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セツなきミライは砂時計にながされて  作者: すずと
秋葉美月編〜女心と秋の空。幼馴染の心は夢と妄想に移ろう〜

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第45話 俺にも未来が予知できるぞ

 本日はバイトもなしで未来がご飯を作ってくれた日だ。


 今日のメニューはカレー。キッチンからカレーの食欲をそそる香りが居間の方まで漂ってくる。


 未来のカレーはめちゃくちゃ美味しいんだよな。


 彼女曰く、「カレールーの箱の裏に書いてあるレシピ通りだよ」とのこと。しかし、明らかに美味しさが違う。母さんには悪いが未来のカレーの方が段違いで美味しいんだよな。


 一応、手間暇かけてはいるみたいだけどね。野菜も大きく切るんじゃなく細かく切って溶けやすくしてあるみたいだし。母さんのは野菜がゴロゴロ入っているけれど、未来のカレーは溶けて野菜が見当たらない。その分、ルーに野菜の旨味が入って美味しいのかもね。


 キッチンで制服の上からエプロンを纏ってカレー鍋を混ぜている未来をついつい見ちまう。


 こうやって未来がキッチンで料理しているのを待っているのってはなんだか新婚みたいで、ちょっと照れくさい。いや、見慣れた光景なんだけどさ。それでも毎度そんなことを思っちまうよな。こんなことは普通ではないのだから感謝しないといけない。


「なんでネコミミピースしてるの?」

「感謝を示したつもりなんだがな」

「頑張って流行に乗ろうと無理しているおじさんみたいだよ?」

「うるせーよ、先輩」

「こういう時にだけ先輩呼ばわりなんて、世津は子供部屋おじさんだね」

「子供部屋高校生だよ」

「それは普通のことでは」


 ピンポーン。


 まるで未来のセリフが正解と言わんばかりに家のチャイムが鳴り響いた。


 時刻は7時前。夜もまだ浅い時間だが、この時間帯にセールスや勧誘なんて来ないだろう。


「はいはーい」


 未来が鍋の火を止めて声を出しながら、ぱたぱたと玄関へ向かって行った。


 この時間帯だから回覧板かな。この団地ではまだそんな昭和のシステムを採用なさっておいでだ。さっさと廃止すりゃ良いんだけど、自治会てきには難しいのかな。


 でも、その予想も外れたみたい。


「こんばんは、美陽ちゃん」


 狭い家だから居間にいても玄関の声が聞こえてきやがります。そして未来が呼んだ名前から、幼馴染(妹)が凸って来たみたいだな。


「みぃねぇ……助けて……」

「どうかしたの?」


 ぐりゅううう──!


 居間にいても聞こえてくる爆音。


 美陽は成長期だもんね。


「お腹空いているんだね。丁度カレーができたから入って」


 一応俺の家なんだけど、勝手知ったるなんとやらってやつで未来が美陽を招き入れた。


「お邪魔しまーす。うはぁ、良い匂ーい」


 とたとたと美陽は自分の家と間取りが同じだろうから慣れた様子で居間までやってくる。


「やっほ。せつにぃ」

「やっほ。美陽」


 言いながらネコミミピースを披露するとジト目で見られてしまう。


「せつにぃ。頑張って流行に乗ろうと無理しているおじさんみたいだよ」


 言われると、美陽の後ろでケタケタと大笑いをしている未来先輩の姿があった。


「うるせーよ成長期。なんですか? お前の胸は成長期のくせに反抗期だから大きくならないってか。かっかっかっ」


 美陽はくるりと未来の方を向いた。


「ね、みぃねぇ」

「ん?」

「このセクハラにぃ。やちゃってもいい?」

「やっておしまい」

「あいあいさー」


 敬礼してくるりとこちらを再び向く。


 美月をちょっぴりギャルっぽくした可愛い顔つきの美陽が笑顔で近づいてくる。

するとあっという間に華麗なコブラツイストを仕掛けてきやがりましたとさ。

とか呑気に解説している場合じゃない。


「ったああああああ! タイッ、タイッ!」

「バンコク、バンコク」

「国のタイじゃねぇわ! ぼけ! 痛いって意味だわっ!」

「ほれほれ。美陽ちゃんのナイスバディが当たって幸せだろうが、くそ先輩め」

「お前の姉ちゃんにコブラツイストされたら幸せで逝ってたね」

「ほぅ。まだ余裕がありますな。流石は年上。じゃ、遠慮なく」

「がああああああ! 強い、強い! 美陽が勝者! 最強!」

「はーい。ふたりともー。カレーできたよー」

「この状況で普通に晩御飯を並べるなよ」

「この状況をもっと喜べよ先輩。よいしょー」


 あがああああああ! 美陽強すぎまじワロタ。







 美陽のお腹が限界だったみたいですぐにコブラツイストを解いてくれて、さんにんでご飯を囲む。


 未来と美月との接点ってのはそこまで多くない。


 しかし、未来と美陽の接点は多いみたいだ。


 未来が小学4年生の頃に美陽は小学1年生。集団登校の時に手を繋いであげていたのを覚えている。


 そして、俺が通っていた学校では小学6年生と小学3年生の交流が多かった。交流の内容は昔の遊びを経験したりだとか、縄文時代の暮らしを体験するだとかだったかな。そこで小学6年生の未来と小学3年生の美陽は一緒になっていたみたいだね。


