第七話 告白の後
ぱたんとゆっくり屋上のドアを閉める未来。
何分くらい屋上で抱き着いていたかなんて計測はしていないが、いい加減にしないと風邪でも引いてしまうだろうから、名残惜しいが抱擁を解き、さっさと屋上から退散した。
まだ関係性が進んだって実感はないが、ドアを閉めた後に未来と目が合うとお互いに照れ臭くなって目を逸らす。
「ご、ごめんね。きゅ、急に告白なんてして。受験も終わってないのに見切り発車だったね」
「そんなことないだろ。告白された方が言うのもなんだが、告白したい時が一番ベストのタイミングだと思うぞ」
そう言うと、安心したように笑ってみせた。
「本当は卒業式に屋上に呼び出して告白しようと思ったんだけど、なんか我慢できなくてさ。どうせ世津のことだから可愛い女の子達にチョコもらってるかもって」
「全部義理だけどな」
「ほんとかなー」
怪しむような顔をして見せて、くすりと笑ってリセット。
「それが義理だとしても嫉妬しちゃうよ。他の女の子は世津と同じ学年で、世津と一緒のクラスで、一緒に学校生活してて……。私も、私も……って……。それで我慢できなくなって告白しちゃいました」
ベッと舌を出す仕草は昔から変わらないおてんば娘。
「すごく嬉しかった。世津が受け入れてくれるって思わなかったから」
「好きになるに決まってるだろ。こんな綺麗ないとこが毎日面倒みてくれてるっての惚れない男子などいるかってんだ」
「ほぅ」
自分なりの良いセリフは相手にとってはそうでもないみたい。疑うような目で俺を見てくる。
「それじゃあ、夏枝さんに告白されても、秋葉さんに告白されても、冬根さんに告白されても揺るがない?」
「ゆっるがない」
「なんか今の若干噛んでなかった?」
んんー? とジト目で迫ってくる彼女へ慌てて言ってやる。
「俺は未来が好きです。好きなんです」
「ほんとかなぁ」
「信じてくれよぉ」
「しょうがない。信じてやるか」
やれやれと肩を落とすと腕を組んで言って来る。
「ただし」
ビシッと指を差される。
「浮気したら許さないんだからね」
「はい」
「ん。よろしい。それじゃ、今晩はお祝いの未来お姉ちゃん特性のケーキを作ってあげよう」
「わーい。って素直に喜んで良いのか微妙なんだが。未来、お前勉強しろよ」
「余裕だから一緒に付き合った記念しようよ」
ピースサインを送ってくるこの恋人は、ムカつくけど素直に凄いし可愛いとも思ってしまう複雑な気持ちである。
「さ、そうと決まったら材料を買いに行こう、彼氏《荷物持ち》くん」
「彼氏と書いて荷物持ちと呼びませんでした?」
「なにか問題でも?」
「こんな彼女の荷物持ちなら光栄だな」
そんなことを言いながらケタケタと笑い合って俺達は恋人として階段を下りて行く。




