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セツなきミライは砂時計にながされて  作者: すずと
冬根聖羅編〜ブロー・オブ・ウィンター〜
62/100

第62話 打ち上げは基本楽しい

「みんなー! 今日は来てくれてありがとー!!」


 ライブが終わり、俺達はそのまま大型商業施設の8階にある串カツ食べ放題のお店にやってきた。

 チェーンの食べ放題のお店で高校生でも入りやすいお店。自分で串カツを取ってきてテーブルに設置されている油にぶっこむセルフスタイルなのでお値段もリーズナブル。串カツに他にも代わり種や、お茶漬け、デザートもあって楽しい場所だ。


 ライブが終わってすぐに、『今からみんなでご飯行こうよ』というメッセージがグループに入った。


『もちろん』


 っことで、ここに集まったってわけだ。


 席順は、俺の隣に陽介。陽介の隣に豪気。向かいに豪気と陽介の正面が夏枝。陽介と俺の正面に美月って席順。


「おつかれー聖羅。今日のライブも良かったよ」

「うんうん。ダンスがキレッキレで最高だった」


 美月の隣に聖羅が座ると、女性陣が褒めちぎっている。


「やーやー。どもどもー。にゃははー」


 先程まで圧巻のパフォーマンスを披露していた聖羅は照れくさそうに頭をかいている。


「でも、やっぱ聖羅より美月がステージ立てばもっと盛り上がるよね」

「そうだね。聖羅ちゃんより七海ちゃんが立てば盛り上がりは半端なかったよね」

「わたしらのヴィジュ最高だもん」

「「ねー」」

「このあばずれ共があ! このアイドル聖羅様よりもヴィジュが勝ってるからって調子に乗りやがってー!!」


 あははーと三人とも楽しそうに笑い合っている。これが彼女達のいつものノリだ。特に聖羅が楽しそうに見えるのは、ただのドM?


「聖羅。最高だったぜ」


 豪気が相変わらず熱い言葉を発すると、串カツを食いながら陽介が要約する。


「『ロリ最高』って言っております」

「誰がロリだ! デュクシ!」

「ちょ! おまっ、串カツ食ってる時にデュクシすんなよ」

「杉並くん。その爽やかイケメンやっちゃって」

「あいよ!!」


 デュクシ、デュクシと豪気が陽介を攻撃してイチャイチャしてやがります。


「そういえばさちょっと気になったんだけど」


 聖羅がジト目でこちらを睨んんでくるんだけど。


「どぉして四ツ木くんはペンライトを白く光らせてたのかにゃー?」


 ジトーと自分で声を出して見てくる聖羅へ、デュクシを受けている陽介の解説が入る。


「こいつがヘタレってことさ」


 陽介の端的な答えに首を捻る聖羅。


「どゆこと?」

「実は──」


 事情を話し終えると聖羅の他に、女性陣三人が睨んでくる。


「まさか四ツ木がそんなヘタレだとは思いもしなかった」

「そうだね。世津くんならビシって決めると思ってたのに」

「つうかぼくのライブなのになんで白なんだよ。百歩譲ってもウチのメンバーカラーに白いないし、なんなの? ヘタレなの?」

「めっちゃ言われるやん。ただ平和に終わらそうとしただけなのに」


 こんなしょうもないところで誰かの色を推して押し問答なんて面倒だから、白にしただけなのに。


「へたれ」

「へたれ」

「へたれ」

「くぉ」


 美少女三人からのへたれを頂きました。非常に良きと思うのは俺が聖羅以上のドMだからなのか。


「世津の敗因はたったひとつ」


 しみじみと言葉を放つ豪気は悟った口調で語り出す。


「おめぇは緑を選ばなかった」

「一番ねぇよ。おめぇは黙って追加の串カツ持って来い」

「わん」


 そう言って豪気は素直に追加を取りに行った。


「あ、俺も行こう」


 続いて陽介も行ってしまう。


「わたしも色々見てこよう」

「あ、あたしも。聖羅ちゃん、おつかれだろうし、なにか取ってこようか?」

「ごめん美月ちゃん。お願いしてもいいかな」

「了解。適当に選んじゃうね」

「ありがとー」


 俺も取りに行こうとしたが、それだと聖羅がひとりで席に残る羽目になるため、俺も残ることにした。


 さっきまでワイワイと騒がしかった席がふたりになってシンとなる。


 別に聖羅とは気まずい関係でもない。男友達みたいな感じなので、気軽に絡みにいく。


「聖羅。改めてだけどライブおつかれ」

「にゃは。おつかれー。来てくれてありがとうね」

「でも、良かったのか?」

「ん? なにが?」

「いや、ライブの後は握手会とかあるんじゃないの?」

「ずっきーん」


 わざとらしく胸に手を当ててお手製のサウンドエフェクトを放つ。


「いたたた。ぼくたちみたいな駆け出し中のアイドルの握手会なんて秒で終わるよ。にゃはは」

「え、なんかごめん」


 謝罪の意味を込めて手を差し出した。


「なに?」

「いや、俺は普通に聖羅のファンだから握手してもらおうかと」

「同情はよせ、四ツ木くん。悲しくなる」

「ガチファンです」

「むぅ。それならばよし。この超アイドル冬根聖羅の握手をくらえ」


 ガシっと握手をしてくれる。


「ら、らら、ライブ最高だったんだなぁセイランたん」

「ありがとー。ぼくもきみが来てくれてとっても嬉しかったよ。また次も来てね」


 流石はアイドル様。握手の時の顔の作り物の笑顔は誰にもわかるまい。


「セイランたんと握手したこの右手。一生洗わない。はすはす」

「言ってる側からおしぼりで手を拭いているのはぼくに喧嘩を売ってるのかにゃ? へたれくん」

「おっと。へたれ過ぎてわけわからん行動に出てしまった」

「よぉし。言いながらも更に念入りに拭いている案件についてとことん話し合おうではないかセイランファンさん」

「セイランファンてきには? 他のメンバーとの交流が気になるでござるな。普段メンバーとはどこで遊んでいるでござるか」


 適当なノリで絡むと、それまで楽しそうにしていた聖羅が微妙な顔をする。


 少し地雷を踏んだかと思ったが、聖羅はすぐにいつもの笑顔で口元に指をもっていった。


「メンバーとのことは秘密だよ」

「流石アイドル様。秘め事が多いんだな」

「ぼくはミステリアスなアイドルだからね」

「ミステリアスの意味はバカじゃないぞ?」

「知ってるよ! つうか今のどういう意味だ? ああ!?」


 あっはっはっと話していると、みんながそれぞれ具材を持って戻って来る。


「なになに? ふたりしてなにを盛り上がってるのー?」


 美月が聞いてくるから今の絡みを教えてあげると爆笑がうまれた。


 それからみんなでワイワイと盛り上がり、聖羅があの微妙な顔をすることもなくなった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 誰も選ばない、を選んでしまったかあ。まあ、光の三原色は混ぜると白になるからw 自分で揚げる串カツの食べ放題なんてあるんですね。大阪の串カツは一度だけ食べたことあるけれど、確かにうまかったな…
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