 そして、未来が中学3年の時、6年生に色々と中学のことを教える機会があって、そこでも未来は美陽と一緒だった。


 このふたりはなにかと縁のあるふたりなため、昔から仲が良い。まぁ、最初に手を繋いでくれたお姉ちゃんってことで美陽は未来に懐いたって感じだな。


「んで、今日はいきなりどうしたんだよ」


 流石は成長期。カレーのおかわりを済まして2杯目に突入している美陽へと尋ねる。


「そうそう。せつにぃ聞いてよ」


 そう前置きをして一旦スプーンを置いた。流石は見た目はギャルでも礼儀をしっかりしている幼馴染(妹)なこって。


「今日はお父さんが残業で、お母さんがパートだからね、おねぇがお母さんから晩御飯代をもらっているんだけどさ。なんど呼びかけても部屋から出て来ないんだよ」


 美陽はエアタイピング披露した。


「ずーっとカタカタ音と、『でゅふゅ』みたいな声出してさ」

「カタカタしてるならなにかの書き込みとかかな」


 未来が首を傾げると美陽が困ったような顔をする。


「わかんないけど、ここ最近ずっとそんな感じなんだよ。呼びかけても無反応なこと多いし。せつにぃなにか知ってる?」


 カタカタ音ってことは執筆をしているのだろうと思われる。しかし、執筆してるのは家族にも秘密にしていることだろう。それは俺と美月だけの秘密だ。いくら妹でも秘密をいう訳にはいかないもんな。


「わからんな」

「せつにぃでもわかんないのかぁ。はぁ、なんでも良いけど、お金をがめたまま部屋に閉じこもるのはやめて欲しいよ。あたしもお小遣い全然ないんだしさ」


 姉妹だなぁ。がめるを関西弁だと思ってナチュラルに発している。


「美月の部屋に凸れば良いんじゃないか?」

「せつにぃも知ってるでしょ。おねぇは普段めちゃくちゃ優しいけど、邪魔されたらめちゃくちゃ怒ること」

「あー、あいつ怒るとめっちゃ怖いんだよな」

「そゆこと。だから、申し訳ないと思いながらもみぃねぇが来ているであろうせつにぃの家にやって来たってわけ」


 以上、説明おわりと言いたげにスプーンを持ってカレーを食べ始める。


 流石は幼馴染なだけあってこちらの事情を把握し、最短で空腹を満たすルートを導き出したってこったな。頭良いね、この子。


「それにしても、ほんっとみぃねぇの料理って美味しいよね。カレーなんてもう絶品で」

「ありがと。おかわりいる?」

「いいの?」

「いいよ。美陽ちゃんが来ると思って多く作ってたし」

「すごー。みぃねぇ未来予知できるんだー」

「えっへん」


 威張って胸を張る未来の胸は残念ながら全然張れてなかった。つまり未来も美陽と同じ側の美少女ってこったな。


 あ、このふたりが仲が良いのわかったかも。


「貧乳同士は引かれ合う、ってか。くく」


 つい声に出してしまったみたい。


 未来は美陽から受け取ったカレー皿をゆっくりと置くとキッチンには行かずに俺の前に立つ。


 ゴゴゴゴゴゴ。


 凄いプレッシャーだ。強者だけが放つことのできる波動に押しつぶされそうになる。


「おい美陽。俺も未来予知できるぞ」

「奇遇だね。あたしも未来予知できるよ」

「じゃあさ、この後の俺の未来を一緒に当てようぜ」

「良いよ」


 せーのっ。


「「アイアンクロー」」

「正解♡」

「ぎゃあああああああ!」


 未来の十八番アイアンクローが炸裂。


 俺のこめかみが未来の手で挟まれてしまう。


「ずみまぜん! ずみまぜええええええ!!」

「今、私が欲しい言葉を言えたら許してあげる」

「未来先輩かわゆす、はすはす」

「不正解です」

「あがああああああああ! がっ、ああ、が、なんで、強さが……」

「間違えれば間違えるほど愛が溢れるの」

「そんなどちくしょうの愛なんているかよ!!」

「遠慮なさらず」

「がああああ! くそが! 俺の方が大きいぞ! 雄っぱい大きいぞ! ごらあああああ!」

「あ、せつにぃが死ににいった」

「世津♡ 私の最大の愛、受け取ってね♡」

「がっ……! あがっ……」


 砂糖まみれの甘い声に包まれて俺のこめかみは爆発した。


 貧乳をいじったらあかん。そう思い知らされる日であったな。

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― 新着の感想 ―
[一言] 未来予知… 人生何周目だw 誰かさんはライターズハイになっているみたいですねえ。
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