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セツなきミライは砂時計にながされて  作者: すずと
秋葉美月編〜女心と秋の空。幼馴染の心は夢と妄想に移ろう〜
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第54話 超有名作家の邸宅跡

 古典の先生に色々と聞いていたらちょっぴり時間が遅くなってしまった。


 少し慌てて家に帰り、愛車の忍者250の鍵を持ってすぐに乗車。


 気分的には慌てているが、運転は慎重に落ち着いて。安全運転第一。


 家から美月の家まで40秒で到着してから思ったが、ありゃま制服だ。


 でも、まぁ、うん。大丈夫っしょ。


 こいつでの登下校は校則違反。もれなく停学が待っていることだろう。


 しかしながら、制服のままで乗ってはいけないという校則は書かれていないのでセーフ。そういうことにしよう。実際、ちゃんとチャリで登下校したもんね。


 バイクのハンドル辺りにあるスマホホルダーからスマホを取り出した。『あ、世津くん着いた?』


「もしもし、あたしメリーさん。今、あなたの家の前にいるの」

『随分と遅いメリーさんなことで』

「美月に言われちゃ世話ねぇや」


 くすくすといつも通りの会話ができている。それがなんだかホッとする。


『冗談だよ。早かったね』

「美月は待つより待たせる派だろ? キャラ設定を遵守しないとな」

『や、いつもすみませんね』


 嫌味っぽく謝られて電話を切られる。


 すると玄関の扉が開閉する音がこちらまで聞こえてきて、団地の玄関口より美月が現れる。


「なんで制服?」


 着替えていると思っていたので、ついそんなことを聞いてしまった。


「本当にあたしもさっき帰って来たところだから着替える時間なかったんだよ。あれ? 制服でバイクに乗っちゃだめなやつ?」

「いやー。どうだろうな。校則には書かれてないけど」

「ま、いっか。停学になっても世津くんと一緒だし」

「案外そういうところあるよね、きみ」

「停学になったら遊びに行こうよ」

「わるわる美月が発動してるぞ。停学中に外出ちゃだめだろ」

「そうなの?」

「知らんけど」

「バレなきゃ良いんだよ」

「わるわる美月だな」


 言いながら予備のヘルメットを投げ渡すと、「わっ。とと……」なんて落としかけたが、なんとかキャッチに成功する。


「おー、美月のくせにナイスキャッチ」


 拍手を送ると、ちょっぴり膨れ顔を見せた。


「美月のくせに?」

「落とすと思ってたからな」

「世津くんって、あたしのこと運動神経悪いと思ってるでしょ?」

「え? 今更?」

「もう。確かにそうだけどさ……」


 プイッと怒る彼女の態度が可愛らしくて、笑いながらヘルメットを被りながら聞いてくる。


「どこ行くの?」

「行ってのお楽しみってことで」

「サプライズってわけだね」

「そんなたいそうなものでもないと思うので、ハードルは下げてご乗車ください」

「わぁい。とっても楽しみ」


 この子ったら遊園地に行く幼女みたいに期待してバイクにご乗車なさった。


「危ないから、お腹に手を回して、ギュッとしな」

「えいっ!」

「ぎゅえっ」


 ギュッと密着すると、ブレザー越しなのに、豊満に育った美月の胸の感触を背中一杯に感じることができた。


 けどさ、力加減ってあんじゃん。


「こらこら。昼間に食べたS定が出るとこだったぞ」

「今日のS定は美味しかったね。なんでだろ。友沢くんが奢ってくれたからかな」

「おい。俺が奢った時は文句しか言ってなかった気がするぞ」

「世津くんだしねぇ」

「どういう意味だごらぁ」

「きゃはは。ほらほら、早くいこーよ。かっとばせー」

「当社は安全運転でお客様を運びますぞよ」

「れっつごー」


 奥ゆかしい美女が全然話を聞いてくれない。




 ♢




 美月の家からタンデムツーリングをすること、おおよそ1時間。


 運転中は、ごぉごぉと鈍い風の音と、フルフェイスのヘルメットで耳が覆われ、声が聞き取りにくいこともあり、ほとんど無言でのツーリングとなってしまった。


 ギュッと抱き着いてくれる彼女の体温はドキドキするけど、やっぱり安心できて。これが幼馴染の成せる関係性なんだと実感できる。


 幼馴染……。


 いや、もう、俺達は……。


「はい。ご到着です」

「ありがとうございます」


 目的地に到着し、バイクを停車。


 ジャリっと砂利の上に立った美月がヘルメットを脱いで本堂を見上げて首を傾げる。


「ここは?」

廬山寺ろざんじ

「廬山寺? んー、どっかで聞いたような……」

「紫式部の邸宅跡だとよ」

「あ、さっきの古典の授業で聞いた場所だ」

「そ」


 言うと美月はジト目で見てくる。


「なんだか安直な考えだね」

「なんとでもいいたまえ。俺はここに美月と来たかった。それだけだ」

「そっか」


 なにか察したのか、それとも気が付いていないのか。


 どちらにせよ、見た感じはいつも通りの美月は優しくヘルメットをこちらに渡す。


 受け取ってヘルメットをバイクにかけながら彼女に話しかける。


「拝観できるみたいだし、中に入ってみよ」

「うん。行こっか」

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― 新着の感想 ―
[一言] 今は観光地でも、昔は人が生活していた場、だったんですよね。そこで何が起きるのか。 ちょっと夏の終わりを読み返しました。同じ宣言をして、夏を助けて。バッドエンドは回避できたようだったのに、流…
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