(短編版) 男の娘はTSしたい!男友達と結婚するため、ダンジョンでTS方法探します!
男×男の娘物です。
苦手な方はご注意ください。
人生にモテ期は3回あると言われているが、自分のモテ期がいつ来たかを覚えているだろうか?
俺は覚えてる。
1回目は幼稚園の時、当時は周りの男子とは違い落ち着いた雰囲気だったことから、当時の女児達にウケたのだろう。
2回目は小学生の低学年だ。理由はさっきと同じ。
えっ?スパンが短すぎる?同じカウントに含めていいんじゃないかって?
何故か小学生高学年から高校卒業式の今に至るまで、浮いた話も無く、特別仲の良いのはたった一人の男友達だけ……
今後の将来に余計な期待をしないためにも、そう無理矢理自分に言い聞かせてるのもある。
まあ最近の達観した若者は皆そうだろう……そうだよね?
前置きが長くなったが何故こんな話をしているのかというと、そのモテ期の推定最後であろう3回目が今到来していたからだ。
「ソーマっ、僕と……僕と付き合ってくだひゃいっ」
肩口まで伸ばされた栗色の髪、幼さの残る可愛らしい顔立ち、鈴を転がしたような声。
男子の夢を詰め込んだようなそれは俺に告白しているらしい。
「ナナ……その付き合っては買い物とかそういうのじゃ無く?」
「うん、こっこここここ恋人って意味っ!」
思考が止まる。色々と渦巻いた感情を整理すると、驚愕・疑問etc……
そんな風に黙っていると……
「や、やっぱりダメかな?」
と、そんな風に上目遣いで目を潤ませながら不安そうに問いかけられ、
俺の頭の中の考えは一瞬にして吹き飛んだ。
「いや、そんなことない。こちらこそよろしくナナ」
「ぇ?本当に?やったぁ!よかったぁ……」
「ははは、喜ぶか安堵するかどっちかにしろよ……」
喜ぶナナを見て俺も告白を受けてよかったと思う。
ただ、一つ問題があるとすれば……
「だってだって、とっても不安だったんだよ……僕達“男同士”だし……」
そう、世間で言う男の娘というやつに俺は告白されたのだ。
3回目のモテ期はたった一人の男友達によって訪れ、俺はその最後の機会に賭けることにしたのだ。
さて、高校卒業ギリギリでめでたく彼女(彼氏)を作ることに成功した俺は、ナナと同じ大学に通うことになっている。
二人とも同じ学部の“ダンジョン学部総合科”だ。
今となっても聞き慣れない名前だが、それもそのはず。
8年前に世界中に突如としてダンジョンが発生してからというもの、規制緩和や法整備もあらかた落ち着き、今年から新たにダンジョンに関する学部がいくつかの大学で新設されたのだった。
「ふんふん〜ふふーん♪」
「機嫌良さそうだな、ナナ」
「だってソーマと一緒の大学初登校の日だもーん」
ナナはいつも通り俺の家に迎えに来ていた。
いや違った、大学に通うためにこの春から二人暮らしを始めたんだった。
「いや……小学校からずっと一緒の登校だっただろ……」
「それはそれ!これはこれなの〜」
まあ、いつもとあまり変わりない光景ではあるが、
関係性としては友人から恋人と大きな変化があった。
そう考えると今日からの登校は今までよりも特別なものなのではないだろうか?
「そうだな、“恋人”としては初登校になるな」
「〜〜っ、うんっ!」
ナナは顔を赤面させながら嬉しそうに悶えている。
可愛いすぎる。ああ、付き合ってよかった……
「そっ、それにダンジョン学部も楽しみじゃない?どんなこと教えてくれるのかな?」
「うーん……」
「ん?ソーマは楽しみじゃないの?」
「いや、俺たちが“今更”教わることなんてあるのかと思ってな……」
「まあ、それもそうだね」
正直言って俺たちにダンジョンの教育なんて必要ないが、“ある理由”によってこの学部に入ることになった。
まあ、今のところ就職先の保証もしてもらっているため、ナナと同じ大学に通えるこの状況は喜ばしいので何の問題もない。
そんな会話をしながら登校の支度を済ませる。
「お待たせ、行こうか」
「うん!あっ……」
「ん?なにか忘れ物か?」
なぜか顔を赤らめモジモジするナナ。
ああトイレか、まだ時間はあるし焦ることはない。
「あうぅ、えっと……」
「大丈夫だ、早く済ましちまえ」
「わ、わかった……目を瞑ってくれる?」
「え?おう」
今更トイレくらいで恥ずかしがるものか?
