第43話 ちょっと疲れている幼馴染
「みんなー! 今度、ぼく達のライブが決まったから見に来てよー!」
いつものメンバーで昼を食べていると、さっきからスマホをいじっていた聖羅が唐突に声を上げた。
「おー、行く行くー」
豪気が一番乗りで声を上げると、陽介が爽やかな顔をニタリとさせて彼の肩に手を置いた。
「流石はロリ。いの1番に手を挙げるとはな」
「なっ!? 俺はロリじゃねぇて言ってんだろうがっ!」
「ヤンキーって硬派なイメージだったんだけど、杉並みたいなヤンキーもいるんだねー」
「おいっ夏枝! 何回ヤンキーじゃないと言えば気が済む」
「顔がねー。ザ・ヤンキーなんだよね」
「ばあちゃん譲りの優しい顔をしてるだろうが!」
「杉並っておばあちゃんっ子?」
「あたぼうよ!」
夏枝と豪気が漫才みたいなことをしていたのでスマホを構えてやる。
「おーい。そこのヤンキーくんとギャルちゃんやい」
こちらに気が付いた夏枝はギャルピースで対応。豪気は腕を構えて強そうな感じでポージング。
シャッターをパシャリとな。
「うわぁ……」
俺ってばやっぱり四流カメラマンだわ。写真撮るの下手だなぁ。
こちらのリアクションに夏枝が隣にやって来て、俺のスマホを覗き見る。この子、なんでこんな良い匂いすんだよって思ってるところに大笑いがやってきた。
「四ツ木って相変わらず写真撮るの下手だよね」
「だなぁ」
「ん? なんでわたし、四ツ木が写真撮るの下手って知ってるの?」
「美人だからでは?」
「間違いない」
適当なやり取りで、あははとお互いに笑い合っていると、陽介が夏枝と逆サイドに立ちスマホを覗き込む。
「ま、世津のカメラの腕は論外だとしても」
「辛辣だね、きみ」
「ふたりの被写体も問題だよな」
「「なっ!?」」
夏枝と豪気が同時にリアクションする。
「おい、待てや。そりゃどういう──」
豪気に俺のスマホを向けてやると、まじまじと俺のスマホを眺める。
「うわぁ……。確かに俺と夏枝のツーショットってないな……」
「美月も見てみろよ」
言いながら彼女へスマホを向けるが美月は上の空で真っ直ぐに一点を見つめていた。
「美月?」
無視を決めている感じではない。ただちょっと疲れているような感じで、再度呼びかけると、ハッとなり俺のスマホを覗き込む。
「ぷっ」
スマホを見た美月はいつも通りの雰囲気に戻り、可愛らしく吹き出した。
「杉並くんと七海ちゃんって似合わないね」
「美月よ。それはストレートが過ぎるんよ」
「秋葉、それはおれらがよぉくわかってる」
「わたしの美貌ですらヤンキーを美しくできないのは悔しいかな」
「ちょおおおおおおおおい! アイドル様を無視するなああああああ!」
あ、忘れてた。
脱線した話を元に戻すように、聖羅が大きな声で改めて言い直す。
「ぼく達のライブの日程が決まったから、みんな来てって話なんだけど!」
聖羅の言葉に全員が返す。
「ごめん。その日絶対に予定空けて行く」
「ごめんなさい。その日はちょっと予定ないから絶対に行くね」
「ごめんな。オレも暇なんだ。最前列で見るわ」
「わりぃ。最前列余裕」
「なんでみんな断る感じを出すんだよ。ドキッとしたじゃんか!」
確かに。明らかに断る雰囲気で絶対に行くって言うのドキドキしちゃうね。ま、そういうノリなんだろうね。
俺も絶対に行こう。
「聖羅ちゃん」
ガシッと美月が彼女の手を握りしめた。
「ちょ……な、なになに? 大和撫子が見つめてくるんですけど」
「最前列で応援するね。頑張って! あたしも頑張るから!」
「キュン。なにこの大和撫子。アイドルのぼくの性癖をえぐってくるんだけど」
「おい、腐ってもアイドルだろ。美人のそんな簡単な言葉にコロっとなってどうするんだよ」
俺のツッコミに恨めしそうに睨みつけてくる。
「だって、学校のぼくのグループ、トップ芸能人ばりに整っているんだもん! てめぇら全員事務所入りやがれーって感じ」
それは否めないな。全員が芸能人ばりに顔の整った高校のグループ。これだけで動画投稿したら結構良い線いくんじゃないかと錯覚するほどに美形揃いだ。
「あ、杉並くんは別の事務所ね」
「誰がヤンキーだ!」
「ヤンキーじゃなくてヤく……」
おい、聖羅。それは流石に怖すぎるぞ。




