バッドエンドを覆してよ……
世津が夏枝さんと付き合っているという噂が流れていた。
学校の嫌われ者の世津と女バスのエースとのスキャンダルに学校中は注目していた。
それを偽物の恋人だと知っているのは、世津の仲間とタイムリープした私だけ。
渡り廊下から校舎に入る入口のところで、物思いにふけっていると
「未来?」
なんて世津の声が聞こえてくる。
視線を彼に向けて彼に問う。
「教室に戻るの?」
「い、いや。ちょっと3年の先輩に用事があってな」
「その用事ってのは大事なこと?」
知っている。
今から夏枝さんへ告白した私の同級生のところへ行くのだろう。そこで偽物の恋が終わる。
ここで私が止めれば偽物の恋は偽物のまま。
ここで私が背名を押せば、偽物の恋が本物へと変わる。
「どういう意味だよ?」
「世津が危ない目に合おうとしてるから止めようとしてる」
本当は止めたい。
危ない目に合うのも止めたいし、本物になりそうな偽物の恋を止めたい。
「大丈夫だよ。夏枝が困ってることを先輩に言うだけだ。なにも心配はいらない」
「そういうことじゃないんだよ。そういうことじゃなくてね。ううん。そういうことでもあるんだけど。なんて言えばいいのかな……」
だめだな私。まだ迷ってる。
覚悟を決めろ。
深呼吸をしてから世津を真っすぐと見つめる。
「もし、夏枝さんを助けることが世津にとってのバッドエンドだったとしても、夏枝さんを助けることができる?」
「なんだそりゃ」
私の遠回しな質問に対して当然なリアクションで返されてしまう。
でも、優しい世津は真面目に答えてくれた。
「バッドエンドなんかにさせない。もし、そんな終わり方が待っているだけだとしても、覆してハッピーエンドにしてやるさ」
本気の答えはどこか子供っぽく、綺麗事の単語の羅列を描いてしまっているが、そんな小学生でも出せそうな決めセリフでも私は彼を信じることにした。
「わかった。証明してみせて。バッドエンドをも覆す、きみのハッピーエンドを」
覆して。世津。
私は泣きそうなのを悟られないように校舎の奥の方へ逃げるように走って行く。
その足で職員室へ出向いた。
そこには夏枝さんがいて──。
「世津が体育館裏で大変なことになってる。助けてあげて」
夏枝七海ちゃんに世津との未来を託して。
♢
夏枝さんと本物の恋人同士になった世津は幸せそうで。
夏枝さんも初恋が実ったように喜んでいて。
美男美女カップルでお似合いだった。もし、これがタイムリープしていない状態だったなら私は胸に穴が空いたような状態だったのだろう。
でも、これで世津が助かるならばそれで良い。
夏枝さん。世津をお願いします。
世津。夏枝さんを幸せにして。
お幸せに──。
心から祝福したのに、世津は死んでしまった。
夏枝さんと遊びに行った先で事故にあってしまった。
どうして、どうして──。
私はまた時の砂を振りまいて虹色の光に包まれて時を駆ける。




