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セツなきミライは砂時計にながされて  作者: すずと
日常〜いつもの高校生活〜
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第4話 ハーレムの代償は大したことない

 高校生活というのはかけがえのないもの。


 高校を卒業した大人達はこぞって同じ言葉を揃えている。


 楽しい思い出も、楽しくない思い出も、空っぽって思ってる人だって、大人になってから思い出した時、泣きたいほどに愛おしくて、切なくて、ちょっぴり恥ずかしい。


 そんな高校生活の思い出。


 元高校生であった先輩達の後悔の念はSNS等に書き込まれており、現役の俺達の目にまで届いている。


 高校生の頃に部活を頑張っていれば。

 勉強を頑張っていれば。

 友人関係を頑張っていれば。


 情報はたらふくとあるのだから、現役の俺達はそれを活かして高校生活を謳歌できるはず。


 俺は元高校生の先輩方の後悔の念を生かし、高校生活を楽しむことを考えて行動した。


 結果は気の合う最高の仲間達に恵まれて、そりゃもう楽しい高校生活を送っている。


 目の敵にはされているみたいだけどね。


 そりゃ、学校でも有名な美少女3人と一緒にいたら目立つわけで、嫉妬の念を押しつけられるってはわかる。


 ただ、陰口をたたかれる対象が俺ひとりってのは悲し過ぎる。


 陽介は女子からモテてるため、陰口を聞かれると大量の女子を敵に回すことになる。


 豪気は強面だから陰口を聞かれたらなにをされるかわからないとでも思っているのだろう。


 消去法で1番安全そうかつ、美少女3人と一緒にいる時間が多い俺が的になっちまったってわけだな。


 石を投げられている人がいれば、俺も、私もだなんて同調されちまって、俺は一気に嫌われ者の烙印を押されたってわけだ。


 目立っててイキってんなぁ。関わらないでおこう。あ、でも、陰口は合わせておかなきゃ次は自分が的になる。そんな感じかな。


 自分より目立って楽しそうにしている人間がいれば誰だって面白くもないだろうからな。その心理を少し理解できちまうくらいに俺も普通の人間だ。


 かといって、みんなに好かれようとも思わない。俺は自分のグループの仲間だけを大切にする。


 世の中の人全員に好かれるなんて不可能だ。


 俺は俺を大事にしてくれる人だけを大事にする。


 不幸中の幸いで、陰口だけを叩かれているだけだ。なにか直接の被害があったわけではないからな。なにか仕掛けてくるやつがいるなら、全力で立ち向かう。


 でも、うん、やっぱり嫌われるってのは辛いものがある。実際、俺自身はなにか悪いことをしたわけでもないし、好きで嫌われたわけでもない。


 今だって学食に来ているが、俺達を、正しくは俺を疎ましそうな目で見てくる瞳がいくつもある。


 これ、SNSとか見たらどんな書かれ方しているのやら、怖くて見れないや。


「ガツガツガツ。くぅぉおー! うめぇ!」

「奢ってもらったS定サイコー」


 暗くなった気持ちを打ち消すように、明るい豪気と聖羅の声が聞こえる。


 学食の奥の角の席。S定を容赦無く注文されて、俺の財布へダメージを与えてくる。


「S定って、結構ボリュームあるんだね」

「お肉が多いかな」

「あ、わかる。野菜多くして欲しいよね」

「食べ過ぎは体型に影響出るから気をつけないと」

「ねー。次からは頼まないけど、奢りだから全然食べる」

「うんうん。奢りじゃなかったら食べないかな」


 夏枝と美月が文句を言いながらも容赦なくS定を査定して食べてやがります。もちろん、俺の財布に大きなダメージ。


「あれ? 世津はスマホばっかりいじって食べないの?」


 陽介がおちょくるような笑みで質問を投げてくる。俺の財布に多大なるダメージ。


「バイトのシフト増やしてんだよ」


 美月が首を傾げる。


「世津くん金欠なの?」

「今し方金欠になったんだわ! 全員容赦なく頼みやがって、ちくしょうが!」


 答えると聖羅がこれ見よがしにエビフライを、パリッと音をさせて食す。


 良い音立てやがるな、おい。


 ファミレスのCMに採用されてもおかしくないくらいに可愛くて異常にむかつく。


「聖羅。ちょっとくれや」


 パリッと、もう一口良い音だけを聞かせてエビフライは聖羅の胃の中に消えた。


「どちくしょうしかいないのか!? 俺の仲間達はよ!」

「そういえば四ツ木ってカフェでバイトしてるんだよね?」


 こちらの嘆きをかき消すように、夏枝から質問が飛んできた。


「あ、ああ。1年の頃からな」

「商店街のとこだっけ?」

「そうそう。じいちゃんの店だけど、近くにチェーンのファミレスが3件もあるせいで、中々客が入らないんだわ」


 母方の祖父は趣味でカフェを経営している。売り上げとかは特に気にしていないみたい。気が乗らなくなったら店を畳むとか冗談混じりで言ってたくらいだ。


「しょうがない。商売繁盛のため、ぼくが一肌脱いであげるとするか」


 なんか知らんが、聖羅が腕まくりをして、ふつふつとやる気を出していた。


「聖羅ちゃんが脱いだら特殊性癖の人達で繁盛するかもだね」

「美月ちゃん。まじの脱ぐじゃなくて、カフェにサインでもあげるって意味なんだけど」

「あ、ごめんなさい。でも、あたしは好きだよ。聖羅ちゃんの体型」


 聖羅は自分の胸を触った後に涙目になっちゃった。


「どちくしょーがっ! 完全敗北している大和撫子に言われてもフォローにもなんないよ!」

「安心しろって聖羅。そこの強面のお兄さんが反応したぞ」

「うへぇ……。杉並ってロリコンなんだ」


 俺の声を拾った夏枝がドン引きの声を零した。


「誰がロリコンだ! おらあ!」

「ぼくはロリじゃないよ!」


 間接的に聖羅も巻き込まれた感じになったので、陽介が優しく聖羅に言ってのける。


「ロリでもなんでも聖羅は可愛いから安心してくれ」

「友沢きゅん」

「オレは全然タイプじゃないけど」

「こんの爽やかイケメンめっ! 上げてから落とすな!」

「ちょっと待て! なんで俺がロリ判定になってんの!? 異議を申し立てるぞ!」


 いつものランチの風景。いつもの陽だまりみたいに温かい場所。


 居心地の良い空間。


 学校の嫌われ者なんて気にもならない程の楽しい時間はいつも通り、わいわいと騒がしく過ぎていく。

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