのは、名の根源。

火の輪の中心。


けれど今はまだ、

ただ、風の中を歩いていく。

昼の章、最終三部作の第一話。

“名を問われる”ということの重さと、

その前に立ち止まる孝平の揺らぎを描きました。


名を選ぶとは、過去を手放すことでもあり、

未来を引き受けることでもある。


次回、いよいよ火の輪の中心へ。

“名を問う声”が、孝平に届きます。


Von Voyage――風の橋を渡る、その先にある問いへ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