いや、付き合いだしたら今まで意識してなかったことも意識するようになってしまうっていうしな。
俺は言われた通りに目を瞑る。
その瞬間
ーーー甘い香りと共に唇に柔らかいものが触れる。
「えへへ~行ってきますのチュー♪」
俺の記憶があるのはそこまでだ。
どうやって登校したかも覚えてないが、余裕を持って家を出たはずが大学には時間ギリギリで到着していた。
国立御森大学ーーー
創立15年と歴史の浅い大学ではあるが、偏差値も低くはない国立ということもあり、教育内容や設備は高水準だ。
その大学に俺、幡矢創麻と久珠田漆緒は現在入学式にて、校長の挨拶を話し半分で聴いていた。
別に内容が退屈だとかではない。今年から新たに設立されたダンジョン学部の設立理由も交え、この大学での教育水準の高さや学生に期待することなど若者向けに分かりやすく話している。
話しに集中できない理由は他にある。
それは少し前の列に座っている俺の友人……ではなく恋人の漆緒ことナナが入学式が始まってから頻繁にこちらを伺ってくるのだ。
チラッ、チラッ
(大人しく前を向いてろ)
そう口の動きで伝えるが何を勘違いしたのか、満面の笑みを向けて手を振ってくる。
はしゃぎすぎだろ……目立ってしょうがない。
それにさっきから周りの視線も痛い。
「ねえねえ幡矢君だっけ?あの可愛い子は彼女かなにか?」
ほら、面倒くさそうなのに絡まれたじゃないか……
隣のいかにもギャルな見た目の女性が話しかけてくる。
手元のパンフレットの新入生欄に目を通す。
「まあ、そんなところかな福宮さん」
当たり障りのないように軽く返す。
“福宮美織”
彼女も同じダンジョン学部総合科の生徒らしい。
今後の学生生活を考えると邪険にしたら支障が出そうだ。
そんな打算も含みながら会話に応じたが早まっただろうか?
「キャーやっぱりぃ~、てかそれで付き合ってなかったらナンなんだよってカンジだし~」
「まあ、そうだよね」
別に隠しているわけではないのでいいが、ナナはもう少し周囲を気にして欲しい。
「で?で?二人の馴れ初めは?どっちから告ったん?」
随分踏み込んでくるな……そんなに人の恋愛事情が気になる?
まあ、俺も高校までは公共の場でイチャつくカップルを見ては爆発を願った一人ではあるが……
「小学校からの幼なじみだよ。どっちから告白したかは黙秘するよ」
「いいねいいねぇ幼なじみ!いつから付き合ってんの?」
「高校の卒業式の日」
「めっちゃロマンチックじゃーん!」
それは思う。
しかも、あの時のナナはとても可愛く見えたからなぁ……今も昔も可愛いのは変わらないが。
「てか、あんなに可愛いのによく卒業式まで我慢したね!?」
「本当にね」
「大学は一緒の場所って決めてたん?」
し、しつこい……ここは話しを反らそう。
「まあね、それより福宮さんは彼氏いるの?」
って、しまった!これじゃあ口説いてるみたいだ。
思わず同じ内容で返しまったがこれはアウトだったか!
「ヤバ~、なんかナンパみたーい。幡谷君あんな可愛い彼女さんがいるのにイケナイんだ~後でチクっちゃおっかなー?」
「ゴメンミスった、それだけは辞めて……」
「アハハ、ウソウソ言わないって~。こっちこそしつこく聴いてゴメンね」
よかった、ナナに嫌われたらきっと立ち直れない。
もしかしてイイ奴か?いやいやこいつが原因じゃねぇか!許せねぇ……
俺が彼女の評価を上下させていると……
「まぁ、話しかけた理由は他にもあってね」
「?」
「どーにも総合科には国からの推薦で特別枠の入学者が二人いるらしいんだよ」
「……へぇ」
あっこれ、完全に俺とナナのことだ……
あれ?これってバレてもよかった奴だっけ?
なんか入学前に極秘とか言ってたような……
大事なことだからって3回くらい言ってたような……
気のせいだよな?言ってないよな?
というかそんな情報漏らした上のミスだろう、俺達は悪くない。ヨシッ!
