ep.128 風の塔、名をたずねる扉
夜の風が、塔のまわりを静かに巡っていた。
火の輪の面々は、塔の前に集まっていた。
「……開くのか?」
孝平が、塔の扉を見上げる。
「風の塔は、“名をたずねる者”にしか開かれません」
ルアが、手帳を閉じて言った。
「名をたずねる……」
ソレイユが、胸の“名前の種”に手を当てる。
「わたし、たずねたい。
わたしの名前を、ちゃんと知りたい」
その言葉と同時に、
塔の扉が、かすかに光を帯びた。
風が、ひとすじ、塔の中から吹き出す。
それは冷たくもなく、熱くもなく、
ただ、“確かに呼ばれている”と感じさせる風だった。
「……開いた」
ヒメルが、息をのむ。
「風が、認めたんだ」
トモエが、火壺をそっと抱き直す。
「火の輪、進もう」
孝平が、静かに言った。
「ここから先は、風の記憶の中。
でも、俺たちなら行ける」
「うんっ」
ミミルが大きくうなずく。
「風の中で、ちゃんと“火”を持っていこうね~!」
塔の扉が、ゆっくりと開いていく。
その奥には、風の光が満ちていた。
火の輪の面々は、
ひとりずつ、扉の中へと足を踏み入れていく。
風が、彼らの名前を、
そっとたずねるように吹き抜けていった。
夜の章、締めくくりは、
風の塔の扉が開く瞬間でした。
「名をたずねる者にだけ開かれる扉」
その言葉どおり、ソレイユの決意が、
塔の風を動かしました。
次回からは、新章――
風の塔の内部へ。
記憶と名前が交差する、静かで深い旅が始まります。
Von Voyage――名をたずねる風の扉を越えて。




