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セツなきミライは砂時計にながされて  作者: すずと
秋葉美月編〜女心と秋の空。幼馴染の心は夢と妄想に移ろう〜
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第49話 自分ルールは簡単に破ることができる

 結局、放課後になっても美月から返事はなかったな。


 自転車に跨るまでに連絡が無ければ今日は大人しく帰ろう。


 そんな自分ルールを作り、今し方、学校の駐輪場にて自転車に跨ったため、今日は家に帰ることを選択することにした。


 連絡がないのは体調不良で寝ているのだろう。


 返事もないのに病人のところに押しかけてまでお見舞いなんて、ありがた迷惑なんてもんじゃなく、それはただの迷惑だ。


 そもそも彼女の体調不良が無理をしたことによるものではないかもしれない。普通の風邪なのかもしれない。心配しすぎだ。


 大丈夫、大丈夫。明日には体調も戻っているだろう。


『美月の体調は大丈夫そう? 連絡返ってこないからちょっと心配でな』


 心の中での葛藤と矛盾。


 自分に言い聞かせた言葉は簡単に砕け散って、結局、美陽へメッセージを飛ばしてしまっていた。


 美月と違って美陽からはすぐに連絡が返ってくる。予想外なのはメッセージではなく、電話で返ってきたことだ。


「美陽?」

『せつにぃ。今、大丈夫?』

「ああ。もう放課後だから大丈夫」

『もう家?』

「んにゃ。学校の駐輪場」

『そっか。まだ学校か……』

「美陽よ。バイクの二ケツは大丈夫だが、チャリの二ケツはできんから、中学の送迎は勘弁な」

『残念。──じゃなくてさ』


 前置きの雑談を切り捨てるように美陽が言ってのける。


『せつにぃ今日バイトじゃなかったらおねぇの様子見てあげてくれない?』

「ん? それは良いんだけど、美月は大丈夫なのか?」

『熱はもう下がってる、はず、なんだけどね……。なんだけど……』


 なんとも歯切りの悪い返事をしたあとに少し考え込んでから受話器の方より答えがやってくる。


『昔にも同じことがあってね。おねぇが熱出した後、下がってるのに部屋に閉じこもるってこと』

「へぇ。そんなことがあったんだな」

『あたしが小三だったから……おねぇが小五の時だったかな』

「小、五……」


 あの時も……。美月がクラスの女子達に漫画をバカにされていたのも小学五年生……。


 そういえばあの時も一週間くらい休んでいたが……。熱が下がっても休んでなかったのか。


 なんだか妙に胸騒ぎがして不安になってしまう。


「今からマッハで美月の様子見に行くわ」

『ありがとう。今日、お母さんパートだし、お父さんも遅いし、あたしは今し方用事を作るからごゆっくりー』

「いや、無理せずに帰って勉強しろよ受験生」

『あたしは空気が読める系の後輩ですから、先輩。じゃあね。帰りに赤飯買って帰るので』


 そう言い残して美陽は電話を切りやがった。


 あいつは今から赤飯が食卓に並ぶ展開を期待しているのだろうが、そんな展開にはおそらくならないだろうな。

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― 新着の感想 ―
[一言] これは、やられてますねえ。 でも、そもそも読まれないとアンチすらも寄って来なかったりするんですよねえ。
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