「んでんで、その二人の入学者って多分顔見知りだと思うわけよ!」
「いやぁーーーーー?そうかなーーーー?」
「声裏返っててウケる」
何か……何かないか!
俺はいい、いや良くないが、ナナの問題でもある。
ナナを困らせたくないし、平穏に過ごしていたい。
この状況の打開策を考えながら、ふと手元の新入生欄に目を落とす。
あっーーーある名前を見つける
「ごほん、まぁ冗談はさておき、この名前を見てみなよ」
「ん~?えっ!九重姉妹じゃん!マジィ!?」
「誰?有名人?」
同じ名字で双子っぽい名前だったから丁度良さそうと思ったがどうやら有名人のようだ。
見知らぬ九重姉妹とやら、すまないがスケープゴートとなってくれ……
「うそぉ、D-ビュアーとかって見ない感じ?」
「あんまり……」
「チャンネル登録者100万超で二人共高校生にしてBランクの今最も注目されてる双子の探索者だよ!」
「ふーん」
なるほど、俺達の同年代にもBランクまで登り詰めた人がいるのか……発現したスキルがよかったのか、並々ならぬ努力を重ねたのかは不明だが高校生でBランクはほとんどいないだろう。
そんな風に感心していると
「なんかリアクション薄くない?BランクだよBランク!」
「感心してたんだよ」
「どーだか」
何はともあれBランクの双子姉妹なら、特別枠として十分な説得力が得られるだろう。
「まあ、特別枠はこの二人で決まりだろ」
「そーだね」
「……まだなんかあるの?」
双子姉妹が特別枠で確定でいいじゃん。なんでまだそんな疑いの目を向けてくるんだよ!
「幡矢君のランク教えてよ。因みに私はDランク」
そういいながら探索者カードを見せてくる。
名前と顔写真、そしてランクDと記載されている。
俺にも見せろってことか……
探索者カードは国から発行されるもので、偽造は結構重めの罪に問われる。
だからこそ提示を求められた際はランクを偽ることはほぼ不可能だ。
仕方ない……そう思いながら、カードを取り出し不自然にならないよう“一部を隠しつつ”ランクの記載箇所を指差した。
「……ランク“E”」
「わかってると思うけど、偽造や虚偽申告は法律違反だからこれが正しいランクだよ」
「ふぅ……なーんだ。やっぱ特別枠は九重姉妹説が有力かなぁ」
「だろうねぇ」
ありがとう双子姉妹、お礼にこれからギャルに絡まれる権利をあげよう。
なんとかバレずに済んだことに安堵したのだが……
「でもね」
ん?なんだ、まだあるのか?
もう彼女から疑いの目線は感じないし、これ以上気になることでもあっただろうか?
「特別枠は“男子二人”って噂だったんだよねー。そこだけ間違いだったのかなぁ?」
「……」
「どったの?なんか汗凄いけど大丈夫?」
「…………ああ」
「本当に?うーん……あっ!」
ビクッ
心臓が跳ねる。ヤバい……流石にバレたか?
いや情報管理ガバガバ過ぎない。
もうこれ俺のせいじゃないよね?
「あー、本当ゴメンね……」
「え?」
「話しに夢中で気づかなかったわ……」
「幡矢君の彼女さん、ヤッッバイくらい怖い目でこっち睨み付けてるね」
「は?」
ふと今まで忘れていたナナの方を見ると
ハイライトが消えたという言葉が似合いそうな目でこちらを見ながらなにかを呟いている。
恐る恐る口元の動きをみると。
(ソーマソーマソーマソーマソーマソーマソーマソーマソーマソーマソーマソーマソーマソーマソーマソーマソーマソーマソーマソーマソーマソーマソーマソーマソーマソーマソーマソーマソーマソーマソーマソーマソーマ)
こっっっわ!あんなヤンデレみたいなナナ初めて見た。
周りの人もいつの間にか目を反らしてるし!
