地上編
二章
場所は変わりそのはるか下―地上では
多くの人たちが行き交っていた。
すれ違いながら談笑する者
風の冷たさに上着の襟を立てる者
そんな中で一人の女性が街を見下ろしていた。
彼女は冷めた紅茶を一口咽に通すと、手元の本に視線を移す
“平和・・・・ね”
世界は安定しているし、争いも起こっていない
惑星のどこかで戦は起こっているのだろうが、この国は何の縁もない
「沙羅」
声のしたほうに振り向くと、一人の女性が微笑んで立っていた。
店員が椅子を引きそれに座る
席につきドリンクを注文するとウェイターはその場を去っていった
彼女はテーブルに片肘をついてこちらを見た
「手続きのことだけれど・・・」
そういって夏樹は両手を組んだ。
私はカップを手にとって視線を紅茶に戻す
「わかってるわ」
そういうと彼女はカップを静かに置いた
「なら・・・「夏樹」
彼女の言葉を遮って続ける
「私、諦めたくないの」
私は少し強い口調で言った
それに含まれた意味に気づいたようで彼女は息を呑んだ
「・・・・・」
ウェイターが紅茶を運んでくる
彼女は固まったままだったので
私が代わりに会釈をする
ウェイターが去った後
彼女は大きくため息をついて
紅茶を手にした
「・・・わかった、もう止めない
後悔しないようにね」
夏樹は一口飲んでから目を伏せていった
しばらく無音の空間が流れる
恋人達の談笑
笑い声
行き交う人々
夏樹は紅茶を飲み干すと席を立ち、去っていった
手元には小さな紙に
“事後報告宜しく”と書かれており
なにやら11桁の番号が並べられていた
「・・・ありがとう夏樹」
その紙に手を置いて目を伏せる




