ep.112 風の乱れ、火の揺れ
昼を過ぎた頃、
空の色が、少しずつ変わり始めた。
雲が流れ、風が斜めに吹きつける。
帆がばさりと音を立て、舟がぐらりと傾いた。
「風、変わりました」
ルアの声が、舟の上に響く。
「南西からの突風。進路、修正します」
モントが舵を握り直す。
「帆、調整するよ!」
トモエがすでに動いていた。
ミミルがその後ろを追いかける。
「帆、帆~! どっちに引っ張るの~!?」
「右! 違う、そっちじゃない、ミミル! 右って言ってるでしょ!」
「えっ、こっちが右じゃないの~!?」
「ミミル、落ちるなよ!」
孝平が駆け寄って、帆のロープを引き寄せる。
「風が強い。舵が取られる」
モントが歯を食いしばる。
「このままじゃ、流されるぞ」
カイが火壺を抱えたまま、舟の中央に立つ。
「火を守る。帆を任せる」
その言葉に、孝平がうなずいた。
「ヒメル、帆の反対側を頼む!」
「了解。ミミル、そこどいて!」
「え~!? 今いい感じに風感じてたのに~!」
「落ちたら感じるどころじゃないわよ!」
舟は大きく揺れながらも、
火の輪の面々の動きは、少しずつ噛み合っていく。
風は気まぐれだ。
でも、火の輪は、揺れながらも進んでいく。
風が、少しずつ乱れ始めました。
でも、火の輪の仲間たちは、
それぞれの場所で、ちゃんと動き始めています。
ミミルの“右と左”問題も含めて(笑)、
まだまだ不安定だけど、
それでも舟は、進んでいく。
次回は、風の中で見える“兆し”の話。
火の輪の旅は、まだ始まったばかりです。
Von Voyage――風の先で、また。




