第一話 推しの朝食に何を作りますか 3
「そちらのお嬢さんは?」
ぎゃ――、拙者、お嬢さん呼びいただきました。
「メイラおばさんの代わりに雇った家政婦の、ルノーア嬢です」
グレンが渋々と紹介してくれた。
「なるほど。よく来てくれた、感謝する」
んふ――いい声すぎるー!一字一字、弦楽器のように優美に響くぅーー!
「おい、団長が話しかけてるんだぞ。無礼な」
えええ無理無理無理、顔が見られない。あれ、そうなると、私、家政婦って仕事そもそも無理じゃね?!
「グレン、気にするな。いきなり慣れてない環境で戸惑うこともあるだろう」
そして、 ふわっとするいい匂いと共に、推しが私の目の前に舞い降りた。
「初めまして、ルノーア嬢。私は【守護の大盾】現団長、リディオン・シルヴァだ。」
ドット絵が3次元になっただけなのに、こうも凄まじい破壊力になるんだ。
私は、推しと目をあってしまったのだ。
元の世界の測量法でいうと、190cmを超えそうな長身の美丈夫である。背は高いが、筋肉隆々としている訳では無い。騎士団の凛とした軍装に包まれたのは、ただ無駄のない筋肉で引き締まってい体型である。長い白金色の髪はサラサラのツヤツヤと光り、シャンプーのCMに起用されてもおかしくない。顔は彫刻のように端麗で、繊細な彫りが深みを持っている。
ムンムンとた漂う成人男性の色香に、私はクラっとなった。
そして、推しの美しさを正確に表せない己の語彙力にガッカリしたのである。ゲームばかりでなく、もっと読書すれば良かった…ぐぬぬ!
「るるるんあですぅ…よろしくお願いします」
自分の名前を盛大に噛んで、ちょっと頭が残念な人には見られたかもしれないが致し方があるまい。
しかし、【美形】という言葉のために生まれてきたような、その端麗な顔は更にやさしく微笑んだ。
「若いお嬢さんに面倒かけるの申し訳ない。ただ、留守がおおく、どうしても手伝ってもらいたい。一介の武人なので、礼儀作法に疎く、乱暴な振る舞いもあると思うが、どうかお許しを」
「はひ!私も乱暴ですので、問題ありません!」
――わたくしこそ礼儀作法の分からない町娘なので… と言いたかったところ、美しい紫の瞳に見られて、頭が真っ白になってますます言葉を紡ぐ機能が壊滅した。
「どういう自己紹介だよ」グレンに思わずツッコミを入れられた。
「ユーモアがあるお嬢さんだね。グレンとも早速仲良くなったようで安心した」
「仲良くなってません」グレンは抗議するようにもごもご言った。
「ルノーア嬢、今日はこれから会食で深夜まで及びそうなので、初日だし、今日はもうゆっくり休みなさい」
「はい!かしこまり!」
はい、は言えるようになったが後半は失敗率高め。
「そうだ、明日の朝からお願いしよう」
リディアン様は微笑んだ。
「朝食、楽しみにしている」
と、いい匂いと一緒に、部屋から離れた。
「…ああああ」
私は思わず、グレンに抱きつく。
「こわい!距離感近!きもちわる!」
「どうしよう、グレンさん――――」
推しの朝食に、何を作ればいいの――ー!
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