第一一話 卒業旅行の計画
恥ずかしいだのなんだのとほざいてみたは良いものの、結局は互いに、あーんをしあって食べたオムライス。
側から見たら、リア充爆発しろ案件だったろうが、家の中なので許して欲しい。外じゃこんなことをする勇気がないです、はい。
時刻は昼下がりど真ん中な午後二時前。三時間クッキングは作って食べ終えるまでが三時間だったみたい。本気で三時間かかって未来と爆笑してしまったよ。
「駆け巡れ、私のビート!」
「スタートと同時にエンストしてんぞ、あんたのビート」
お昼を食べた後は居間でレースゲームをおっ始めた。
未来が、「たまにはゲームしよっ」なんて言ってくれるもんだから、世界的に有名な配管工が主人公のレースゲームをやっている。
「巻き返せ、私のスタービート」
「明後日の方向に行ってるぞ、あんたのスタービート」
ちなみに、未来は超ド下手である。
「ふぃ……。今回はこのくらいで勘弁してやるか」
「最下位がなにをほざいてやがるのか」
「もう一回やる? やる?」
下手なのに楽しそうにしている未来を見ると、ゲームの価値は楽しんだもん勝ちってはっきりわかんだね。
でもな、でもなー。なんか圧倒的に漂うこれじゃない感。
せっかく美人の彼女を持っているってのに、これじゃいつも通り過ぎる。
「んー? 世津、なんか楽しそうじゃないね?」
「いやいや。未来とゲームするのは楽しいよ。めちゃくちゃ楽しい。でも、せっかく未来の受験が終わって自由にデートできるってのに、これじゃいつもと変わらんなぁと」
唇を尖らせて拗ねた様子を見せると未来がくすりと笑った。
「しょうがないよ。雨だし」
「雨だもんなぁ」
「ま、お外のデートはお預けだね」
言いながら頭を撫でられてしまう。
いつもなら手を振り払うだろうが、拗ねた俺の気持ちがなんだか和らいでいくのがわかり、素直に撫でられておく。
未来に頭を撫でられるってこんなにも心地よかったんだな。なんだか今まで振り払っていたのが損だと感じちまう。
「今度、絶好のお出かけ日和になったらさ、世津のバイクの後ろに乗せてよ。遠くに連れて行って」
「あてなき旅みたいな?」
「あ、いいね。卒業したら旅に出よう。世津のバイクで。それで疲れたら適当な温泉旅館に泊まってさ」
「卒業旅行だな」
「彼氏と卒業旅行なんて最高だよ」
素直にそんなこと言ってくれると、未来はお姉ちゃんっぽい笑みで、弟に言い聞かすように言って来る。
「その楽しみのために今は我慢だよ」
「そうだな。今は我慢して、卒業旅行で発散するとしよう」
「そうと決まれば、さ、もう一試合、行くよ」
やる気がみなぎってみえる未来はテンション高く言い放つ。
「燃え尽きろ、私のハート」
「スタートからエンストして燃え尽きてんぞ」




