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二人だけの夜会

6章

「・・・・・」

ヴェルゼはベッドから身を起こすと

小さく息をついた



あの後

久しぶりの食事をした後

地界に戻ったのだ



“ここ以上に落ち着く場所など・・・

ありませんしね”

彼はそう思いながら服をまとう



黒いタキシードに身を包み

正装する

今宵は同胞に会う

大切な場





半端な格好では失礼というもの


髪にも櫛をいれ細心の注意をはらう

革の靴に足を通せば

紳士の出来上がりである



“我が姫君は・・・お越し頂けるでしょうかね”

そう考えながらコートを羽織ると

地界を後にした



変わって地上では

沙羅が一枚のカードを見つめていた


カードには

銀の文字で

「ご招待

正装にて来られたし

ヴェルゼ・ガリオン」

と記されていた


カードは先日

ポストに入れられていたもの

かすかに魔の気配がする


彼女はカードをテーブルに置くと

クローゼットに向かい

中から一着のドレスを出した


服を脱ぎ捨て

ドレスに着替える

鏡に向かい

髪を結い上げて



首元に

満月をかたどったネックレスをつける



戸棚からドレスと同じ色のヒールを出すと

履き、茶色のロングコートを羽織った


そして小さなバッグを手に

部屋を後にした



ついた先は

洋風の城


街から離れたその場所は

天井にシャンデリア

周りには蝋燭の明かりが灯り



黄昏時を思わせないほどだった



「ようこそ・・・姫君」

声のした方向に目を向けると

銀髪の男がコートを手に立っていた

褐色の肌に

黒いタキシードが良く似合う



「ヴェルゼね」

沙羅はコートを脱ぎながら

言った




「はい・・・よくお似合いですよ」

彼は薄笑いを浮かべ、言った


沙羅のドレスは

スカイブルーのパーティドレス

肩を出すデザインで

裾はタイトになっている



「ありがとう」

彼女は視線を窓の外に移して応えた



「ここは・・・あなたが?」

彼に視線を向けて訊ねる



「はい・・・今宵のために」

彼はにこりと笑って

応えた



「そう・・・」

彼女はそう言うと

また外に視線を移した



「・・・座って話しませんか?」

彼はそう言うと奥の広間へと案内すべく

道を空け、手を差し出した



彼女は只頷いて

彼の手をとった



奥の広間は小さなテーブルと

向かい合うように2つの椅子が

並べられていた



テーブルも椅子も

見事な細工が施されており

専門家が見れば

いい値段をつけるだろう



広間は質素な明かりと

深緑で覆われていた

部屋は薄暗く

相手の顔がやっと見えるほど



彼は彼女を椅子まで案内すると

椅子を引き

彼女が座りやすいようにした



「お元気そうで何よりです」

彼は片膝をついて彼女の手の甲に

口付けた




「お前もね・・・」

彼女は笑って応えた



「天地対戦より・・・・5千年

私たちは極端に減らされてしまった」

彼女は悲しそうに笑い

目を伏せた

彼は黙って聞いていた

あの凄まじい戦の後

天界の者たちは帰ってはいったものの



女神狩りを止めようとはしなかった



「皆様はどちらに?」

彼は顔をあげ訊ねた



彼女は首を横に振って

「わからない・・・

今確認できているのは一人だけ」

その声は力なく響き、深い悲しみを思わせた



「猊下は・・・お変わりない?」

彼女は思い出したように訊ねた



「はい」

彼ははっきりとした口調でいった



「そう・・・」

彼女は嬉しそうに笑って言った

その後席を立ち、外を眺めた



「姫君」

彼は立ち上がり、後ろから声をかけた



彼女もそれに気付き振り向く


「我らの国へ・・・いらっしゃいませんか?」

彼は礼をして訊ねた



「・・・地界へ?」

彼女は目を大きく見開いて

聞き返した


「はい・・・猊下は

貴方様をご所望していらっしゃいます」

彼は顔を下げたまま応えた



「・・・猊下が」

彼女は呟くように言うと

目を伏せた



“貴方の元では・・・ないのね”

彼女はそう言いそうになって

言葉を飲み込んだ





「・・・少し考えさせて」

彼女は彼を見つめ応えた



「御意」

彼はそう言って頭を下げた



ふと外を見ると夜の帳が降り立っていた

もうまもなく月が昇る

彼女もそれに気付き

外を見る



瞬く星たちを見上げ彼女はただ一筋涙を流した

彼は彼女を抱きしめたい思いで見ていた



“触れてしまえば・・・どんなによいでしょうね”

だが触れる事は出来ない

彼女は地界の王妃になりえるもの



一度でも触れ合ってしまえば

思いは溢れ出してしまう



それは自分の主である彼を裏切る事になる



彼女は指で涙を拭い

彼に向き直った



「じゃあ・・・また」

そういい残すと彼女はその場を去っていった


彼は無言で彼女を見送ると

指を鳴らし

館にかけた

魔法をといた



すぐに荒れ果てた城跡に変わる



そしてコートを羽織ると

その場を後にした




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