表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/58

18 結果発表

 結果発表はメインホールの掲示板に表示される。

 試験終了直後から結果発表には間があるため、イズルは学術塔裏手の原っぱで時間を潰すことにした。


 訓練場の熱気から解放されて、心地よい風を浴びていると眠くなってくる。遠くから聞こえる歓声は子守歌のように耳に届いた。

 意識が、遠ざかっていく。

 

 誰か、誰か助けて。

 どうか私たちの……

 そのためには何でもします。

 想いを込めて願うだけ。

 もう、声を出すことなんてできないのだから。


 助けて。

 それはいったい何だったのか。

 ただの夢とは違う。祈りにも似た想いが、頭に流れ込んできた。


 声だけが聞こえる不気味な夢だ。薄暗い部屋で取り残された感覚。

 酷い焦りが脳にへばりつく。


 汗を拭った。空はオレンジ色に染まっていた。

 もうこんな時間か。日没も近い。試験結果も出ている時間だ。メインホールの掲示板に貼りだされるはずだ。


 庭園脇の階段は茜色へと変化していた。降り切った先にメインホールがある。発表時間からズレていることもあってほとんどが見終わった後のようだ。人気はほとんどない。


 ホール内が暗いのは千年祭の演出だ。ドーム状の天井では、瞬く星々の映像が流れている。先週よりも煌びやかだ。右から左へと千年彗星が夜空を横切る。


 静かな音楽も映像に彩りを与えた。街でも学院でも奇跡の瞬間を祝おうと祝賀モードが強くなってきた。

 足元は扉から差し込む夕陽で照らされている。


 イズルはクリスタル掲示板の前に立った。安全委員会選抜試験の結果が浮かぶ。剣術部門と魔法部門に分かれて合格者の名前が並んでいた。


 まずは剣術部門で自分の名前を確認した。明日から安全委員会所属か、これで外出しやすくなる、しめしめとほくそ笑む。


 あれ? すぐに疑問が浮かぶ。その分活動に縛られないだろうか?

 ギルドでの仕事に割く時間が減るのは困る。ま、そうなったらサボればいいか。不安はすぐに霧散した。


「次は、と」


 魔法部門でファラの名前を見つけた。威力試験で観客をどよめかせてたほどだ。妥当な結果だろう。


 ただ、選抜試験はどれか一つが欠けても合格できない。それぞれの項目で足切りラインが設定されているためだ。特に受験者泣かせといわれているのが討伐数を評価する項目だ。


「ん?」 


 見逃したのだろうかと、始めから指でしっかりと名前を確認する。


「んん?」


 傍を通り過ぎた男子生徒の襟を掴む。


「けぺ」


 首が締まって男子生徒は奇妙な声を上げた。


「ローザは?」


「誰だよ、知らねーよ」


 振り払って生徒が叫ぶ。


「よし、一緒に探そう」


「何でオレが。ていうか、お前一年だろ。見ろ、上級生に向かってその態度は何だ」


 男子生徒が示す袖は、暗がりで発色して一本の緑のラインを形成していた。イズルたち一年は赤いラインで、緑は二年生、黄色は三年生を示す。


「そうか。よし、お前はそっちからだ」


 役割を分担してローザの名前を探すことにした。


「オレはこれから部屋に帰ってスイーツ作りにいそしみたいのに」


 ボヤキながらも男子生徒は目を凝らして探す。

 結局その名を見つけることはできなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