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もう一つの種族

4章

所変わり地の奥底では・・・・


「・・・女神か」

闇色の髪と同色の瞳を持つ男が、玉座に座り呟いた



「まだ・・・生き残っていたとはな」

彼は目の前の水鏡を見、不適に笑いながら言った

水鏡には沙羅と夏樹の姿が映し出されている



「ヴェルゼをここへ」

玉座より下の数十段低くなっている場所にいる者にそう告げる


彼は一度水鏡を消すと頬杖をついた

漆黒で覆われた一室、玉座には禍々しい彫刻の数々、この部屋だけではない

城内には蝋燭が灯され、その炎は青き炎

部屋によっては灯りさえも無い部屋もある

押しつぶされるような重圧感

“人”であれば息苦しくなるような空間だが、彼はそれを心地よいと感じていた



「ヴェルゼ・ガリオン、命により参上いたしました」

黒き3枚の翼をもつ男が玉座に近づき

膝まずく



「・・・同胞が残っていた」

彼―玉座に座りし男はそれを横目で見ると

水鏡を召喚しながら呟くように言った



「“女神”でございますか・・・」

その一言で全てを悟ったらしく

彼はゆっくりと顔をあげながら言った




「我が物にする・・・今度こそ」

彼はシルクの手袋をはめた手を目の前に出し

力強く拳を握った



「・・・御意」

彼は頭を下げるとその場を後にした





「ククク・・・・」

男は目の前からヴェルゼが去ると

喉の奥で笑いをかみ殺した



“かつて、共に戦いし同胞―女神を何よりも欲したのは

他ならぬお前だろう?ヴェルゼよ

その女神が生きていると知ったあの時の動揺・・・

隠せるとは思っていまい

我の片腕とは思えぬ行動だな”




「・・・猊下の御為に」

城を後にしたヴェルゼは暗雲立ち込める空を見上げ

呟くように言った



先ほど玉座にそして

今もなお座っているのは



魔界の王―ルシファー


天使でありながら悪魔に味方した魔王となりしもの



“恐らく猊下には私が女神に思いを抱いている事など

お見通しでしょう

確かに・・・・私は“女神”の神々しさ

そして何よりも凄まじい力に惹かれている

けれど

私が女神を手に入れられぬのなら

この国―地界に迎える事こそ

我が望み


孤高の存在と詠われたにもかかわらず

天界を追われ

神に狩られし者


創生神により全て滅びたと思っていましたが

嬉しい誤算ですね”



彼は地上へと歩みを進めた

地上―人間たちの世界は、太陽が傾き夜の帳が降りようとしていた



夜になれば彼ら―魔の時間となる

太古の昔

夜闇を恐れた人間達は眠りについていたが



今では文明の利器により昼のような明るさを手に入れた

それにより

自分達を危険にさらしているということを

彼らは気付いているのだろうか?



“まぁ獲物が増えるのはいい事ですしね”

黒き翼を服に変えると

街へと歩みを進める



羽の一房をそっと取ると宙に離した

刹那羽は漆黒の蝶に変わる

“頼みましたよ”

蝶を見上げ消えるまで見送ると、ネオンの灯る街へと進んだ




街に出た途端

女性の好奇の目が向けられる



それもそのはず

ヴェルゼは魔界の王たるルシファーに次ぐ容姿の持ち主なのだ

透き通るような銀の髪に緋色の瞳

褐色の肌に整った顔立ち


服装は黒の上下のスーツだが

彼は見事に着こなしている


インキュバスのように餌をひきつける為ではないが

彼の容姿は人目を引く


魔界でも名の知れた美青年なのだ

それは正体を知っているものでも

惹かれずにはいられないほどの



“人を口にするのは久しぶりですね・・・・どうせなら上等な魂を頂きましょうか”

まさかそんなことを思って見られているとは知らず

彼女らの好奇の目は途絶える事は無い



どうやら視線を送ってはいるが

声をかけるほどの勇気は無いらしい

彼は魔眼を用いて魂の見定めをしていく



「失礼、もし善ければ今宵、貴方の時間を戴けませんか?」

彼は一人の女性の前に立つと恭しく片膝をついた



声をかけられた女性は何度も瞬きしながら

言葉の意味を考えているようだ

“・・・やはり免疫はありませんでしたね”

そんな彼女の様子を見つつ口の端を挙げそうになるが

それでは今宵の獲物を逃してしまう

かわりににこりと微笑みかける



「・・・いかがですか?」

奥底に浮かんだ欲望を沈め、優しく囁くように訊ねる



「は、はいっ!」

彼女は顔を真っ赤にしながら応えた


それを見て彼は

「では」

と彼女をエスコートする



残された女性たちは羨望の視線を向けながら

二人を見る



二人が夜闇に消える寸前

彼は不適に微笑んだ



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