後半
長い死闘はようやく終わり、エギドロンとアスラゼクスの勝利となった。ベルフェルスはアスラゼクスとエギドロンによって再び封印された。
「アヤツは何百何千年も眠る癖。身体と闘気、魔力と頭の良さがずば抜けているからのお。怠惰之大罪さえなければ、アヤツは七大覇者最強の座を手に入れていただろうに」
ベルフェルスはあらゆるものを凌駕する力を求めて怠惰の大罪を手に入れたそうだ。
力に蝕まれると分かっていながら、そうまでして大罪スキルを得たベルフェルスの気持ちは分からなくもない。
魔界において弱肉強食は絶対のルール、強さこそが正義の無法世界だからだ。
「どうじゃった?エギドロン。七大覇者の中で怪物とも恐れられているベルフェルスと初めて相対した感想は」
「恐ろしかった。お前がいなければ勝てなかった」
七大覇者と戦うのは初めてではない。私が敵対する勢力の中にも、私やアスラゼクスと同じ七大覇者がいるからだ。
ベルフェルスは私が今まで相対してきた者たちを凌駕する程に強かった。
私一人でも勝てぬわけではないが、その時は憤怒の大罪を最大限まで開放して戦わなければ勝ち目はないだろう。
「王として――いやそれを抜きとして、臆せずアヤツに立ち向かうソナタの勇姿は見事じゃった」
「何が言いたい?」
「そのままの意味じゃ。魔界の危機、国のためとなれば、真っ先に引き受け果たすのがソナタじゃからな。
死ぬことを想定していながらも王としての責務をやり貫くソナタの覚悟はわらわにはない」
「では、ベルフェルスと何回か相対しているお前はどうだったんだ」
「もちろん怖いに決まっておる」
「自由気ままで常に好奇心に溢れているお前に、そんな一面があったとはな」
「何を言う、妾とて怖いときは怖がるぞ。未知なるものを前にしたときはいついかなる時も怖いものじゃ、わらわとて例外ではない。何せ生きているからな」
常に魔界の全域を一人で回っているアスラゼクスなら怖いものはないと思っていたが、そうではなかったみたいだ。
“武神”と称され、常に強敵を探し続けるアスラゼクスにも、こんな一面があったとはな。
「帰るぞ、妾とソナタの帰りを待っている者たちがいるし、長く開けすぎるとそこをつけ入れられるからな」
「ーーそうだった! 私は一足先に帰るからな」
「やれやれ。まじめすぎるのは相変わらずじゃな」
刹覇ベルフェルス
魔界を滅ぼしかねないかねない力を秘めた怪物たる悪魔。自身の力によって長い眠りについている。