え?高校生まではそんなことなかったよな?女子が苦手なのか俺が女子と話してるときはいつも不機嫌になってたけど……
「なぁ、ナナに弁明するときに手伝ってくれない?」
「いやー、逆効果でしょ。一人でガンバ」
そういうと彼女は何事もなかったかのように校長の話を聴く体勢にはいった。
すまない校長先生……俺はもう貴方の話は聴けそうにない。
まだ午前中だというのに疲れた。
この分だと午後からも何かありそうだな……
そんな風に考えながら未だにこちらを虚ろな目で俺の名前を呟いてるナナを見つめ返す。
まずは愛するナナの誤解を解くところからか……
入学式を終えた俺達は学部毎に別れ、別室でこれからの説明を受ける為に移動していた。
移動が始まった瞬間、先程の誤解を解くために真っ先にナナのもとへ向かった。
「ナ、ナナっ、一緒に行こう」
「さっきの女……誰?」
俺の恋人と思わしきものから、地獄の底から這い出したような声が発せられる。
ヤバい、これは完全にキレてる……
ナナがキレるのなんて、俺が中学の頃に“二人の出会った記念日”を忘れたとき以来だ。
あの時は一週間添い寝で許してもらったが、付き合ってる今ではその程度で許して貰えないだろう……
「いや、あれはあっちから何度も話しかけら……」
「誰か聞いてるんだけど?」
「アッハイ、同じ総合科の福宮美織さんという方です」
可愛い顔なはずなのに、信じられないほどの恐怖を感じた。
普段怒らない人が怒ると恐いって本当だったんだ……
「可愛い子だったね?」
「えっ、ああ……いや!普通だよ普通!ナナの方が断然可愛いって!」
「ふーん」
あ、あれ?いつもなら可愛いって言っただけで赤面したり悶えたりするのに反応がない……
「本当だって!福宮さんにはナナと恋人同士だとか、ナナが可愛いって話してたんだよ!」
「嘘つき……男の僕よりあの子の方が可愛いって絶対思ってるもん……」
「そんなわけないだろ!」
「……」
ナナはこれ以上聞きたくないとばかりに顔を伏せてしまった。
どうすれば信じて貰えるだろうか?
恋人なんて初めて出来たからどうしていいかわからない……
ただの男友達だった頃にもケンカなんて何度もしたけど、こんな風にとてつもない不安に襲われることなんてなかった。
ナナに嫌われたくない、ナナの悲しむ顔なんて見たくない、ナナと……別れたりするなんてもう考えられない……
気づけば視界は滲んでいく……
「ソーマ!?えっ、なんで……」
ああ、情けない顔を見られてしまった……
失望されただろうか?いや、ナナに限ってそんなことはない。
友達だったから分かる。
そう、恋人になるまで気づかなかった……
ただの男友達として過ごしてきたと思ってた時間がこんなにも大切なものになっていたなんて。
「ゴメンナナ、なんか……涙止まんなくて……でもナナのことをちゃんと愛してるってのは解って欲しい」
「わっ、わー僕もゴメン!疑ったりして。伝わった!伝わったよソーマの気持ち」
よかった……嫌われてなくて本当によかった……
「あの~、終わった?お二人さん」
誰かが俺達に声をかけてくる。
急いで涙を拭って振り向くと諸悪の根元こと福宮美織だった。
うおい!せっかくナナが許してくれたのに話しかけてくるんじゃない!
「……何の用?」
「待って待って!そんなに睨まないでよ漆緒ちゃん。私も謝りに来たんだって!」
「あっそ、もう終わったとこだから。どっか行って。」
相変わらずナナの女嫌いは変わってないな……トラブルの原因とはいえ、初対面の人によくあれだけ言えるものだ……
あっ、因みにこういう状況では俺は極力喋らないようにしてる。
前に口を挟んでナナに怒られたからね……
「随分嫌われたなあ……ま、一言謝りたかっただけだかだから~、ゴメンね~邪魔して。」
「別に」
「じゃあね、これから同じクラスメイトとしてよろしくね!」
そう言って福宮さんは先に行った。
「全く……油断も隙もない……」
「はは……じゃあ俺達も行こうか……」
その後は明日以降のスケジュールや授業形態の説明を受けて解散となった。
今日はいつも以上に疲れた……
明日からも大変になりそうだと思うが、ナナと一緒ならなんとかなるだろう。
そうして長い1日は終わった。
[漆緒視点]
長い1日を終え、家到着する。
僕とソーマの二人だけの愛の巣だ。
「「ただいまー」」
家には誰もいないけど、この言葉を言うだけでこの場所が僕達の帰る場所なんだと実感できるから嬉しくなっちゃう。
「ナナ……」
少し沈んだ声でソーマが話しかけてくる。
「どうしたの?ソーマ」
「えっと、改めて今日はゴメン。ナナを悲しませたのは俺の方なのに、俺の方がその……泣いたりして……」
「ううん、僕の方こそソーマを疑うような態度を取ってゴメンね」
とは言ったものの、ソーマのことは最初から疑ってない。
“少し”嫉妬したのは確かだけど、恋人同士になってから、どれだけ僕のことを意識してくれているかが気になってしまった。
いわゆる試し行動というやつだ。
でもまさか、泣く程僕のことが好きだったなんて……
「んふふ」
「えっ、どうしたのナナ?」
「ううん、なんでも♪」
思い出すと嬉しさでついつい顔が緩んでしまう。
いけないいけない、ソーマが泣いちゃったことを嬉しそうにしちゃ悪いよね。
「さて、ソーマもそんな暗い顔してないでご飯にしよ。」
「うん、そうだね」
うん、少し元気が出てきたみたい。
じゃあ少し恥ずかしいけど定番の“アレ”やっちゃおっかなー
「ソーマソーマ」
「どうしたの、ナナ?」
「えとえと……おかえりなさい。ご飯にする?お風呂にする?それとも……ボ・ク?」
「っ……ナナにする」
「え」
え!?その返しは想定してなかったんだけど~!
