表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クラフトアルケミストの異世界素材録 〜スローライフから始まる概念破壊の銀河群像劇〜  作者: 島田一平(ねこちぁん)
水の章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

126/1048

ep.123 風の国の旅人たち

「……あれ、舟?」

ミミルが、帆の向こうを指差した。


風の中に、もうひとつの舟が浮かんでいた。

火の輪の舟よりも小さく、

帆は白く、静かに風を受けている。


「誰か、乗ってる」

ヒメルが目を細める。


「こっちに気づいてるな」

カイが火壺を抱えたまま、立ち上がる。


やがて、もう一隻の舟が近づいてきた。

乗っていたのは、

白いマントを羽織った青年と、

その隣に座る、背の低い少女。


「こんにちは」

青年が、穏やかに手を振った。


「風の国へ?」


「……ああ」

孝平がうなずく。


「君たちも?」


「うん。僕らも“名前を探してる”んだ」


「名前を……?」

ソレイユが、思わず声を漏らす。


「うん。

 風の塔には、“風の記憶帳”があるって聞いてね。

 そこに、自分の名前の“かけら”が残ってるかもしれないって」


「……それ、誰に聞いたの?」

ヒメルが警戒気味に尋ねる。


「風だよ」

少女が、にこっと笑った。


「風がね、“そっちに行け”って言ったの」


「火の輪っていうんだよね?」

青年が、ふと真顔になる。


「君たちの旅、風の国でも噂になってるよ。

 “火を運ぶ舟が来る”って」


「……誰がそんなことを」

孝平が眉をひそめる。


「さあ? 風が言ってたから」

青年が肩をすくめる。


「でも、たぶん――

 君たちの旅は、誰かの記憶に触れてる。

 だから、風が動いてるんだと思う」


「また会えるかな?」

少女が、舟を離れながら言った。


「風の塔で、会えるといいね」


「……ああ。Von Voyage」

孝平が、風に向かって手を振る。


「Von Voyage~!」

ミミルが大きく手を振った。


舟は再び、風を斜めに切って進み始めた。

風の塔は、まだ遠い。

でも、そこへ向かう旅人は、火の輪だけじゃない。

風の中で出会った、もうひとつの舟。

彼らもまた、“名前を探す旅”の途中でした。


火の輪の旅が、風の国に届いている。

それは、少し不思議で、でも確かな手応えです。


「風が言ってたから」

この言葉が、風の国の空気をよく表している気がします。


次回は、風の乱れと、進路の迷い。

火の輪の舟に、またひとつ試練が訪れます。


Von Voyage――風の旅人たちとすれ違って。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