プロローグ
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きっかけは、五歳上の兄からもらった一本のゲームだった。
▶︎こうげきを うけた
▶︎ルーは 95 ダメージを うけた
▶︎ルーは ちからづきた
「えええ――ワンパンじゃん。お兄、ここの敵強すぎるよー」
「まあまあ、負け確の演出だからね。ちょっと黙って見てろ」
『遅かったな。すまない。ここからは私に任せて』
『団長ー!!』
▶︎だんちょうは けんぎを はなった
▶︎てきぜんたいに 999ダメージを あたえた
▶︎てきは ぜんめつした
「...ええ!!!!!!!!!なにこのキャラクター、めちゃ強くない??しかもやばいぐらい格好いい…!!!」
「そうだろう、この世界では最強の騎士と呼ばれる男だからね。すべてのステータスがカンストしているよ。」
「顔もよすぎる…!!!!!仲間になってくれたりする?」
「なるわけないじゃん。ゲームバランス崩壊するよ。団長は、この最初の訓練場のなかしか使えないよ」
「そうなんだ…じゃあ訓練場に篭ろう」
「ストーリーも進んでな!どんどん面白くなるから」
「わかった!めちゃ興味湧いた」
「また感想教えてね。じゃあな、また見舞いにくるね」
……
「おー元気か。ゲームはどう?進んでいる?」
「もうラストダンジョンまで進んだけど…」
「この顔、ラスボスが誰かわかったんだな」
「団長が…自分の出生の秘密を知って、狂ってしまって、主人公の家族を殺して悪魔に取り憑かれたんだね…」
「そうそう。なかなかいいストーリーだろ?…ちょっとお前、目腫れてないか?」
「泣いてたもん」
「なんでゲームで泣くんだ。てか泣くところじゃないだろ」
「団長に一目惚れしたもん…こんなにゲームのキャラ好きになったことが今までなかったのに…なのに、倒さないといけないなんて…」
「あーそゆことな。推しを攻撃するのってつらいか。もう少しほのぼのとしたゲームを持ってこようか?」
「ううん!頑張ってやる。最後まで団長の行く末を見守りたい…」
「おお、そっか、頑張ってな」
……
「よお、ゲームクリアしたか?好きな団長のグッズも持ってきたよ」
「…ありがとう、おにぃ。先週クリアしたよ。プレイ時間300時間越えちゃった」
「えーなんで??このゲーム、そんなにやり込み要素があった?ラスボスそこまで強くないだろ?」
「…倒すならせめて苦しませないようにしたくて、だから全員の全スキルをカンストまで鍛えて、一番痛くなさそうな倒し方を見つけたくて…」
「おお、そうか。お疲れさん。いいゲームだったろ。そうだ、今日はこのシリーズの最新作が発売したから持ってきたよ」
「ありがとう、おにぃ…でもなんか燃え尽きちゃったみたいで、ゲームはちょっと休むかな」
「そうだな、目も使うし…体調はどう?食欲は?」
「うん…大丈夫…ただ」
「ただ?」
「なんだか…くらくら…」
「…顔色悪いな。大丈夫?先生を呼ぶか?」
「大丈夫…ちょっと目を瞑ったら…」
「おい!しっかり!!…看護師!!医者を呼んでくれ!!!妹が気を失った…」
……
『18歳の若さ...儚く、短く、つらかっただろう...』
――不思議な声がする。
『憐れな、人の子よ』
――誰?
『一つだけ、願い事を叶えてあげよ』
――お母さん、お父さん、おにぃに会いたい。
『それだけはできない。もうきみの身体はあの世界のものではない。家族との縁も終わったのだ。』
――…だったら、どんな願いなら叶えるの?
『来世でやりたいことがあれば実現してあげよう。一生困らない富や、絶世の美貌…』
――…ゲームの世界でもいいの?
『あのゲームか』
――はい!
『できるが、難易度が高い』
――現実世界じゃないから?
『そう。きみのために一から世界を作らなければならないので、きみには強靭な身体を授けることが難しくなる。そうだ、一年だけの時間なら、与えることができよう』
――それでお願い。一年もあれば余裕だ。
『本当に、きみがひどく気に入ったあのゲームの世界でよいか』
――それしかない!頼んだ!もう一つだけわがまま言ってもいい?
『団長、というキャラクターのことか?』
――さすが!。彼の近くに居られるなら、一年しか生きられないモブでいい。彼が優しく微笑むのを、そばに見られるなら、それでいい。
『叶えてあげよう。憐れな少女よ』
――ありがとう。残酷で優しい神さま。
『わたしは…神などではない。』
――え、違うの?
『君が知らなくとも良いことだ』
――ちょっと、気になるんだけど、教えて!!!ね!!!!
これは、日本人だった私が消え去った瞬間であり、新たな世界で目覚めた瞬間でもある。
読んでいただきありがとうございます!
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同時に
『孤児少年、迷いの樹海でもふもふと溺愛される第二人生を紡ぎます』
というほのぼのファンタジーものも連載しているので、
よければ作品ページから覗いてみてください。