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セツなきミライは砂時計にながされて  作者: すずと
冬根聖羅編〜ブロー・オブ・ウィンター〜
66/100

第66話 恋バナはみんな大好き

 聖羅が、「せっかくだし、練習ちょっと見て行ってよ」なんて誘ってくれたので、遠慮なく彼女のダンスを見せてもらうことにする。


 何曲かのレッスンを終え、タオルで汗を拭きながらこちらへ質問を投げて来た。


「四ツ木くん。まだ時間ってある?」

「ああ。今日はバイトも休みだし、時間ならいくらでもあるぞ」

「じゃあさ、ちょっと付き合ってくれない?」


 彼女からの言葉に、俺は神妙な面持ちで視線を逸らした。


「……ごめん。俺……他に好きな人が……」

「おい、待て、ごら。なにをぼくが告った感出してきやがってんだ」

「だって、付き合ってって……」

「その付き合ってじゃなーい! わかるでしょ!」

「いや、聖羅がおれに惚れてる可能性だってあるし」

「仮にぼくが四ツ木くんに惚れてたとしても、推しのアイドルからの告白なんだからありがたく受け止めろよ」

「アイドルが恋愛しても良いの?」

「あー。だめだにゃ」

「この子はアホの子かな」


 と、まぁ、安定のやり取りを繰り広げていると、聖羅がニタァっと悪戯でも思い付いた少女の笑みを見してくる。


「それで、四ツ木くんは誰が好きなのかにゃ?」

「にゃんでいきなり俺の好きな人ムーブに発展した?」

「そりゃ、『俺……他に好きな人が……』って言えば、女子としては見逃せないにゃー」

「いやいや。そりゃ冗談であってだね」

「冗談のノリに対してちょっぴりのマジをぶち込んだんだよね。うんうん。わかる、わかる」


 大袈裟に頷いて肯定の言葉を発してきてるの、すげームカつく。


「ちょっとのまじも入れてねぇっての」

「はいはい。ぼくはアイドルであると同時に現役JKなんだ。恋バナが大好物なんだよ」


 あー。そういや夏枝もそんなこと言ってたなー。みんな恋バナ好きだよね。


「それに恋愛禁止のアイドルは他人の恋愛で盛り上がるしかないんだから」

「アイドルだから仕方ないけど、他人の恋愛で盛り上がるしかないって悲しいだろ」

「ほら! リッスン!」


 手を耳に付けて聞く姿勢に入る聖羅に現実を突きつけてやる。


「だから、そういうのはいないっての。ごめんて。変なこと言って」

「むぅ。強情だなぁ」


 膨れっ面からのジト目されちまう。


 すると、「わかった」と明暗を思い付いたみたいに手を合わせて質問を投げてくる。


「七海ちゃんでしょ?」

「なんで夏枝?」

「そりゃ偽物とはいえ恋人役をやるなんて気があるとしか思えない。実は隠れて付き合ってるんじゃない?」


 心の中で、隠れて偽物は演じようとしたけどなと唱えてから答える。


「あれは単なる演技。それで無事に事が済んだろうが」

「まぁ、確かにそうだよねぇ」


 でも怪しいんだよなぁ、とぶつくさと言ってから続いての質問。


「美月ちゃんだ」

「なんで美月?」

「そりゃ、幼馴染だし、あんたらやけに距離近いし。なんか秘密の関係でもあって、それをきっかけに進展したのかなっと」


 鋭いな。でも、美月の秘密を知っているわけではなさそうなのでセーフだ。


「聖羅は幼馴染っている?」

「そんな漫画の世界にしかなさそうな存在はいない」

「いや、実際に幼馴染ってのは多いと思うが……」


 こいつの中の幼馴染はどんな感じなんだよ。


「付き合いが長いとさ、極端に仲が良くなるか、悪くなるかのどっちかだと思うんだわ。実際は後者の方が多いんじゃないかな。俺と美月は気が合って前者ってだけだな」

「あー。確かに付き合いが長いと仲は悪くなる人の方が多い気がする」


 どうやら納得したみたいだが、なんで納得したのに膨れてんだよ。


「じゃあ、やっぱり加古川先輩かぁ」

「なんで未来だけ確定っぽい言い方?」

「そりゃ、心を開かない加古川先輩は四ツ木くんにだけ心を開いている感じだし」

「側から見たらそんなイメージなの? あいつ、めっちゃ喋るぞ」

「だから、それは四ツ木くんにだけなんだって。噂によると、加古川先輩と喋った日はなんでも願いが叶うとか」

「未来女神様説浮上中」

「そんな女神様と恋仲な四ツ木くんかっけー」

「いや、だから違うっての」

「じゃあ誰なのさー!」

「だーかーらー!」


 そんな答えも出ない言い合いも高校生活の良い思い出だよな、なんて思いながら過ぎていく。

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― 新着の感想 ―
[一言] この段階では、まだ冬が一番距離が遠いかなあ。 未来はともかく別格ですね。
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