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54 叶えてやる

 イズルとローザの二人になった。

 真夜中のほの暗い部屋の中央で光が発していた。両膝を左に倒し、腰を落とすローザを魔法陣が光で飾る。


 彼女は慈愛に包まれたように、虹色の輝きに身を浸していた。崩れた天井から注がれる千年彗星の祝福が、埃と混じり彼女と天を結ぶ。


 千年彗星の魔力がピークを迎えた。奇跡ともいえる七色の輝きを浴びるローザは、この世の静寂を全て身にまとったかのように穏やかだった。


 時間がない。千年彗星の開眼が終わり、世界に日常が戻ると、ローザの意識は完全に閉ざされるだろう。それは彼女にとっては死を意味する。


 魔法を組み上げる。

 戦闘に身を投じながらも、提案と廃棄を繰り返して構築し完成させた。この魔法が正解なのかは分からない。現時点での最善を尽くしたことは確かだ。


 魔法陣に爪先を差し入れる。それだけで、膨大な魔力を感じた。足から流れ込む力は、肌を突き破るのかと錯覚するほどの勢いで、イズルの内部を満たした。血流が増加し、肌を紅潮させ、髪を逆立てる。


 興奮を鎮めようと肺の中を空にした。

 さわやかな風を感じ、花の甘い香りが漂う。木々や草花の想いと深層心理でつながったように感じた。


 目を閉じても、瞼の裏で星空の煌めきを理解できた。天井を通して、家族の星が娘を見守る。


 当然だ。そのためにわざわざ天井に穴を開けたのだから。時間を超えてオレに願いを託したんだ。もちろん、力を貸してもらう。


 遮断する。あらゆる感覚をローザに集中させる。

 イズルは体内で暴れる魔力に干渉し、法則性をもたせ、円滑に導く。左眼に集め増幅能力を使う。


 力が伝わる。千年彗星だけではなかった。ファラやレヴィア、イズルの共鳴者たち、自然、そして家族の星がイズルを支えた。


 唇を重ねた。虹色の光が収束し消えた。全ての光が闇に塗り潰され、時間が止まった。


 空間が歪む。二人の影が歪みに落ち、七色が音もなく爆発した。


 術者のイズルですら、鳥肌が立つ力であった。七色の輝きは二人を浮上させた。外界から遮断されたイズルとローザは、魔法陣に浮かぶ七色の球に身を委ねる。


 太陽の香りを感じる。羽毛にくるまれたような優しさがあった。


 彼女の唇は冷たく、冷え切っていた。イズルはローザ呼び起こすため、意識を繋げた。魂が彼女と共鳴する。


 言っただろ、オレが願いを届けてやるって。

 それでも届かないなら、オレが叶えてやる。

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