「じゃあ、遠慮なく」
そう言って僕はソーマ抱えられたかと思えばソファに連れていかれ、撫でる抱きしめる等の行為を行われた。
天国はここにありました。
ややあって、ご飯とお風呂を済ませた後にソーマに髪を乾かして貰いベッドに入った。
今日は色々あって疲れたのか、ソーマは先に寝ている。
「今日は色々ゴメンね」
ソーマには少し悪いことをしてしまったが、今日の収穫は多かった。
ソーマの愛をたくさん感じられたし、これからの二人暮らしや学校生活も楽しみだ。
少し不満があるとすれば、あの福宮とかいう女だ。
ソーマがあの女に靡くとは思わないが、ああいう性格の奴は僕達二人の時間を遠慮なく邪魔してくる。
でもまあ、ダンジョン学部総合科は一般的な大学と違って、カリキュラムは全て指定されている。
どちらかというと高校や専門学校に近く、クラスメイトとの関わりも多いようだ……
「まあ、それは割りきるかぁ……あんまり束縛が強いとソーマに嫌われてしまうかもしれないし……」
それに高校までとは違って、もう恋人同士になったから、今までみたいに“排除”の必要もあんまりないだろうし。
そう恋人同士……
「はぁーあ、ソーマとの子供欲しいなぁ」
残念ながら僕もいくら外見が女の子みたいでも体は男なのだ。
ヤることやったとしても子供は出来ない。
「女の子に産まれたかった……」
自然と涙が出てくる。
男だったからこそソーマと色んなことが出来た。
けれど、女の子じゃなかったからソーマと出来なかったこともたくさんある。
なんども考えたこと。なんども諦めたこと。
ソーマとの幸せで十分だと思ってたのに……
「やっぱり諦めきれない」
希望は0……ではない。
そう、ダンジョンだ。
ダンジョンは出来てまだ年数も浅いため、未知の部分も多い。
性別を変化させる手段だってあるはず。
普段からTS物のファンタジー小説を読んでたからダンジョンが発生した次の日にソーマを無理やり連れてこっそりダンジョンに行ったっけ……
「相変わらず無茶したな~、まっ、そのお陰で高校生の頃には二人共“EXランク”になれたから結果よかったけど」
ランクはF~Aまであって、その上にSランクそしてSランクの更に上に一般的に公開されてないEXランクになる。
まあ、何故か探索者カードにはEXランクって記載されてるけど……
「あっ、そういえばソーマあの女に探索者カード見せてたような……」
多分ソーマのことだし上手く隠したのだろう。
そんなことよりダンジョンだ。
ダンジョン系の学部に入ったおかげで今までよりも多くダンジョンに潜れるだろう。
「告白もちゃんと“ベストなタイミング”でしたし、あとはTSだけ……」
正直告白は賭けだった。
外敵を徹底的に排除して、ソーマに僕のことをちゃんと意識させた後に高校生補正やら卒業式補正を全部乗せた最初で最後の機会。
言うなればソーマからの最期のモテ期だ。
ソーマはよく3回あるなんて言ってたけど、僕にはソーマからの1回だけで十分だ。
「ソーマは誰にも渡さない」
ここまで読んで頂きありがとうございました!
主人公は一応、漆緒となりますので、連載版はナナ視点からの予定です。